春の日
春野吟
足跡に桜を曲る菴二つ 杜國
麓寺かくれぬものはさくらかな 李風
榎木まて桜の遅きながめかな 荷兮
餞別
藤の花たゝうつふいて別哉 越人
山畑の茶つみをかざす夕日かな 重五
蚊ひとつに寐られぬ夜半ぞ 同
春のくれ
春野吟
あしあとにさくらをまがるいほふたつ 杜国(桜:春)
ふもとでらかくれぬものはさくらかな 李風(桜:春)
えのきまでさくらのおそきながめかな 荷兮(桜:春)
餞別
ふじのはなただうつぶいてわかれかな 越人(藤花:春)
やまはたのちやつみをかざす夕日かな 重五(茶摘:春)
かひとつにねられぬよはぞはるのくれ 重五(春暮:春)
※庵二つ 新古今和歌集巻第六 冬歌 題しらず 西行
寂しさに堪へたる人のまたもあれな庵ならべむ冬の山里を踏まえる。
※かくれぬものは 霞めどもかくれぬ物はむめの花風にあまれる匂ひなりけり(風雅集 藤原為家)などを踏まえる。
※蚊ひとつ 夏の夜は枕をわたる蚊のこゑのわづかにだにもいこそ寝られね(秋篠月集 九条良経)を踏まえ、季を春に変える。