飛んでけ、水曜日!

文学とか言語とか。ゆるく雑記。

『青騎士』読了

2021-04-23 22:33:33 | 読書

『青騎士』を読み終えたので、内容について感想を書こうと思う。

この漫画雑誌のスタンスに反して、やはり前から読んでいる作品には目がいく。入江亜季先生の『北北西に曇と往け』、鰤尾みちる先生の『篠崎くんのメンテ事情』は連載当初から好きな作品だが安定感がある。特に『北北西に曇と往け』は新規読者に配慮して、かなり丁寧な始まりだった。

正直、ここで初めて出会った作品で自分にとってピンとくるものはなかったと思う。それでも、毛塚了一郎先生の『音盤紀行 追想レコード』にはホッコリしたし、ハラヤス先生の『凍犬しらこ』は主人公もしらこも見た目の好みどストライクだった。

大槻一翔先生は『青騎士』のチラシの絵が好きだったので、またあのような絵柄の作品を描いてくださったら嬉しいと思う。

まだ自己紹介のような本当に最初だけの作品が多かったので、次号に期待する。


新雑誌『青騎士』購入

2021-04-23 21:48:40 | 読書

待ちに待った新雑誌『青騎士』が発売されたので早速購入した。紙本の売上が減っているというこの時代に、新しく紙の雑誌が創刊されたことを大変うれしく思う。

見た目からして中々気合が入っている。ツルツルの素材の表紙にタイトルは箔押しで、全598ページ、定価は税別800円。表紙絵は森薫さんで、ヴァシリー・カンディンスキーとフランツ・マルクが1912年に発行した雑誌『青騎士』に向き合っている絵。紺の背表紙には控えめに書かれた「DER BLAUE REITER」の文字。カッコいい、本当に。

最近装丁の凝った漫画が多いと感じるが、見えるところに置いておいて様になるデザインのものは所有欲も満たしてくれる。装丁がいい、紙がいいということは紙本の購買意欲が高まる理由になると思う。内容を読みたいだけならeBookでいいと思うので、これから紙本は豪華本が増えていくのかもしれない。

紙は単行本にも使われるフロンティタフWが使われているらしいが、私の感覚では漫画雑誌はずっと取っておくものではないので、中の紙に関しては正直“良すぎる”と思う。紙が良いぶん、イラストの繊細な部分まできれいに印刷されていると思うが、個人的には好きな作品は単行本を買うので、そこで頑張ってもらえればいいかと。

ネットのレコメンド機能による触れるジャンルの固定化に反する方向で、新しいジャンルとの出会いを提供することがこの雑誌の目指すところらしい。この考えには賛成できる。ネットのレコメンド機能がよく働くようになってから、一度ある作品を読むと似た作品ばかりがおすすめに表示されるようになり、そこに便利さよりもつまらなさを感じていたからだ。

一つの雑誌になったことで、別冊として提供されていたときよりも「新しいものとの出会い」を作りづらくなりそうだと思う。今後どうしていくのか、期待をもってとりあえず6月号は購入する予定だ。

今こそネットからのレコメンドではなく、新しい作品に出会ってほしい。新漫画誌『青騎士 第1号』、創刊号発売!

 

KADOKAWAオフィシャルサイト

 

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青騎士|note

2021年4月20日創刊の、あたらしい漫画誌。株式会社KADOKAWA・エンターブレインブランドより発行。この青騎士という漫画誌は、月刊AS...

note(ノート)

 

 


風神雷神~風の章

2021-04-14 15:22:51 | 読書

柳広司の『風神雷神』(講談社文庫)を読了。上下巻本なので、まだ半分しか読んでないことになるが感想を書いておく。

柳広司といえばコミックやアニメ、映画にもなった『ジョーカー・ゲーム』が有名だと思う。私もそれで柳広司と出会った。私のイメージでは柳広司は技巧派ミステリー作家だったが、『風神雷神』では柳広司らしさが生かせていない気がした。俵屋宗達を軸によく調べて独自の解釈をして、でもそれだけだという感じがした。D機関シリーズや『ロマンス』のように魅せられる感じがしない。

今回はちょっと残念だったが、柳広司は私が「この作家が好きだ」と思う数少ない作家さんの1人なので、次回作を楽しみにしている。

D機関シリーズが有名でこれも素晴らしいと思うが、『ロマンス』に漂う雰囲気はこれまでどの本にも感じたことがないものでとても気に入っている。一般的にイメージする“ロマンス”とはかけ離れているかもしれないが、私はこの作品を読んでこれは“ロマンス”だと感じた。大正や昭和の初めあたりが好きな人には本当にお勧めする。


果ての星通信~マルコの恋人

2021-04-13 13:58:43 | 読書

メノタさんの『果ての星通信』(Pash!コミックス)は今追っている漫画の一つだ。私は『果ての星通信』の宇宙観、神様観がすごく気に入っている。今までほのぼのした作品だな、と漠然として何も考えずに読んでいたが、読み返してみると主人公・マルコの恋人について思うことがあったので書いてみる。本誌で確定していないカップリングの話を見たくない方、ネタバレを見たくない方は注意。

 

 

 

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読み返していくと、まず第6銀河支局のカップルが(宇宙人に地球人の性別が当てはまるか分からないけど)女性同士のカップルかもしれないと気づいた。そして、この作品では同性カップルも普通に登場するものだとあらためて意識的に確認した。すると、突然マルコの恋人は義兄のアリョーシャかもしれない、と思った。

マルコの恋人は今まで姿も性別も分からないように描かれている。私は今までマルコの恋人は、男性的なサバサバした女性をイメージしていた。でも、マルコの恋人=義兄アリョーシャだとすると腑に落ちる点がいくつかある。詳しいことはぜひ作品を読んでみてほしい。

ここからは完全に妄想だが、なぜマルコは「告げるつもりのなかった気持ち」を告げることになったのだろうか?年の離れた幼馴染は大人になると普通、疎遠になりがちだと思う。マルコの想い人がなんでもない他人の、パートナーがいるわけでもない幼馴染なら、告げないよりも告げた方が共にいられる可能性が生まれるように思う。マルコが「告げない」と決めていたことには理由があって、それを「告げる」に至るまでには、何かしらの大きな転換点があったはずだ。それは、きっと両親の死だと思う。マルコの想い人は、両親の埋葬式ではまだ恋人ではなかったようなので、告げたのはその後だろう。両親が死んで、親戚とも関係がほとんど切れたことでマルコとアリョーシャは兄弟から、(ある意味で)もっと離れた関係になれたのではないだろか。そして、可能性を見出した。

マルコとアリョーシャが恋人であってもなくても、マルコにとってアリョーシャは局長がその姿に変身してしまうくらい「失うのが怖く」て、神様がその姿に見えてしまうくらい特別な存在だ。10年後、アリョーシャはマルコを待っていてくれると信じて、これからも『果ての星通信』を応援していこうと思う。

追記(2021/04/13):『果ての星通信』完結しましたね。メノタ先生にはお疲れ様と感謝の気持ちを。マルコの恋人は終にはっきりと示されることはありませんでしたが、ハッピーエンドでよかったです。恋人がアリョーシャでなかったらマルコの妙な執着の相手が2人もいることになって、それはそれでマルコ……。ってなると思います。


お任せ!数学屋さん

2021-03-01 00:19:11 | 読書

向井湘吾さんの『お任せ!数学屋さん』(ポプラ社)を読了。

5月にやってきた転校生・神之内宙の将来の夢は、数学で世界を救うこと!宙は”数学でみんなの悩みを解決する”数学屋を始める。隣の席の天野遥は、初めは宙のことを変わったやつと思い、隣で数学屋をやられることを迷惑に思っていた。けれど、遥の悩みを宙は数学で即座に解決!遥は数学屋さんの仕事にワクワクを感じ、数学屋さんを一緒にやることにした。

図書館では大人向けのコーナーに置いてあったが、中高生に読んでほしい作品。「数学は生活に役立つのか?」という学校の勉強だけしていると思いがちな疑問を、身近な悩みの解決法に数学を使うことで答えている。中学生時代に読んで面白かった作品に『数学ガール』があるが、本作品で解説されるのは中学レベルの数学で比較的分かりやすい。数学の苦手な読者でも、遥と一緒に、宙みたいに高いレベルの数学ができなくても、数学に対してポジティブになっていく感覚を共有できるのではないだろうか。

個人的には最後の展開が蛇足かな~と感じたけれど、数学屋さんがまだまだ続くという点では嬉しい。遥が作中で「数学者は私たちの住むこの世界とは違う『数学の世界』に住んでいるんじゃないか?」と何度か言っていたが、私もそう思う。私自身は数学が嫌いではなかったけれど、高校の数学の授業や課題は理解できなかったときに噛み砕いて咀嚼する時間があまりなかったな、と思い出した。皆さんは数学、好きでしたか?

※2021/3/3追記 続編読了。続編をあんまり考えていないと思われる構成。2巻は文化祭の話、ストーリーは軽めで読み飛ばしても問題なさそう。3巻は宙の文学好きな親友、宙の夢「数学で世界を救う!」に関わる話で読む価値あり。