自燈明・法燈明の考察

参議院選挙が終わり雑感

 昨日までの参議院選挙が終わり、その結果があらあら出ました。結果としては自民党が議席を増やし、与党の公明党は一議席減らしました。また公明党は選挙前には800万票獲得を目指すと豪語していましたが、蓋を開けたら618万票と、下落傾向に全く歯止めをかけられていません。ただ自公連立与党としては、依然として過半数占める結果となりました。

 
 
 一方の野党では立憲民主、共産、国民が議席を減らしましたが、その分、維新やれいわ新撰組は議席を増やすことが出来ました。
 
 また投票率でみれば、前回(三年前)の参議院選挙より上昇したと言われています。しかし投票日直前に起きた安部元総理の襲撃事件も、この投票率の上昇に一役買っている可能性もあるので、ここは単に投票率上がった事を個人的には評価出来ずにいます。
 
 さて、今回のこの選挙結果を果たしてどの様に見れば良いのか。その事について今回は私見を少し書いてみたいと思います。
 
◆国民は「現状容認」を判断した
 これは神戸女学院大学名誉教授である内田樹氏が毎日新聞に寄稿していましたが、単純にこの自公政権の議席が伸びたという事で、国民は現在の政治動きを支持したと捉えられるでしょう。2019年末から始まったパンデミックに対する政府対応、気候変動対するものやロシアがウクライナに侵攻した後の対応、物価上昇するなかで、収入は一向に増えない状況のなかにあって、今後更なる消費税率のアップという事が想定されている状況です。これまで岸田政権が打ち出しているこれら政策などを、国民は今後も支持するというメッセージ出したことになります。
 
 また憲法改正に向けた動きも、今回の選挙結果をみると、恐らく自公政権として加速していく事は間違いありません。
 
 民主主義政体の社会であれば、選挙の結果からはそう観られるでしょう。
 
 ただ疑問なのが、例えば東京選挙区で自民党から出馬した、元おニャン子クラブのタレント、生稲晃子女史が開票後、即座に当選確実と発表されましたが、生稲明子女史はマスコミからのインタビュー要請について「政治的な事はこれから勉強します」という事で逃げの姿勢を打っていました。これでは「白紙委任状」を東京都の有権者が生稲女史を通じて政府与党に渡した事と等しく、またガーシーと呼ばれる芸能界暴露系ユーチューバーも議席を獲得しましたが、彼は「当選すれば、芸能界も無視できない影響力を持てる」と出馬時に述べていました。果たして彼は、この今の国際状況の中で、いったい日本をどの方向に導くつもりなのか、まったく私には理解できません。
 
 こんな状況を見ていると、確かに民主主義の制度上は、国民は政府に対して支持するという、強いメッセージを与えてはいますが、本当に有権者は現在の社会情勢を認識した上で、現状容認の支持をこの自公政権の政府与党に与えたのか、そこが多いに疑問となるのです。
 
◆投票率が上がる事を期待はしたが・・
 私は今回の参議院選挙に対して、一つは「投票率がどれだけ回復するか」を見る事と、もう一つは「自公連立政権の議席数がどうなるか」が評価点だと考えてきました。
 
 なるほど確かに投票率は前回(3年前)の参議院選挙よりも上がりましたが、それが結果として自公連立政権の議席増となってしまった事が、個人的にはとても残念でなりません。
 
 岸田総理は「消費税は安定財源、いま触る事考えていない」(2022/6/27 ロイター通信)と述べていますが、2020年にIMFからの勧告で、日本の消費税を15%へ上げるべきという事が日本政府に既に出されています。
 
 参議院選挙前の2022年5月31日のダイヤモンド・オンラインにおいては「財務省が狙う「参院選挙後の増税」、既定路線になるつつある”標的”を検証」という記事でも、「今夏の参院選が終われば、岸田文雄首相が衆議院を解散しないかぎり、3年間は大きな国政選挙がない。与党と中央省庁、特に財務省の関心は、参院選後に移りつつある。つまり、増税だ。」とありました。つまり政府の動きとしては増税ありきの路線があると巷では言われていました。

 当面、岸田政権では物価高対策として、2兆7000億円規模の2022年補正予算を全額赤字国債賄う事にしており、それ以外にも膨れ上がる防衛費と子育て支援政策の支出を賄うべく、この先に大幅増額を行う意志を固めていると言われていますが、問題はそれを「消費税率」で賄うのか、他の税金を増税して賄うのか、合わせ技で賄おうとしているのか、そこがこれから明確化されるだろう言われているのです。
 
 岸田政権が今回の参議院選挙の結果により「国民から強い支持を頂いた」となれば、当然、この増税の事も出てくる事は充分に考えられる事でしょう。
 
 果たして今回、岸田自公政権に対して「強い支持」を与えた国民は、こういった事の覚悟した上で議席をあげたのでしょうか、そこが大いに気になる処なのです。
 
◆国の防衛の在り方について
 また昨日の選挙開票特番の中で、橋本徹氏と維新から出馬して当選した猪瀬直樹氏のやりとりを見ていたのですが、橋本氏は若者世代に「戦いから逃げる自由があるのか」という質問に対して、猪瀬氏は「今は世界情勢が変わってきている」という事で、その明言を避けていました。
 
 確かに日本は戦後七十年、冷戦構造の中でアメリカ軍の傘の下で経済優先で進んできて、国防に関する事は一切考える事なく進んできました。しかし昨今、ロシアがウクライナへ侵攻した事で、この時代の潮目が変化をしてきています。いま自民党を中心にした改憲派の議員たちは、今回の参議院選挙で「自民党への強い支持」を国民が与えた事で、改憲を加速して進める事を検討し始めています。
 
 私自身、個人的には自主独立の国家であれば、国民が自分達の国を守る意識を持ち、その行動をとっていく事は当然の事だと思いますが、今の日本はこの「自主独立の国家」の前提が成り立っていない国家だと考えています。何故なら自国首都の上空の制空権を他国(今の状況ではアメリカ空軍)に明け渡していますし、日米安保条約においてアメリカには日本国内に自由に基地を置く事を認めています。そもそも日本の軍事組織である「自衛隊」も、実は軍事組織に見えても法律的に見れば「公務員」の集団であって、軍隊では無いのです。
 
 この様な状況が戦後七十年以上にわたって日本では続いてきました。そんな国が「敵基地攻撃能力」とか「国を守るんだ」と言った処で、では実際にどの様に守ったらいいのか、そこへの理解が全く進んでいません。この様な状況で単に「自衛隊の明記」をしたところで、果たして国防がまともに行えるのでしょうか。
 軍隊とは「法律」で動く組織です。ここで言う「法律」とは多くの国では「軍法」であり「軍司法」です。日本では自衛隊は刑法の縛りの中にあり、通常の司法の中で動く事しか規定されていません。これでは実際に有事の際、割りを食うのは現場の自衛官たちであり、国民はもっと真正面からこの事についても考えるべきなのですが、その観点すら多くの国民が理解できていないでしょう。
 
 果たしてこの状況で「改憲」をして大丈夫なのでしょうか?
 
◆衆愚政治になってはいないか
 民主主義の政体では、やもすると衆愚政治という方向に走ってしまうのですが、今回の参議院選挙での一連の結果を俯瞰して考えてみると、私はどうも今の日本は「衆愚政治」の方向に走っているのでは無いかという危惧を強くもってしまいます。
 民主主義というのは、とても面倒くさいもので、国民の一人ひとりが政治の事をしっかりと考え、明確な政治的な意志の下、選挙活動に取り組む必要があるのです。しかしどうも今の日本は、そこが違うという感じがしてならないのです。
 
 果たしてこれから五年先、十年先の日本はどうなっているのか。今回の参議院選挙で国民の下した判断が、姿を現した時、それを国民一人ひとりが覚悟を持ってしっかりと見定めなければならなくなるでしょう。
 

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