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戦前の結核の特徴(前篇)

2015年03月27日 07時00分00秒 | その他
戦前の我が国の結核問題について、東大付属伝染病研究所(現医科学研究所)の佐藤秀三(東大、大正4年卒)は1940(昭和15)年10月9日東京市軍人会館(現九段会館)で、結核問題の医学講演会(実験治療社主催)の講演で述べた要約を引用する。
この年には東京オリンピック、万国博覧会も予定されていましたが、日中戦争1937(昭和12)年のため中止になった。
この記念すべき年には、長引く戦争と窮乏する生活から国民の鬱憤(うっぷん)を晴らすため、祭りや行事があらゆる分野で行われた。
佐藤秀三によると「結核は結核菌が身体に入って結核になるわけで、予防はその結核菌が身体に入ることを阻止できればよいわけです。
結核菌が発見されてから50年、その結核撲滅の努力はしていますが、一向に結核は減っていないのです。
そこで結核の予防を論じるに当たって、最初に結核がどれほど日本に蔓延しているかを知ることが必要です。
その年齢、地方分布をみておくことは必要なことです。さらにこの分布を、人為的にどう変えることができる、変えるのかを考えるためには、その実態をつかむことが結核の予防につながります。
今日はこの疫学方面のことを話したいと思います。


我が国では不幸にして結核の死亡率が非常に高い。
1年に人口10万人に対して200人死んでいる。それを年齢別に区別してみると、図1のような数字になる。
これは人口10万人についてであるが、たとえば女子が20才になると550人という数字になっている。
平均に対して2倍半以上の死亡率を示している。
男子も同じようである。これは25才の所にきているが、人口10万については500人以上、約2倍半になっている。
これは年齢別の結核死亡である。
我が国に非常に特有な現象であり、他の諸外国ではあまりみない。
支那(中国)においてもこの現象はない。
これは日本人の風俗、習慣および産業状態というようなものが、関係すると思うのでそれについて話したい。
この図1の山は、年齢の丁度15才から25才、30才位の所に死亡率が非常に高いということを示している。
根本的な人的資源の損失と、国防上における損害は、非常に重大なものである。
英国では図2のように、年齢がずっとあとの方になって山の高さが上がってくる。
これは.諸外国、先進国における一般にみられる形であって、日本のような形は非常に特有である。     
支那でも満州でもイギリス型を取っている。
台湾に行つても本島人と内地人と比較すると、内地人(日本人)はやはり図1のような山の形を取るし、本島人は山の形はずつと高くなるが、年齢はずっと遅れることが明かである。
これは諸君とともに非常によく考へなければならないことである。
この山の高い所を減せば、これだけを取ると、英国と同じようになる。
英国の死亡統計は10万に対して70人位になっているが、この山を滅しただけで10万について100数人かが減ってくるわけである。
我が国の結核の事業も、この山をへらすことが出来れば、まず成功したとみて差し支えないのである。 
それでこの山がいかにして高くなっているかを研究することが、結核病の最も重大な課題である。この山がどういうふうにしてできるかということを色々分析して考へてみると、若い時には結核の感染が割合に少なかつたが、ここにいたって感染が非常に多くて、感染するとその何%か10%か20%が発病する。これはツベルクリン反応が陰性であつたが、陽性になった時にどれだけ発病しているかということについては、しつかりした統計が出ていない。
1割くらいというが、悪い時には一割以上が発病する。発病しても慢性化してゆっくり死ぬと考えれば、第1図にはならない。したがって結核は若い時に感染し、ばたばたと急性の病のように死んでしまう。
この様な想定が事実であるかどうかを検討してみたい。
この想定が正しいかどうかをみるためには、ツベルクリン反応をみるのが一番正確である。
ツベルクリン反応は若いものに低く、年齢とともに高くなるし、陽性率は、田舎では低いが都会では高い。
この関係をグラフにしたものが図3である。石川県、愛媛県、福岡県は中間の所を通っているが、大体において田舎に少なく、都会に多いことがわかる。
次に死亡率であるが、田舎に非常に少なく、東京、京都、大阪あたりが非常に多い。」


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