新古今和歌集の部屋

美濃の家づと 二の巻 冬歌10

 

 

 

 

 

   百首哥奉りし時       入道左大臣

いそがれぬ年の暮こそあはれなれむかしはよそに聞きし春かは

すべて歳暮の哥に、いそぐとよむは、來む年の始のまうせ

をいとなむこと也。春をはやく來よかしと、まつことゝ心得る

は、誤なり。此哥は、入道の御身なる故に、春の始のまう

けを、いとなむべきわざもなきよしなり。

   土御門内大臣家にて海邊歳暮

                    有家朝臣

行年ををじまのあまのぬれ衣かさねて袖に波やかくらん

これは、海人の歳暮のさまを、思ひやりたる意也。かさね

ては、衣の緣にて、常に波にぬれたるうへに、年をゝしむとて、

又涙をやかけそふらんと也。或抄に、作者の身のうへの

意に注せるは、や°といひ、らんといへるにたがへり。

                    寂蓮

老の波こえける身にてあはれなれことしも今は末のまつ山

二三の句、今年も今はといふにかけ合ず。√又こえん身ぞあは

れなる、などぞいはまほしき。或は√又かさねてやこえ

ぬべき、などにてもなむ。

    千五百番哥合に      俊成卿

けふごとにけふやかぎりとおもへども又もことしに逢にける哉

けふやかぎりは、歳の暮にあふも、今年や限ならんの意。

   四の句ことしゃ、歳の暮の今日の意なり。二の句のけふと、

四の句のことしを、たがひに入かへて心得べし。三の句は、

おもひ來つれどもの意なり。いたく老たる人の心、まことに

此哥の如くなるべく、思ひやられて哀なり。

※或抄に

不詳

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