![]() | 第二の少年A 狂気の時代 価格:¥ 1,313(税込) 発売日:2012-12-28 |
天才と云う頂(いただき)を憧れを持って羨望していた少年であった。しかしそれは遠い昔の出来事。少年は親友と出会い葛藤を繰り返す。そこには人間らしさと云うものが存在した。友情、裏切り、憎しみ・・・。その果てに迎える顛末とは何か? 激烈に描かれた半自伝的小説! その道筋は決して平凡ではなかった・・・。 ヘルマン・ヘッセの「車輪の下」の下の様に少年は若き日の苦い思い出と邂逅する。人間は究極的には分かりあえないのかもしれない。主人公・君塚治は特別だった。
俗に言う「天才」の部類に入る人間だった。
齢《よわい》十歳にして治は、アインシュタインの『一般および特殊相対性理論』を読破したのみならずその内容をも理解していた。夏休みの自由研究でアインシュタインの相対性理論について書き上げたほどだった。
無論、その自由研究は帰ってこなかった。その理由は内容が難しいから、読むのが面倒くさいということであった。治は今までの功績が瓦礫となって崩れ落ちるような気がした。いくら努力してもそれを評価できる人物が必要なことを治は知ったのである。彼が学校教育における天才、つまりは「勉強のできる子」だったならなにも問題はなかったのかもしれない。でも彼は違った。そういうタイプのいわゆる「天才」ではなかったのだ。ゆえに彼の才能はまわりと決定的な「ズレ」を生み、そのズレは彼の人生を大きくねじ曲げまげつつ、軋みをあげて物語は動き出す。
成長するにつれ、できるがゆえに周囲から孤立し、孤立するがゆえに彼の鋭すぎる思索はさまざまな考えを生み、より鋭さを増して己の精神が崩壊する寸前まで突き抜けてゆく。
血を吐くような思索の果てに、彼を待つものはいったいなんだろうか。
??濃い。
本書を読んだ第一印象はそれだった。
話のなかには哲学的問題がいくつもちりばめられていて、一読ではすんなりと理解できないのかもしれない。もちろん哲学的問題が簡単に解けないのは当たり前なのだからそれでいい。
思うに本書は「物語」というよりも、何度も読み返して考えてみるべき「哲学書」に近いつくりのようだ。たしかに僕は一度読んだけれどまだわからないことがあるし、本書で言っている部分に納得できないところもある。だからもう一度読んでみよう。今度は本と対話してみようと思う。
こう思えるのは本書がまさに「哲学書」だからだろう。一般の小説ではこんな考えにはならないはずだ。
……うん、良い意味で手強い本だ。
正式なタイトルには含まれてないようなのだけれど、本書は複数の著作を収録した短篇集の形をとっていて、表題作『第二の少年A狂気の時代』のほかにも『天才とギフテッドの違い』、『独裁者アドルフ・ヒトラーに告ぐ!』、『旧約聖書 創世記第一章に関しての考察』の三篇が同時収録されている。
『第二の少年A狂気の時代』を読み終えたとき、正直言って僕は主人公・治のことがあまり理解できなかった。僕にもいわゆる「学校の天才」と「本当の天才」が違うということくらいはわかる。でも、「なんで彼はこんなにも苦しむのだろう?」と思ったのだ。「本当の天才ならばその苦しむ原因だって理解できそうなものなのに」と。
この疑問は二作品目の『天才とギフテッドの違い』を読んでしっくりいった。
「ギフテッド」の意味はWikipediaの説明を読んでいただくとして、なるほど、この「天才」と「ギフテッド」の決定的な違いと、それを同じだと思うまわりの誤解のせいだったんだな。
このように本書は、
短篇集の形だけれど、表題作の論旨について他の三篇が補うような形をとっているようだ。『第二の少年A狂気の時代』を読んで疑問に思った部分をあとの短編が順番に解きほぐしてくれるのだ。
また、
本書の説明文ではヘルマン・ヘッセ『車輪の下』をあげている。なるほど『車輪の下』も本当の天才と学校教育の深刻な溝を扱っていたな。
けれど、僕はタイトルからトルストイの『幼年時代』『少年時代』『青年時代』を思い出した。ネタバレになるので伏せるけれど、本書のある内容から本作がそのまま次回作に続くとは思えない。けれど著者の思索はより発展して次の「時代」へと続いていくのではないだろうか。
夢想かもしれないけれど、僕にはそんなふうに思えるのだ。
![]() | 第二の少年A 狂気の時代 価格:¥ 1,313(税込) 発売日:2012-12-28 |
書誌まわりについて少し。
本書は「amazonオンデマンド」というしくみで販売されている。
オンデマンドとは「オンデマンド印刷(Wikipedia)」のことで、注文が入り次第印刷するというしくみのこと。そして「amazonオンデマンド」とは、amazonに注文が入った段階でamazonが印刷して届けてくれるサービスだ。
よって僕が調べたかぎりでは一般書店での流通は無し。
入手はamazonで注文するのがいちばん手っ取り早いようだ。
→第二の少年A 狂気の時代
もくじ
第一章
第二章
第三章
第四章
第五章
第六章
第七章
第八章
第九章
第十章
付記
天才とギフテッドの違い
独裁者アドルフ・ヒトラーに告ぐ!
旧約聖書 創世記第一章に関しての論考
![]() | 第二の少年A 狂気の時代 価格:¥ 1,313(税込) 発売日:2012-12-28 |
![]() 文学・哲学 |
●こんな本も
→『史上最強の哲学入門』飲茶・マガジン・マガジン
→『萌える☆哲学入門』造事務所・大和書房
↓いろんな書評が読めます

