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懐かしい英語教材(6) 『Side by Side』

2005年07月14日 18時34分12秒 | 英語教材の話題




◆Side by Side, third edition
 (Steven J. Molinsky & Bill Bliss, Pearson Education / Longman)
(2000年7月  second editionは1984年1月) <全世界で好評発売中> 


言わずと知れた初級用英会話教材の世界的ベストセラー。「英会話教材」というジャンルに収まらない読み・書き・話し・聞くの4技能すべての能力開発に役立つユティリティーワークブックです。と、宣伝広告のような誉め言葉を羅列しましたが事実だからしかたがありません。

一般的には、本書『Side by Side』は(特に、最も使われているBook1/Book2のレヴェルは)、中学レヴェルの英語をしっかり身につけ会話でその知識がちゃんと使えるようになる教材と位置づけられていると思います。

しかし、私が昔勤めていた英米大学院留学予備校の全日制コースでは、高校卒業者から社会人の方まで年齢に関わらず初級クラスで使用していましたし、10年位前はアメリカのESLでも韓国や台湾のビジネス英会話クラスでも本書が用いられている場面をよく見かけたものです。私自身はここ5年ほどのアメリカのESLの状況には不案内ですのでPearson Education のコンサルタント(representative)の方に確認した所、アメリカでもアダルトクラスで本書を使用しているESLは今でも珍しくないということでした。

世界的なベストセラーにしてローングセラー;年齢を超えて<使える英語がきちんと身につく最適なワークブック>というのが『Side by Side』の定評だと思います。我ながら今日は何かLongmanとPearson Education の回し者のようなことを書いてますね。私は学生時代と社会人としての最初の修行期間を関西ですごしましたから、どんな話にも「落ち」がないとどうも落ち着かない。落ちをつけないと聞いていただいている/読んでいただいている方に失礼なんじゃないかという脅迫観念を持ってしまいます。よってそろそろ、「落ち」行きます。

正直、『Side by Side』英語のネーティブスピーカーの先生方の間では、必ずしも評判は良くない。特に、比較的にレッスン時間に余裕のあるESLは別にして、街中の英会話スクールで教えておられる先生方の評判は明らかに悪いと思います。初級用の日常英会話教材を選ぶとして(ビジネスやトラヴェルに特化したものは外した上で)、『Side by Side』をご自分がクラスで使う教材として指定する英語のネーティブスピーカーの先生は間違いなく少数派だと思います(★)。

理由は、少し古い(例文も会話の設定もイラストの人物の服装も単語も70年代風だよ);例文が簡単すぎる;会話のワークブックなのに文法の説明に比重が割かれすぎ;アメリカの日常生活を舞台にした簡単な例文の反復練習ばかりで、時事的なテーマや英語初級者といえども大人の受講者の興味を引くようなリアルな社会生活から取材した話題が全く織り込まれていない;クラスでのロールプレーを想定した場合に生徒がアクティブになりクラスが盛り上がるような会話設定に乏しい、等々が挙げられるようです。中には、「日本で使うにしてはイラストに書かれたキャラクターにアジア系が少なく、生徒がテキストのストーリーにシンパシーを抱きづらい」という理由にならない理由を挙げられた講師もおられました。

★註:初級・日常英会話教材の人気投票
例えば、ここに英語のネーティブスピーカーの先生が100人おられるとします。そして、その100人に、週2レッスン(90分)の初級英会話のクラスでご自分が使いたい教材の<人気投票>をしていただくとする。そうですね・・・「出走」は次の6冊と"Side by Side"の計7冊としましょう。

"New Person to Person", Oxford University Press
"Expressions", Thomson Learning
"Get Real!", MACMILLAN Languagehouse
"New American Streamline", Oxford University Press というかNOVAの教材ですよね(笑)
"New Interchange", Cambridge University Press
そして、"Side by Side"と同じ著者が書かれた
"Express Ways", Prentice Hall Regents

投票は、「ご自分が使いたいと思われる教材を1冊書いてください」でも「ご自分が使いたいと思われる教材を3冊;その首位に5ポイント、第2位に3ポイント、第3位に1ポイントを各々配点するとして投票してください」、あるいは、「これだけは絶対に使いたくないと思われる教材を1冊挙げてください」でもいいです。

私は何回も実際にこのようなアンケートをしたことがありますが、投票者100人の条件として、①日本人の高校生以上のアダルトに、②2年以上、③初級英会話を教えた経験がある方とさせていただけるのなら、"you can bet on it." です。どの投票でも"Side by Side"が選ばれることはないし、ひょっとしたら最下位の目もありえます





世界的なベストセラーにしてローングセラーという実績と「使える英語がきちんと身につく最適なワークブック」という定評をエンジョイしている『Side by Side』と、英語のネーティブスピーカーの先生方の間の悪評とのギャップをどう考えればよいのでしょうか? 

世間の評価はあてにならないものなのか、それとも、『オリエント急行殺人事件』よろしく先生方が口裏をあわせて嘘をついてでもおられるのでしょうか?

率直に言います。鬼のKABU教務部長曰く、『Side by Side』を選びたくないと言う英語のネーティブスピーカーの講師はレヴェルの低い講師であるか、頭が硬く融通の利きにくい講師か、怠け者の講師である、と。

つまり、彼等は『Side by Side』を使いこなすための素養、英文法自体
の知識;英語語彙の語源や類義語との違いの知識;英語の母語話者ではない外国人に英文法を説明する知識とスキル;生徒に繰り返し反復練習をさせながらもクラスの活気を維持するクラスマネージメントスキルと豊富な話題の蓄積;テキストが提供する反復練習以外にも自分で課題やマテリアルを準備する勤勉さと意欲。これらの中の少なくとも一つを欠いてると私は思います。

例えば、『Side by Side』に収録されている例文は『"Get Real!』と同じくらい易しいものばかりだけれども、その英文法の説明の手厚さと、秀逸なExerciseも含めて手を変え品を変えてスパイラルメソッドよろしく演習するボリュームは他の教材の追随を許しません。他人事ながら教える方の予習の負荷は大変だと同情を禁じえない(だって、わたしは「英語研修企画屋さん」ですもの。講師としては三流。よって、研修を請負った顧客企業から指名がない限り英会話クラスの教壇にたつことないから)。(^o^)/

而して、文法だけではない。自分でテキスト以外にもマテリアルを用意する負荷、マテリアルまではいかなくともレッスン中の<コーヒーブレーク的なスモールトーク的の話題>は常に準備しておかなければ盛り上がりの点で授業が失速しかねない。それが『Side by Side』の不評の直接の原因だと思います。この使い勝手の悪さは、例えば、成人の外国人学習者が興味を抱く話題のアンソロジーともいうべき『New American Streamline』、現在の身近な社会生活シーンの万華鏡『New Person to Person』『New Interchange』『Expressions』と比べれば歴然でしょう。

Side by Sideは講師フレンドリーでも生徒フレンドリーでもない。それは、講師の先生方にも受講生にも勤勉と努力と我慢と忍耐を要求する硬派のワークブックです。ジャンルはぜんぜん違いますが、使い勝手の悪さと優れた成果が期待できる『Side by Side』の特徴は、カソリック系を中心に日本の中高一貫の私立中学・高校における人気教材『プログレス』に似ていると思います。

畢竟、英語のネーティブスピーカーと言えども、所詮、講師・インストラクターは生徒の評価が気になる。そして、リピーター比率や口コミの度合い、生徒のスポンサー企業人事部からの評価がなにより気になるスクールの経営管理者にとっては生徒の能力開発の成果実績が何よりも重要です。

ここに『Side by Side』に関して使用教材に決定し購入するスクール教務部門の評価を反映した世間の評価と講師の評価が分裂する遠因があるのではないか。と、そう私は考えています。実際、昔、同僚のある先輩アメリカ人が「講師としては嫌だが、教務担当としては『Side by Side』に一票かな」と言っていました。これ人情としてよくわかります。

『Side by Side』はCDと組み合わせれば自習用教材としても使える。よって、私は上に述べた教材投票では連勝複式とかワイドではなく単勝で『Side by Side』に勝ち馬投票したいと思います。



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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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side by side 英語本 (マーク)
2012-01-21 13:47:55
私はこの本をいつも使ってます。カーラフルで気持ちよくたかってます。cdのスピードは優しすぎるかな。
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Unknown (マイベイ)
2014-04-28 01:13:37
私もお世話になってましたこの教材に。
返信する

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