今日はとても暖かく、先日の雪は何だったんだと笑っています。やはり陽の光は暖かいですね。気持ちが違います。
さて、今日は、いつもと違ってこんな言葉について、
◆様子がいい
今の生活ではほとんど使いませんが、古典落語の世界で、よく使われるのが「様子がいい」という言葉です。
5代目柳家小さん師匠の落語に『船徳』という演目があります。「船徳」という噺(はなし)は、多くの落語家さんが演じていらっしゃいますが、ここでは柳家小さん師匠の「船徳」をもとにこんな文章を書いてみました。
◆古典落語『船徳』
あらすじ
噺(はなし)のあらすじを、かいつまんで、
道楽者の若旦那の徳さん(徳三郎)、道楽が過ぎて勘当になり、挙げ句の果て、ご贔屓の船宿の二階に厄介になることに、、、 小さん師匠は、「二階に厄介(やっかい)になるので、締めて十階(じゆっかい)の身の上」と、笑わせます。
若旦那は、なかなか勘当が解けそうもないので、船頭になりたいと親方に訴えます。親方は「お止しなさい」と再三諭しますが、引き下がらない若旦那。
とうとう親方は根負け。 「ようがしょ、それではやってご覧なさい」と船頭になることを許し、先輩の船頭たちに若旦那が船頭になることを伝えます。
それを聞いた兄い格の船頭が「若旦那に船頭になって貰えればねぇ、若旦那は様子がいいからねぇ、どう見たって芝居に出てくるような船頭だぁ、若旦那が船頭になったら、この辺の女の子がほっておかないよっ」などと持ち上げます。
ようやく船頭の仲間入りを果たした徳さん、でも、なかなか出番がありません。 折しも、暑い盛りの浅草観音様の四万六千日、馴染み客が、船が嫌いな友達を連れてやって来て大桟橋まで行ってほしいと言います。
船宿のおかみさんは「お船はありますが、今日は船頭は出払ってしまって誰もいないんですよ」と一旦断ります。
お客は柱に寄りかかって居眠りをしている徳さんを見つけ、「あそこにちょいと様子のいい若い衆がいるじゃないか、お約束かい?」と尋ねます。結局、おかみさんは断り切れず、徳さんが船を出すことに、、、
なお、小さん師匠の『船徳』には「様子がいい」ではなく、「粋(いき)な」と言う表現を使っているのもあります。
※四万六千日:浅草・浅草寺の毎月ある功徳日の中で最もにぎやかな7月10日お参りすると、46,000日分の功徳があるとされ、特に「四万六千日」と呼ばれています。この四万六千日の縁日の参拝は江戸時代には定着し、現在も9日、10日の両日が縁日とされています。
※大桟橋:江戸時代、山谷堀(今の東京都台東区今戸橋付近)にあった桟橋。小さん師匠は、噺によっては、単に「堀(ほり)」と呼んでいます。
また、演目は忘れましたが、他の噺でも芸者衆が「あらまぁ、この人様子がいいよっ」などと使われています。
曖昧な言葉
「様子がいい」とは、どの様な外見・容姿なのか、結構曖昧な表現です。古典落語の世界では「様子がいい」を主に若い男性に対して使っているようです。女性にも使うことはあるのでしょうが、自分は未だ聞いたことがありません。
なお、この様子がいい若い男性は、今風のイケメンとは、ちょっと違うような気がします。また、単なる色男、男前(これは大和言葉)だけでもないようです。
外見や容姿だけでなく、身なりはもちろん、ちょっとした仕草や振る舞いなど、どことなく他人と違うと言う感じなのでしょうか、まさに人品卑しからず。
翁には全く縁の無い言葉なので、残念ながらそこはわかりません。
続きます…
Have a good day !!
備考:カバー画像は「©いらすとや」さんのイラストを使わせて頂きました。感謝!