新古今和歌集の部屋

小倉山百人一首 藤原兼輔


 中納言兼輔

みかの原
 わきて
ながるゝ

 川
いつみき
  とてか
恋しかるらん
ーーーーーーーー
○中納言兼輔
左中將利基男号
堤中納言左衞門
督從三位

系圖三条右大臣ノ
所ニ見エタリ
羕平三年五十七
歳ニテ薨

引哥
 月かげもけふ
  みかのはら
    いづみ川
 浪にやどりせ
  今しばし
     見ん

 ○○く
  けふみかのはら
     いづみ川
 かわ風さむみ
  ころも
    かせ
     やま
ーーーーーーーーーーーーーーーー
此哥の心は水のわくごとく人を恋る
心のかぎりはてなきをたとへていひ泉
川いづみきとてかとかさね詞にいひながし
たる也いつのほどに見きゝてかくこひしとは
水のわくごとくに思ふらんとわれと我心を
ことはりたるなりみかのはら泉川名所也
新古今にだいしらずとあり哥の心は
あふてあはざるこひとまたいまだあはざ
る恋との両様也わきてながるゝはいづみ
の縁の字也いつみきといはんためなり
是も又序哥也心はふかくみしやうの人の
今はたへはてゝ覚えねばかりなり○
おもひやまずこひわびてわがこゝろを
せめていへかなり又一向にあひ見たる事も
なき人を年月へて思ひわび打久しいつ
あひ見たるまにて思へるぞと我心にいふ也
ーーーーーーーーーーーーーーーー
恋歌一
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