新古今和歌集の部屋

絵入横本源氏物語 賢木 源氏参内 蔵書

                    藤つほ
まで覚え給へば、たゞ大かたにて宮
                 藤つぼ春宮
にまいらせ給命婦"のもとに、いらせ給
へなり文が詞
にけるを、めづらしきことうけ
       春宮
たまはるに、宮のあひだのことおぼつか

なくなり侍にければ、しづ心なく思

給へながら、をこなひもつとめんと思

たち侍し日かずを、心ならずやとて

なん。日ごろになり侍ける。紅葉はひ
        /
とり見侍に、にしきくらう思給ふ

ればなん。おりよくて御"らんぜさせ
         源心
給へなとあり。げにいみじきえだ

共"なれば御めとまるに例のいさゝ

かなるもの有けり。人々見奉るに、

御かほの色もうつろひて、なをかゝる

心のたえ給はぬこそいとうとまし

けれ。あたら思ひやりふかう物し給

人のゆくりなくかやうなること

おり/\まぜ給を、人もあやしと見る

らんかしと、心つきなうおぼされて、

かめにさゝせて、ひさしのはしらの
              源
もとにをしやらせ給つ。おほかたの
      春
ことゞも、宮の御ことにふれたることなど

をば、うちたのめるさまに、すくよか
                     源心
なる御かへりばかり聞え給へるを、さも

心かしこく、つきせずもとうらめ

しう見給へど、なにごともうしろ

み聞えならひ給にたれば、人あや

しと見とがめもこそすれとおぼし
  藤         源
て、まかで給べき日まいり給へり。まづ

内の御かたに参り給へれば、のどやか

におはしますほどにて、むかし今の

御物語"きこえ給。御かたちも院に

いとようにたてまつり給て、今すこ

しなまめかしきけそひて、なつかしう

なごやかにぞおはします。かたみに
            御門心 朧月
あはれと見奉り給。かんの君の

御ことも、なをたえぬさまにきこ

しめし、気色御らんずるおりもあ

れど、なにかは今はじめたることならば

こそあらめ。ありそめにけることなれ

ば、さも心かはらんに、にけなかるまじき

人のあはひなりかしとぞ覚しなし

て、とがめさせ給はざりける。よろづの

御物がたり、文の道のおぼつかなく

おぼしめさるゝことゞもなと、とはせ給て、

又すき/"\しきうたがたりなども、
                    御門
かたみに聞えかはさせ給ついでに、かの

斎宮のくだり給し日のこと、かたちの

 


まで覚え給へば、ただ大方にて、宮に参らせ給ふ。命婦のも

とに、

「入らせ給ひにけるを、珍しき事、承はるに、宮の間の事、

覚束なくなり侍りにければ、靜心なく思ひ給へながら、行ひ

も勤めん、思ひ立ち侍りし日数を、心ならずやとてなん。

比になり侍りける。紅葉は、独り見侍るに、錦暗う思ひ給

ふればなん。折りよくて、御覧ぜさせ給へ」

などあり。げにいみじき枝共なれば、御目とまるに、例の聊

かなるもの有りけり。人々見奉るに、御顔の色も移ろひて、

なを係る心の絶え給はぬこそ、いと疎ましけれ。あたら思ひ

遣り深う物し給ふ人の、ゆくりなく、かやうなる事、折々ま

ぜ給ふを、人もあやしと見るらんかしと、心つきなうおぼさ

れて、瓶に挿させて、庇の柱の下に、押し遣らせ給ひつ。大

方の事共も、宮の御事に触れたる事などをば、打ち頼める樣

に、健よかなる御返りばかり、聞こえ給へるを、さも心かし

こく、尽きせずもと、恨めしう見給へど、何事も後身聞こえ

ならひ給ひにたれば、人あやしと見咎めもこそすれと、おぼ

して、まかで給ふべき日、参り給へり。


先づ、内の御方に、参り給へれば、のどやかにおはします程

にて、昔今の御物語、聞こえ給ふ。御かたちも、院にいとよ

う似奉り給ひて、今少し、なまめかしき気、添ひて、懐かし

和やかにぞおはします。形見に哀れと見奉り給ふ。尚侍の

君の御事も、なを絶えぬ樣に聞こしめし、気色、御覧ずる折

りもあれど、何かは、今始めたる事ならばこそあらめ。あり

そめにける事なれば、さも心かはらんに、似げなかるまじき

人の、あはひなりかしとぞ、覚しなして、咎めさせ給はざり

ける。万づの御物語、文の道の覚束なくおぼしめさるる事共

など、問はせ給ひて、又、すきずきしき歌語なども、形見

聞こえ交はさせ給ふ次いでに、かの斎宮の下り給ひし日の事、

かたちの

 
 
引歌
※/紅葉くらう 古今和歌集 巻第五 紀貫之
見る人もなくて散りぬる奥山の紅葉は夜の錦なりけり
 
京都堀川通 風俗博物館
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