今日はなんの日?宮野の日!本日は灰原三大祝日のうちの一つ宮野の日でございます。
というわけで以下は宮野の日小話です。
空港の無機質な椅子に座り、明美はぼんやりと搭乗口を眺めていた。もうすぐ搭乗案内が始まり、あのゲートを抜けて飛行機に乗る。そうするとまたしばらくこの国には来られない。志保と自分を隔てる太平洋という障壁は否応なく自分が子供である事を感じさせた。
(どうしたら良いんだろう)
もう数えきれないほど繰り返した自問が胸に湧き上がるのは、もはや習い性だろうか。
志保と一緒に暮らす
妹と一緒に暮らす、たったそれだけの願いは明美にとって「月に行く」というくらいもはや夢想に近かった。
志保と同じくらいの研究者になればと血を吐くような努力はしたが、それは妹の非凡さを思い知っただけだった。
ならば志保を守れるくらいの力を持てばと組織の構成員を志願したが、志保に対する人質である明美に組織が危険な事を許すはずもなく、自分が志保の足枷である事を知らしめられただけだった。
自分がもっと賢ければ、自分にもっと力があれば、自分がもっと大人ならば。
足りないものばかりが頭上に重りとなって積み上げられていくようで、明美は祈るように組んだ手に視線を落とした。
(誰か、助けて)
しかし悲痛な叫びを拾い上げてくれるものは何もない。守ってくれる両親はすでにいない。自分には志保しかいない。そして志保には明美しかいないのだ。
(ここから助けてくれるなら、たとえ悪魔にこの身を捧げても構わないのに)
搭乗口から案内の声がする。明美は暗い決意を胸に刻んで、ゆっくりと席を立った。
数年後、諸星大という男に出会った時、明美の脳裏に搭乗口のゲートが浮かび上がっていたのは、また別の話。
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