【マイノードの運用について】
自分で立ち上げたノード局を自分でアクセスして自分専用で使う、そのようなノード局を「マイノード」と呼んでいます。マイノードは公開ノード局と異なり、運用したいときだけ稼働すればことが足り、そしてアクセス可能範囲を限定することで他局に迷惑を与える可能性も極めて低くなることから、VoIP無線が始まったころ(十数年前)から広く採用されている運用形態です。この方法は、周波数の有効利用の観点からも効果的とされています。
ところが最近、マイノードでよくある話として、自局のコールサインで運用するノード局をノード局と同じコールサインでアクセスする場合の法的な話題が取りざたされているという情報をキャッチしたので、そのことについてまとめてみました。
● 免許の状態により異なるグレーゾーン
(1) コールサインがAの局(A局)が移動局として免許をうけているだけの場合(免許状1枚)
(もちろん、A局は無線機器を適法に申請または届け出済みとします。 )
■ 問題ない運用(違法性はない)
・常置場所に設置したA局のノード局を常置場所からA局がアクセス
(例:自宅ノードを自宅でアクセスする場合)
・「お出かけ先」に設置したA局のノード局を同じ「おでかけ先」にいるA局がアクセス
(例:現在流行しているモバイルノード局、車載ノード局がこれにあたります)
■違法性を問われる可能性がある運用
・常置場所に設置したA局のノード局を常置場所以外でA局がアクセス
・常置場所以外(B地)に設置したA局のノード局をB地とは違う場所でA局がアクセス
【ヒント】 移動局免許1枚でも、ノード局と同じ場所(例えば、自宅のノードなら敷地内、移動ノードなら車内やその近く)でアクセスすればコールサインが同じでもまったく問題はない。同じ場所とは、社会通念上「お出かけ」にならない範囲ならOK
(2) コールサインがAの局(固定A局)を固定局として設置場所で免許をうけ、かつ
同じコールサインで移動局免許(移動A局)の交付も受けている場合(免許状2枚)
※固定局=移動しない局
■問題ない運用(違法性はない)
・設置場所で運用している固定A局のノード局を移動先から移動A局がアクセス
・移動先で運用している移動A局のノード局を設置場所で固定A局がアクセス
■違法性を問われる可能性がある運用
・固定A局を設置場所以外で運用した
【ヒント】 固定局と移動局でそれぞれ免許を受けておけば、同じコールサインでも固定局の設置場所でノード局を運用し、移動局でノード局をアクセスしても何ら問題はない。2アマ、1アマの皆さんで固定局、移動局と2枚の免許状がすでにあればそのまますぐに運用できる。
【解決策】
マイノードを運用していても、慣れてくると、マイノードを外出先からもアクセスしたくなったり、公開ノード化も検討したくなります。そこで、多くの皆さんは、以下のように無線局免許を整え、常置場所(または設置場所)のノード局を「お出かけ先」から自分でアクセスできるようにしたり、オープンノードに格上げしています。
・移動局免許のほかに固定局免許を得て運用する(3アマ、4アマでも固定局免許は得られる)
この場合、固定局免許と移動局免許の設置場所、常置場所の住所が同じ総合通信局の管轄になる場合は、それぞれ同じコールサイン(識別信号)の免許状になります。
・ノード局を社団局免許で運用する(2名以上の無線従事者がいれば社団局免許が得られる)
ノード局を社団局の免許で運用することで、管理態勢の強化にもつながり今回のような件も解決できます。社団局の開設方法については、社団局開局ガイドをご覧ください→ http://jq1yda.org/topics/wires/shadan/index.html
【根拠】
通説「移動局の設備はセットで移動する」
アマチュア局の免許は「免許状1枚で複数の場所から電波の発射はあり得ない」という解釈がされており、移動局免許の場合、「その免許」で許可されている無線機(送信機)がセットになっている移動しているという考え方です。
そして、「その免許」で電波の発射を許可された(届け出ている)無線機の台数ぶん、「同地」から同時あるいは同時期に電波が発射できます。
そもそもこのようなことは、30年以上前、実際にパケット通信のBBS運用が盛んに行われているころからよく行われている運用形態であって、パケット通信全盛期も、今までのVoIP無線界にあっても指導や処分の形跡はないことから、議論の余地はないでしょう。
これらの根拠となる条文は「無線局免許手続規則」第2条と考えられます。この条文では、無線局の免許は送信設備の設置場所ごとに送信機単位で免許されるものであり、アマチュア局(など)に限っては送信機の設置場所が同じであれば合理的に2台以上の送信設備でも1枚の免許で済む(単一の無線局として免許される)、という規則があります。
このような背景をヒントに、1200MHzで複数の場所から10Wで運用したい場合など、10Wで運用したい場所ごとにそれぞれ固定局免許を得て複数の場所で10Wで運用できるようにするということも行われています。
■ ノード局運用について、現在の解釈に至る経緯
マイノード運用が基本だった
VoIP無線が始まった当時は「マイノード運用」が基本で、「オープン・ノード」は法的に議論の余地がありました。平成17年に今回のような話題があり、その内容は http://jq1yda.org/topics/wires/houki.html で見ることができます。このWebページの内容は総務省総合通信局が定める審査基準に基づいてJARLが公表した「アマチュア無線と公衆網との接続のための指針」を改定するにあたって草案を査読した当時のJQ1YDAメンバー(のうちの一人)がまとめたもので、その解釈は今でも変わらないでしょう。
そして、「アマチュア無線と公衆網との接続のための指針」で示されている運用形態でノード局とアクセス局がそれぞれ別の局として例示されていますが、これはアマチュア局が他のアマチュア局が運用するノード局を使う行為がノード局の運用者にとって「他人の依頼による通信にあたるのか?」という疑問が取りざたされていた背景もあり、あえてこのパターンが例示されています。
結果として、「ノード局運用者がほかのアマチュア局に自分のノード局を利用してもらうという積極的な意思(同意)があること」と「ノード局をアクセスする局がアクセスする意志があること」、この2点の要件を満たせば第三者通信にあたらないという考え方が示されました。これを判定するために、トーンスケルチやデジタルスケルチの利用が機械的に意志を確認する手段として活用され、VoIP無線ではTSQを使った運用が普及します。そして、このTSQ運用が既存の運用局との摩擦を生んだために、アマチュアバンドプランでVoIP無線用区分が策定され、既存の運用から「隔離」されました。なお、広帯域のデータ区分もこれと似たような経緯で策定されたため、音声通信系(DVモード),リアルタイム文字通信系(RTTYなど)のデジタルモードとは別の区分が策定され、そこではパケット通信用の電波しか発射できません。
要するに、同じ場所にある自局ノードを自局がアクセスするなどということはあまりにもあたり前すぎて議論の余地はなく、明示するまでもなかったという経緯だったのでしょう。
■ 本件の信ぴょう性
本件は、JQ1YDAメンバーがこれまで複数の総合通信局に確認した内容と最新の情報に基づきまとめたものですが、30年以上前から行われていたパケット通信のBBSアクセス(現在はAPRSのI-GATEやデジピータの運用)、そして、十数年以上に渡って行われてきたVoIP無線のメジャーな運用形態をみるに明らかでしょう。
ただ、移動局免許1枚しか得ていないのに自宅と移動先の場所から同時(同時期)に同じコールサインで電波が出ている状態だけはグレーですから(ただ、指導などの前例は見聞きしていない)、WIRESなどのVoIP無線をダイナミックに楽しみたい場合は、ノード局の社団局化、または個人でも固定局免許と移動局免許をそれぞれ取得するように検討いただくとよいと思います。
また「アマチュア無線と公衆網との接続のための指針」に基づきノード局の管理態勢をしっかりとられることをお勧めします。本格的に運用されている皆さんは、TeamViewerを入れてノード局システムを監視したり、WiRESソフトウェアの機能として持っているWebリモートを使ったりなど多種多様な方法で管理されており、社団局のコールサインを持つノード局が多い理由にはそのような背景もあります。
de JQ1YDA 東京WIRESハムクラブ