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新古今和歌集の部屋

増鏡 第二 新島守 上洛

建久の初めつかた都に上る。そのいきほひいかめしきこと、いへばさらなり。道すがらあそびものどもまゐる。とほたふみのくにはしもとのしゅくつきたるに、例のあそびめおほく、えもいはずそうぞきて參れり。頼朝うちほゝゑみて、

橋本の君に何かを渡すべき

といへば、かじはら平三かげときといふものヽふ、とりあへず

たヾそまやまのくれであらばや

いとあいだなしや。むまくらこんくゝり物など、運びいでゝ引きければ、喜びさわぐ事限りなし。

その年十一月九日ごん大納言になされて、うこんだいしやうを兼ねたり。しはすの一日頃、よろこび申しゝて、同じき四日やがてつかさをば返したてまつる。この時ぞ諸国のそうついぶくしという事承りて、ぢとうしきに我が家のつはものどもなし集めける。この日本国の衰ふるはじめはこれになるべし。

さてあづまに歸りくだる頃、上下いろ/\のぬさ多かりし中に、年頃祈りなど行ひしよしみづの僧正、かのながうたのざすのたまひ遣はしける。

あづまちのかたになこその関の名は君をみやこに住めとなりけり

御返し、頼朝

都には君にあふさか近ければなこその関は遠きとをしれ

その後もまたのぼりて、東大寺の供養にもむでまでたりき。かくて新院土御門の御位の初めつかた、正治元年正月あづまにてかしらおろして同じ十三日に年五十三にてかくれにけり。ぢしよう四年より天の下に用ゐられてはたとせばありや過ぎぬらん。


※勿来の関 福島県いわき市勿来にあった関所(写真)

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