先日ライブラリーで借りた本です。
昨年6月に映画 「明日の記憶」 (渡辺 謙主演)を観ました。アルツハイマー
に犯され、だんだん自分が自分でなくなり壊れていく行く過程を、妻が最後まで
支えていく感動のドラマでした。
この小説も、アルツハイマーで苦しむ老人(60歳代)と、大学を出て4年間、
社会に融け込めず、引きこもり の青年の物語です。
あるとき公園で出会ったアルツハイマーで記憶を失いかけている老人
の最後の願い
「完全に記憶がなくなる前に 、会って謝りたい女(ひと)がいる。」
この言葉に、自分を失いかけていた青年が今まで自分は必要とされない人間
と思っていたが、老人のために最後の願いを叶えてやることを決意し、家族の
協力やあらゆる人たちの力を借りて探り当てる。青年はやがては自分も自信
も持ち、取り戻していく。
そこには親と子の「愛」 「絆」があり、織物の町、越中城端(じょうはな)の
曳山祭り等、叙情性溢れた感動的な情景を織り込んでいます。また、探り当
てた女(ひと)は、 理由(わけ)あって自殺したとされていたりのややサスペンス
性もあり、読み手をぐいぐい引っ張りこまされます。
私は余りハードボイルドなサスペンスは好きでないですが、叙情性のある、
感動を呼び起こすものは好きです。社会性も織り込んだ類の・・・
作者 小杉健治氏はかつて吉川英治文学新人賞も受賞の作家です。
(NHK出版協会)