新古今和歌集の部屋

時雨亭方丈記 福原遷都3


せばくて條里をわくるにたらず。北は山にそひてたかく
南は海ちかくてくだれり。浪のをと○ねに○
○しほ風ことにはげし。内裏は山の中なれ
ばかの木のまろ殿もかくやと中ゝ様かわり○いふ
なるかたも侍りき。日々にこぼち河もぜにはこび
くだす家はいずれにつく○にかなをむな
しき地はおほくつくれる屋はすくなし。古郷はすでに
あれて新都はいまだならず。ありとある人はみな浮雲
の思ひをなせり。もとより所におるものは地をうし
なひてうれふ。今うつりすむ人は土木のわづらひ

(前田家本)
狭くて条里を割るに足らず。北は山に添ひて高く、
南は海に近くて下れり。波の音、常に喧
し、潮風、殊に激し。内裏は山の中なれ
ば、彼の木の丸殿もかくやと覚えて、なかなか樣変はりて、優
なる方も侍き。日々に毀ち、川面瀬に運び
下す家、何処に造れるにかあらん。空
しき地は多く、造れる屋は少なし。故郷は既に
荒れて、新都は未だ成らず。在りとし有る人は、皆浮雲
の思ひを成す。元よりこの所に居る者は、地を失
ひて憂ふ。今移りて住む人は、土木のわづらひ

(大福光寺本 )

南ハ海チカクテクタレリ。ナミノヲトツネニカマヒ
スシクシホ風コトニハケシ。内裏ハ山ノ中ナレ
ハ彼ノ木ノマロトノモカクヤトテナカナカヤウカハリテイウ
ナルカタモハヘリ。ヒゝニコホチカハモセニハコヒ
クタスイヱイツクニツクレルニカアルラム。ナヲムナ
シキ地ハオホクツクレルヤハスクナシ。古京ハステニ
荒テ新都ハイマタナラス。アリトシアル人ハ皆浮雲
ノヲモヒヲナセリ。モトヨリコノ所ニヲルモノハ地ヲウシ
ナヒテウレフ今ウツレル人ハ土木ノワツラヒ
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