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懐かしい英語教材(5) Instant Vocabulary

2005年06月14日 17時37分10秒 | 英語教材の話題

 

◆『Instant Vocabulary』
 (Ida Ehrlich, Pocket Books, 1968) <日米英で好評発売中>


アメリカの中学校の先生がアメリカの中学生・高校生のために作られた単語集です。ボキャブラリー貧困のあまり、彼等が英米文学の素晴らしさを味わえないでいるのを見て、何とか効率的な単語増強のためのツールができないかと考案されたものです。ボキャブラリーの貧困は現在の日本の中高生だけではなく、60年前のアメリカにもあったのですね(「はしがき」によれば、著者Ida Ehrlichが本書の企画を考えたのは本書出版の19年前のことらしいです)。

本書は、接頭辞・接尾辞・語幹(語根)をキーにして、そのキーを共通にする単語を紹介するというスタイルで、全259のキーと約3,600語の単語が紹介されています。単語のレヴェルは、中高生とは言え、流石にアメリカ人を念頭に置いて選ばれているので日本のセンター試験レヴェルよりは遥かに高く、TOEICやTOEFL対策にも使えるくらいです。ただし、本書の目的はあくまでも「アメリカの中高生が偉大な英米文学の美しさを原典で味わうことができるようになるための効率的なボキャブラリービルディング」であり、収録されている単語とTOEICやTOEFLの重要頻出単語との間にはかなりのズレがあります。

逆に言えば、本書『Instant Vocabulary』は歴史や哲学という人文科学の文献を読めるようになりたいと願っている方には向いています。ということは、教養ある英米人の思考を担っているキーワードを学ぶためにも本書は最適なものの一つであり、つまり、英語でビジネスができる英語力を養成するためにも(急がば廻れのきらいはありますが、)本書はお薦めです。尚、接頭辞・接尾辞・語幹のキーの解説も簡潔平明でウィットに富んだ英語で書かれていますので、日本の高校生にとっても本書に取り組むことはそう困難ではないと思います。毎日、1時間をかけて3個のキーを学んでいけば3ヶ月で1回読めるくらいのボリュームです。半年あれば2回読了可能。この労力は充分にリターンに見合うものです。保証します。

まあ、「私を信用しなさい」では、説明責任がうるさく問われる今時、説得力もないでしょうから(笑)、二つほど本書のキーについてその説明とそこで列挙されている単語を紹介しておきます。

Key No.7 is the Suffix NESS which means the STATE OF. NESS is added to the Suffix LESS and makes the adjective back into a noun again. Just as LY makes adverbs, so NESS is the sure sign of a noun. Keeping the same Root words and adding the different keys show how important it is to know what the keys means.

effortlessness, baselessness, carelessness, artlessness, friendlessness, ・・・, sleeplessness, tirelessness, tastelessness, voicelessness, weightlessness


★KABU試訳:
第7の鍵は接尾辞のNESSです。NESSは「~の状態」という意味を表します。NESSは接尾辞のLESSに加えられると、(~LESSという)形容詞をもう一度名詞に変えます。そのように、LYが副詞を作るようにNESSは名詞の明確な標識なのです。同じ語幹を用いながら様々な(接頭辞・接尾辞などの)キーをその語幹に付け加えてみると、キーが意味していることを知ることがいかに重要かがわかると思います。



Key No.35 is the Prefix NON which means NOT in practically all languages in some similar form. You have already had IN and IM meaning NOT and UN meaning NOT. You will see that NON is not as emphatic as IN, IM and UN. For example:"He is a non-American" simply means that he is not an American citizen, he is a citizen of another country. "He is un-American" means he's engaged in activities which are contrary to the American way of life; he violates the ideals of American Democracy.

nonage, nonaggression, noncommissioned, nondescript, nonconformist, ・・・, nonsense, nonsensical, nonprofit, nontaxable


★KABU試訳:
第35の鍵は、「~ではない」という意味を表す接頭辞のNONです。NONは実際に(印欧語系の)多くの言葉の中で(KABU註:"All languages"は言いすぎでしょう!)同じような形で同じ「~ではない」という意味を表します。読者の皆さんはもうすでに、「~ではない」という意味を表す接頭辞のIN・IM・UNを学習しましたね。よって、読者の皆さんはNONがIN・IM・UNに比べるとそれほど激しい意味を持たないことを容易に理解できるのではないかと思います。例えば、"He is a non-American."は単純に「彼はアメリカ人ではない」ということ、つまり、「彼がアメリカ以外の国の市民である」ことを意味しているにすぎませんが、"He is un-American."になると「彼がアメリカ流の生き方に反対する運動に参加している」こと、つまり、「彼はアメリカの民主主義の理想に背いている」 というような意味になるのです。



本書『Instant Vocabulary』は、私が英語学校で働き始めた20年前ころにはすでに丸善や紀伊国屋の洋書売り場では平積みで販売されていました。しかし、『Instant Vocabulary』について最も印象深いのは、仕事でアメリカの大学を廻っているころに、本書を食い入るように読んでいるアメリカ人学生を何人か見かけたことです。彼等は大学院進学を目指す学生と見受けましたが、大学院進学のために必要なGREやLSATやGMATという各種、適性試験の対策準備の準備として本書を読んでいたのです。日本で言えば、公務員試験の数学のレヴェルにとりあえず今の実力では歯が立たないので、試験準備の準備として評判のいい高校入試の数学の問題集から始めている図に近いでしょうか。いずれにせよ、アメリカ人の大学生にも評判のよい本書が悪い教材であろうはずはないと思います。

1単元(キー)あたりの英文のボリュームはそう多くなく、各キー項目に楽しいゲーム形式の復習テストも収録されています。読者への配慮が行き届いた使いやすい書籍と言えるでしょう。実際、TOEIC600点以上の方であれば、通勤通学の途中でもパラパラ読めるのではないかと思います。敷居は低く見返りが大きい教材(?)。正に、理想の教材の一つだと思います。宜しければお試しください。


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