ひとつの世界的金融機関と絶対安全云われた住宅金融会社が破綻した。米国のリーマンブラザースとファニーメイの破綻がそれである。
そうした世界的金融危機のなか、日本経済新聞9月24日付け株価指数先物20周年記念シンポジュームが開かれレオ・メラメドCME名誉会長が講演した。冒頭「20年前私は日経平均先物の取引開始に立ち会うために来阪し、「歴史は繰り返す」と申し上げてきた。さかのぼること200年以上前、1730年に世界最初の先物市場が生まれたのが大阪だったからだ。」と明確に堂島米会所を意識した発言だった。当然、先駆者である淀屋についての造詣も深い。
(彼の元には、新山道江著 真説淀屋辰五郎(上)(下) 今井出版をシカゴCMEあてに贈呈した。無論日本語であるがCME(シカゴ、NY)両市場とも日本人のスタッフがいるので 別に言語に不自由はないはずである。)
更に、現在の世界市場が店頭デリバティブなしに機能するのは疑わしい。ただ、これらは非常に複雑かつ高度な金融商品であり、扱うには専門家だ。・・・・ここで問われているのは、先物市場はどのような振る舞いをしたかということだ。・・・・こうした混沌とした市場環境の中で、取引所に上場しているデリバティブは何の問題もなく運営され、破綻やディフォルトもない。
(非常に複雑高度な金融商品を取り扱うには専門家が必要と云っているのは、淀屋言当が三市場の決済しステムを全て為替でおこなっている事に起因する。茶人であり、優れた経済学者である言当は、幕府の相次ぐ貨幣改鋳によるインフレとデフレによる価格のぶれに反対したフィッシャー主義的要素を持っていた。これは、先物を現在価値に直す魁となった数学的要素そのものである。だから信用のリスクヘッジの概念が生まれた。そこに破綻やデフォルトはない。日本の債権デフォルトは徳政令という形で出されたがそれはあくまで限定的なものである。)
先物市場は、価格発見の場をつくり出し、低コストのリスクヘッジを可能にしている。情報開示もオープンで透明だ。先物には人工的な根付けは行われない。中央清算機関もあり、全ての取引について取引相手の信用リスクを排除している。日々損益の計算が実施されトレーダーが損失や利益を隠すことも出来ない。規制当局の監視も受けており、これらが店頭デリバティブと違うところだ。
(これは、井原西鶴 日本永代蔵 の解説でもなければ淀屋店頭米市場の話でもない。現代のデリバティブの現場の話である。しかし、同様のことは淀屋の店頭でも行われていた。そしてこの画期的制度が淀屋箇斎が始めた「消合場」の設置である。消合場は堂島米会所時に英語でクリアリング ハウスと訳されている。清算機関であり、正確な記録を記帳し、その日の損益計算を素早く行った。箇斎は優れた会計学の天才だったのかもしれない。これは、ヨーロッパの市場の失敗が清算期間を設けてこなかったためトレーダーの損益が把握できないことによる情報の隠匿が頻繁に行われやがてはバブルを生む原因となった(和蘭チューリップ相場事件)ことを巡察使ヴァリヤーノから聴いていたことからではないだろうか。ちなみに彼は、スペインで会計学を学んでいる。)
・・・・・このプロセスは国家の生産性向上にもつながっている。
(淀屋の最終的目標も同様だった。米市場を通じて生産の向上による物価の安定を目指した。それは、創始者 常安が戦乱の中で家族を失い古い時代の呪縛から開放された市場を創設しようとした志と似ているのかもしれない。メラメド氏も同様なプロセスを辿った経歴を持っている。もしかしたら淀屋常安を一番理解できたのはメラメド氏かもしれない)
日本のマスコミは、リーマンの破綻をのんびりと伝えた。また、AIGの買収劇も他人事に付け加えた程度に報道したが 世界はいち早く日本以外ではトップニュースである。ここには、米国大統領ケネディ演説の上杉鷹山を知らない日本人が透けて見えてくる。歴史は繰り返すは真実なのか。Codeをメラメド講演の中に見た思いであった。