【高松】
今回は、フィラリア症についてご紹介させて頂きます。
≪フィラリア症とは?≫
・フィラリアという蚊が媒介する寄生虫が犬の体内に侵入し、心臓や肺動脈に寄生する事によって、
循環器障害、呼吸障害、肝腎疾患等を引き起こす疾患です。
・治療が遅れると命に関わる事がある危険な疾患で、犬特有の疾患ではなく、
猫・フェレット・狸等、またごく稀に人にも感染・発症します。
・蚊が媒介する疾患なので、外飼いの場合はフィラリアに感染する危険性がとても高くなります。
≪フィラリアとは?≫
・フィラリアは別名「糸状虫(しじょうちゅう)」 と呼ばれ、犬を終宿主とする糸状中を「犬糸状虫」 と言います。
・成虫は雌が約28cm、雄が約17cm程の体長で、そうめんに似た乳白色の細長い姿をしており、
寿命は5~6年とされています。
≪症状≫
フィラリアの症状は寄生しているフィラリアの数や寄生期間、犬の体の大きさや健康状態によって様々ですが、
長期間寄生されている「慢性症」と、突然重篤となる「急性症」の大きく二つに分けられ、
そのほとんどが「慢性症」の経過をたどります。
感染初期や少数寄生の場合、症状がほとんど見られない事があり、
多くは数年が経過してから症状が現れるので、その時には既に重篤という場合があります。
感染の疑いがある場合、下記の症状がみられます。
運動した後でもないのに、息が荒く、苦しそうな呼吸をする。
咳をする。
元気がなくなり、散歩を嫌がったりする。散歩の途中で座り込む。
水を異常に欲しがる。
四肢のむくみ(浮腫)が見られる。
毛艶がなくなる、脱毛、痒みで良く体を搔く。
更に症状が進行すると、
白目や歯茎が黄色くなる「黄疸」が見られる。
痩せるが、お腹だけ水が入った様に膨れる「腹水」が見られる。
気道から出血で血を吐く。
食欲不振や嘔吐をする。
ぐったりしたり、寝てばかりいる。
心臓の機能が十分でなくなる事で、全身の臓器がうっ血状態になり、
肺・肝臓・腎臓等が機能不全に陥ります。
また、急性症の状態として多数の虫体が寄生していると、
「急性犬糸状虫症(大動脈症候群)」と呼ばれる症状を起こします。
上記の症状+ワイン色の血色素尿、重度の貧血、呼吸困難が見られます。
緊急治療が必要なことがあり、治療が遅れると死亡率はほぼ100%と言われています。
≪原因≫
蚊によって媒介されるフィラリアが犬に感染する事によって起こります。
[感染経路]
フィラリアに感染している犬の体内にはフィラリアの成虫と成虫が産んだ子虫
「ミクロフィラリア」が血流にのって、体内の至る所に存在しています。
ミクロフィラリアは蚊に吸血されるのを待っていて、蚊に吸血されるとその蚊の体内で
約2週間かけて感染能力を持つ感染幼虫にまで成長します。
感染幼虫を持った蚊が、他の犬を吸血する際に蚊から犬の体内へと侵入し、感染します。
犬の体に侵入した幼虫は、2~3ヶ月かけて皮下や筋肉の中で成長します。
その後、静脈から血管に入って血流にのって心臓へ向かい、感染から約半年で心臓の右心房や肺動脈に寄生し、
更に成長して成虫となり、幼虫を産出し始めます。
≪治療≫
まず、フィラリアが寄生していないか、血液検査を行います。
血液検査には、血液を顕微鏡で調べ、ミクロフィラリアの有無を確認する「ミクロフィラリア検査」と、
検査キットを用いて成虫が血液中に放出している物質(抗原)を化学的に反応させて検査する「抗原検査」の2種類があります。
ミクロフィラリア検査でミクロフィラリアが見つかなくても成虫が寄生している場合もあるので、
他に心電図、心臓・肺のレントゲン検査、超音波検査を行う事もあります。
また感染が確認されている場合でも、寄生部位やその部位の状態を確認する為に上記の検査を行います。
治療には、「内科的療法」と「外科的療法」があります。
【内科的療法】
薬で体内のフィラリアを駆除します。
薬によって死滅したフィラリアはやがて血液中で分解されて消えてしまいます。
しかし、寄生数が多い場合は、多数の死滅した虫体が肺動脈に詰まり、命に関わる事もあるので、慎重に投与する必要があります。
その為、投薬後4~6週間は安静にし、散歩や運動を控えて様子を見て下さい。
【外科的療法】
主に急性犬糸状虫症の際に行われる治療法で、心臓や肺動脈に寄生したフィラリアを外科的手術で取り出します。
※フィラリアによって傷つけられ脆くなっている血管に管を入れる為、血管を破損させてしまう可能性があります。
検査結果や犬の体調・年齢を考慮して上記の治療が行えない場合は、
症状に応じた処方食や薬を用いて、腹水を減らしたり、席を抑えるといった対症療法を行います。
≪予防≫
フィラリアは予防すれば100%防げる疾患ですが、予防をせずに蚊のいるシーズンを3回越した場合、
そのほとんどがフィラリアに感染していると言われています。
予防薬には、錠剤タイプ、チュアブル(肉に似た触感の薬)タイプが主に使用されていますが、
薬が飲めない、吐き出してしまう為投薬に問題がある子にはスポットタイプと注射タイプがあります。
投与量は体重によって決められており、投与前に血液検査を行い、フィラリアに感染していないか調べましょう。
投与期間中に体重が上下した場合、投与量を変える必要があります。
一般的な投与期間は、蚊の活動始める1ヶ月後から活動終了1ヶ月後までとされています。
※地域によって蚊の活動時期は異なります。
予防薬は飲んでから1ヶ月効果が持続するのではなく、実際には駆虫の働きを兼ねていて、
毎月薬を飲むことによって体内でミクロフィラリアが生存できない状態にしています。
よって、予防薬の投与は蚊が居なくなったからと言って勝手に中止せず、期間中はしっかりと投薬するようにしましょう。