JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

狩野舞子選手2枚替え分析 ロンドンブラジル戦 その2

2012-12-20 12:14:57 | メディア注目選手のその後
続きです。

第二セットと第三セットは2枚替えはなしでした。しかし2枚替えの悪影響はここにも現れています。

第二セット
1回目の前衛2枚ローテ 5得点3失点→+2点
2回目の前衛2枚ローテ 4得点9失点→-5点

これは不思議な数字です。なぜここまで流れを失ったのでしょうか。それは、ブラジルの新鍋理沙選手対策が効いてきたからです。

ブラジルは、
・サーブを徹底的に新鍋理沙選手に狙う
・新鍋理沙選手はマークしない
・新鍋理沙選手に速いトスが上がれば、バンチリードで得意のクロスを締める(その一歩分レフト攻撃へのブロックへの移動が短くなり、レフトも潰せる)
・新鍋理沙選手に高いトスが上がれば、ストレート側でキルブロックを狙い、クロスにはレシーバーを2人配置する
という対策をしてきました。サーブレシーブが巧すぎて普段は狙われない新鍋理沙選手ですが、この試合では第二セット中盤から崩れ始めました。そもそも、新鍋理沙選手をサーブで狙うのは何故でしょうか。それは、「山口舞選手を出したらサーブで潰すぞ」という脅しのようなものです。それに怯み、新鍋理沙選手を山口舞選手に替えたのは第三セットで時すでに遅し。そんなにブラジルが山口舞選手を嫌がっているなら、出したら良かったのです。それをしなかったのは、セット後半で2枚替えをする予定があったからでしょう。2枚替えに固執したため、他の有効な交代が出来なくなってしまったのです。

それにしても、第二セットの1回目の前衛2枚ローテは素晴らしい。竹下佳江選手含む3枚ブロックで間接的に1得点、竹下佳江選手のロックを嫌がりジャケリネ選手がアウト、迫田さおり選手がバックライトでライト不在を補う。これで5得点3失点なので、そもそも前衛2枚ローテは問題ではなかったのです。第一セットも第二セット中盤までも、失点は前衛3枚ローテに集中しています。それなら、新鍋理沙選手の前衛時に山口舞選手を入れるなど、対策はあったはず。前衛2枚ローテ対策としての2枚替えにこだわり、前衛3枚ローテの問題点の修正が出来なかったのが痛すぎました。

この試合、同然ブラジルの強さは存分に見せてもらいました。これでは2枚替えしなくても負けていた可能性が高いです。しかし、同じ負けるにしても、日本が交代で自滅して負けるのは見ていて悲しかったですし、負けるにしても強いブラジルが強い日本に勝つ高度な試合を見たかったです。

8 コメント

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大山の戦評には呆れました (trefoglinefan)
2012-12-21 17:33:54
 この試合について、大山加奈が何かで戦評を載せていました。フジか何かでしたでしょうか。竹下のトスが悪いやら何やら書いたあげく、最後に「救いは新鍋があれだけ狙われていたがレシーヴが崩れなかったこと」とやら、何だか訳の分からないことを書いて、私自身本当に呆れていまいました。W杯では勝って五輪で負けた。守備が崩されたのではなくて攻撃が全然機能せず、ただ負けるのを指をくわえて見ているような試合を、全然分析していないからです。
 対戦相手に恵まれて結果的に3位になりましたが、五輪における日本のバレーは、結局は両レフト頼みのオープンバレーだったと思います。
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trefoglinefanさん、 (JM)
2012-12-21 23:06:20
コメントありがとうございます。

大山加奈さんは、選手時代に竹下佳江選手の低空飛行トスが合わなかったことを、未だに根に持っている節があるのかも知れませんね。ワクフバンク戦の解説でも、「セッターが高いのでアタッカーが良い形で打てています」と暗に竹下佳江選手を批判してみたり。また、韓国戦勝利後のテレビのコメントでも東レの選手の名前しか挙げず、やや不快に思ってしまいました。

確かに竹下佳江選手のトスにブレがあったのは事実でした。しかし、ブレた時に目立って失点していたわけではなかったですよね?

新鍋理沙選手のサーブレシーブですが、彼女はいわば攻撃免除的な所があるので、要求される水準は高いです。そのため、他の選手ならあのサーブレシーブでハナマルですが、新鍋理沙選手のポテンシャルからすると崩されたという表現にならざるをえません。竹下佳江選手より新鍋理沙選手前衛時に失点が多かったことに、大山加奈さんは気付いていなかったのでしょうか。

この試合、裏レフトのバックアタックが有効に決まらない状況も考え、私なら第二セット以降以下のように賭けに出たと思います。

S1
山口 荒木 ①木村
②新鍋 ③佐野 竹下
木村レフト、荒木クイック、山口L、新鍋バックセンター

S6
①新鍋 ④山口 荒木
②佐野 竹下 ③木村
木村バックセンター、荒木クイック、山口L、新鍋レフト

S5
大友 ①新鍋 ④山口
竹下 ②木村 ③佐野
木村バックセンター、大友クイック、山口L、新鍋レフト

S4
竹下 大友 ①新鍋
②木村 ③佐野 ④山口
木村バックセンター、大友L、新鍋レフト

S3
①木村 竹下 大友
②佐野 ③山口 ④新鍋
木村レフト、大友L、新鍋バックライト

S2
荒木 ①木村 竹下
②山口 ③新鍋 ④佐野
木村レフト、荒木L、新鍋バックセンター

4枚キャッチで、木村沙織選手と山口舞選手がやや狭い範囲を守るという、攻撃を見越した守備強化です。そして、新鍋理沙選手前衛の3ローテで迫田さおり選手か江畑幸子選手を守備免除で入れて、攻撃の山場をつくります。

もちろん、本番でいきなりやれば、ドタバタ大失敗だったでしょう。しかし、ロシア男子のムセルスキー選手ライト・ミハイロフ選手レフトの布陣のように第二の布陣として秘密裏に練習していれば、本番で出来たと思うのです。2枚替えにこだわった結果、このような思い切ったカ
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新鍋がレフトとは (trefoglinefan)
2012-12-22 07:31:37
 JMさん、これはおそれ入りました。後から考えるとそう思うかも知れませんが、五輪でそれをやると、石田か栗原を連れて来なかったミスを認めるようなものになってしまいますよね。ただそう思わせるくらいの新鍋の成長が、日本にとっては嬉しい誤算だったでしょうし、韓国戦での迫田とのポジション・チェンジで、開花したような気がいたします。
 新鍋レフトで山口ライトは、交代の駒を有効に使えば面白そうですね。新鍋が前衛の時に江畑を使い、山口が後衛の時には迫田か狩野を入れる。迫田を山口の代わりに入れたら、後衛3ローテだけでなくS1まで使えばいいですね。狩野はワンポイント・ブロッカもあり。中道はピンチサーヴァ。交代は6人までですから、全て交代はできませんが、交代の駒が多いのはいいですよね。
 ブラジル戦の問題点は守備が安定していたにもかかわらず攻撃が糸口さえ見出せなかったこと。それに対する対策を打つこともなく、実に退屈な試合を見せられた感がありました。守備で崩されて負けたのならば、力不足だと割り切ることができますが、何の工夫もなく負けたのだったら、観戦する方は本当に堪えます。もっともそれに気付かないファンが多く、だからこそ大山のような解説がもてはやされるのでしょうが。
 銅メダルの割りに感激が少なかったのは、このブラジル戦での不満が私には大きかったです。
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trefoglinefanさん、 (JM)
2012-12-22 10:38:18
確かに新鍋理沙選手のレフト起用は賭けになりますが、それくらいしないと勝ち目はない試合でしたから、賛否両論を覚悟で書かせていただきました。新鍋理沙選手は、オリンピック直前で一番成長した選手ですよね。秘密裏に練習していたであろうレフト平行も、長年合わせてきていたかのような完成度でしたし。もちろん裏レフトに石田瑞穂選手や栗原恵選手を入れても、同じことができます。おっしゃる通り、メンバー選考のミスを自認する形になりますが、新鍋理沙選手の引き出しの多さを十分に活かす形でもあります。やはり新鍋理沙選手のサーブレシーブは外せません。

私が新鍋理沙選手レフト起用を考えたのは、グラチャン2009の韓国戦を思い出してのことです。この試合は山口舞選手のデビュー戦でしたが、木村沙織選手と栗原恵選手が対角でサーブレシーブをしていて、佐野優子選手と山口舞選手も加わった4枚キャッチでした。その中で、山口舞選手前衛時には実質的にキャッチ免除となり、後衛時には栗原恵選手を活かすために山口舞選手も守備範囲を広く取っていました。この試合、山口舞選手は本当に完璧な動きでした。しかし、栗原恵選手に代わって守備免除の坂下麻衣子選手が入った試合では、山口舞選手が守備参加し、明らかに攻撃のキレが無くなっていました。

過去の対戦から見ても、ブラジルは山口舞選手を相当嫌っていました。しかしサーブを山口舞選手に集めれば崩れるという算段もあったでしょう。そこで、グラチャン2009の形を新鍋理沙選手で作れば、かなり完璧な形になるように思ったのです。

こういった第二の布陣を持つことは、これからデータバレー全盛期を迎えるにあたり、非常に重要になります。男子決勝を見ても明らかでした。やはり、そのためにも、控え選手の選び方は重要ですよね。

こう考えると、北京の時にも、マルチポジションが可能な大村加奈子選手と狩野美雪選手が居たわけですから、監督の異様なスタメン固定の拘りさえなければ、面白いことが出来ていたのではないかと思ってしまいます…。
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Unknown (ミン)
2013-01-04 12:49:21
今の私の世界女子のランクなんですが、あくまでも総合的(S~E)に見てなんですが・・・因みに北京後~ロンドンまでを見た評価ですが

S アメリカorブラジル
A イタリア 中国 ロシア
B 日本 セルビア トルコ
C ポーランド タイ ドイツ ドミニカ
D オランダ 韓国 キューバ
E アルゼンチン プエルトリコ ペルー
以下それ以下

だいたいあってますか?
タイとドミニカは微妙ですが
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後衛の新鍋をわざわざ狙うって不自然ですよね (trefoglinefan)
2013-01-04 17:35:08
 正月休みの間、カレンダー裏を使って実際に紙に書いていろいろ研究していました。そしたら、どのローテではどの選手を主にサーヴで狙えば良いのか、何となく分かりました。前衛ならまだしも後衛の新鍋をサーヴで狙う理由があるとすれば、コート内のメンバだけで考えたら「新鍋が一番レセプションが下手だから」ということ以外に考えられないですよね。
 でも新鍋はきっちりレセプションを返していたのですから、ブラジルの新鍋狙いの意図はコート外にあることがとてもよく見てとれました。そのことにJMさんしか触れないのは、何だかおかしいと思います。
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ミンさん、 (JM)
2013-01-04 18:48:55
明けましておめでとうございます。コメントありがとうございます。

ランク付けは難しいですね…。一口に日本と言っても、2009年、2010年、2011年、2012年全てが全く違うチームでしたから。もし単に全試合の対戦成績ということでしたら、ミンさんのランクで大体合っているのではないですか?

ただ、大事な試合での勝ち負けを基準にするなら、世界バレーでアメリカを破りWCでアメリカとブラジルをストレートで破り、ロンドンで中国に競り勝った日本は、もう少し高評価になると思います。期待と愛着を込めて、私なら日本をAに入れたいです^^
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trefoglinefanさん、 (JM)
2013-01-05 00:24:53
明けましておめでとうございます。コメントありがとうございます。

後衛の新鍋理沙選手にサーブを集めたのは、山口舞選手の出場阻止に他ならないと思います。その意図を理解し、さらに裏レフトのバックアタックがほとんど決まっていない状況を直視すれば、ブラジルの予想を超える采配が出来たかも知れないので、本当に残念です。あの状況では、やはりライトに山口舞選手、裏レフトに新鍋理沙選手を入れるくらいの思い切ったことが必要だったように思います。それで勝てたかどうか分かりませんが、無策に負けるよりは納得できた気がします。

ブラジル戦での新鍋理沙選手狙い、それに韓国戦での迫田さおり選手と新鍋理沙選手のブロックチェンジ等、ロンドンでは様々なドラマがありました。そういった勝負を分けた采配についても、是非多くの方に知っていただきたいです。
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