次世代総合研究所・政治経済局

現代の日本および国際政治経済に関する隠れた視点を、国内のどのメディアよりも早く提供するページです

月刊『現代』最新号を読む

2006年08月02日 00時54分07秒 | Weblog
月刊『現代』最新号では、広告にもある通り、元外務省・欧亜局長でかの起訴休職外務事務官(元主任分析官)佐藤優氏の無罪を控訴審公判で訴えた、東郷茂徳元外相の孫、東郷和彦氏の「靖国再編試案」が目玉であった。

 しかし、同氏の「再編」とは要するに現在の靖国神社の展示施設である「遊就館」から遺品以外の展示をやめよ、というもので取り立てて「再編」というほどのものではない。

 氏の論旨の運びには細部では首をかしげる部分もあるが、以下、簡単にその主張をまとめると、
1)現在、対中強硬策を唱える一部の右の人々の論理には英霊の志であった「東洋平和」の理念が著しく欠けている。(以下基本的に表現は原文のママで要約)

2)中曽根元首相や読売恒雄読売新聞グループ本社会長らがいまや中道左派に位置づけされているのは日本の世論が急激に左から右へシフトしているから。

3)①靖国神社の再編、②歴史博物館の創設、③戦争責任に対する国家的議論の3つの課題の検討を提案したい。

4)①とは、靖国神社を英霊に対する祈りを捧げるための純粋な追悼の場に変えていただくために靖国神社内の遊就館の展示されている英霊に関する遺品のなかで、遺書など個人にかかわるものは別として、戦争全体の歴史観に関するものは除いていただくこと。

5)②について:基本方針は、最初の段階で先入観を排すこと。日本にとって都合のよいことも悪いこともすべて展示すること。遊就館の展示物の一部もここで示されるのがよい。

6)③について:戦争責任の問題には2つの考え方が現れる。一つめは国民とリーダーでは明らかに責任が違うとする考え方。二つめは国全体としての責任を探求する考え方で私(東郷氏)は後者の意見。


 6)の問題は確かに深い問題を孕んでいる。中共政府の考えは明らかに前者であって、その意味で中共がA級戦犯合祀や合祀をしている靖国神社への首相参拝に拘るのは論旨が一貫している。

 そして、図らずも?東郷氏は、実はその方が「大多数の国民にとっても都合がいい」という真実を見事に剔抉している。そういう意味では、今となっては、戦後直ぐに成立した東久邇内閣の「一億総懺悔」論の方がまだしも日本人に自主的な思考を強いたのではという気もする。

 そしてこの問題は実は普遍的である。例えば、戦後ナチズムとの闘いという神話の存在した東ドイツ地域(旧ドイツ民主共和国)の方がネオナチが跋扈している。

 すると、靖国神社に終戦記念日に多数の軍服姿の人々が詣でるというのも・・・・・・


  さて、実は、私がブログで繰り返し述べていた日本サッカー協会についての苦言が同誌の「サッカー協会の体質改善なくして代表強化なし」(二宮清純)で力説されている。

 たとえば、二宮氏は、氏が出演したW杯前のテレビ番組で、ジーコ・ジャパンの決勝トーナメントに進出する可能性を33%とした同氏に対してアナウンサーが同意していたにもかかわらず、番組がはじまると「決勝トーナメント進出の確率は80%」と声を張り上げ、番組終了後、「上からの命令で「煽れ」といわれているんですよ。きっと太平洋戦争のときもこうだったんでしょうね」「大本営発表?」「誰だって非国民にはなりたくないですもんね」という会話が交わされた話が紹介している。まったく笑えない話だ。

 二宮氏は「ジーコ・ジャパンはなぜ弱かったのか、なぜ脆かったのか。この敗北を次に生かすためには、きちんとドイツでの10日間を分析し、敗因を突き止めなければならないのだが、病巣にメスを入れる気配はいまのところまだない」と述べている。同様の主張は昨日もTVで杉山茂樹氏が行っていたが、ようやく今になって冷静な分析がなされつつあるということか。

 上記2論文は、奇しくも結果として日本人の思考傾向という全く同じテーマを扱っているといえよう。



最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (おもうんですが、)
2006-08-02 20:19:18
煽るな、煽るな、って言うけど、スポーツ報道で自国のチームの勝利を期待して煽ることなんて、どこの国でもやってることでしょう。冷静なスポーツファンは、それを横目に分析しているものです。煽るメディアが問題なのではない。それを真に受けて騙されたと、何でもかんでもメディアのせいにするのが問題なのではないでしょうか。大本営とか、喩えが極端すぎると思いますね。
返信する