新古今和歌集の部屋

絵入源氏物語 花宴 草の原をば訪はじ 蔵書

源氏物語浮舟 画家不明大和絵コレクション

 



わびしと思へるものから、なさけなくこは/\し
         源
うは見えじと思へり。ゑひごゝちや◯いならざ

りけん、ゆるさんことはくちおしきに、女もわかう

たをやぎて、つよき心もしらぬなるへし。

らうたしと見給ふに、ほどなくあけゆけば

心あはたゝし。女はましてさま/"\に思ひみだ
        源詞
れたるけしきなり。なをなのりし給へ。いかで

かきこゆへき。かうでやみなんとは。さりともお

ぼされじなどの給へば
 朧月
  うき身世にやかてきえなばたづねてもくさ

のはらをばとはじとや思。といふさま、えんになまめ

   源詞
きたり。ことはりや。きこえたがへたるもしかれとて
 源
  いづれぞとつゆのやどりをわかむまにこざゝ

がはらにかせもこそふけ。わづらはしうおぼすこと

ならずは、なにかつゝまん。もしすかひ給ふかともえ

いひあへず、人々゛おきさはぎ、うへの御つぼねに

まいりちがふけしきどもしげくまよへば、いとわり

なくて、あふぎばかりをしるしにとりかへて出給

ぬ。きりつぼには、ひと/"\おほくさふらひて、おどろ

きたるもあれば、かゝるを、さもたゆみなき御しのび

ありきかなと、つきしろひつゝ、そらねをぞしあへ

る。いり給てふし給へれど、ねいられず。おかしかりつる

人のさまかな。女御の御をとうとたちにこそは

あらめまだよになれぬは、五六の君ならんかし。そ

ちのみやの北のかた、とうの中将のすさめぬ、四の君な

どこそ、よしときゝしが、中々それならましかば、いますこし

おかしからまし。六はとうぐうに奉らんと心ざし

給へるを、いとおしうもあるべいかな。わづらはしうた

づねむほどもまぎらはし。さてたえなんとは思は

ぬけしきなりつるを、いかなれば、ことかよはすべき

さまを、をしへずなりぬらんなど、よろづに思ふも
                      藤つほ
心のとまるなるべし。かやうなるにつけても、まづかの

わたりのありさまの、こよなうおくまりたるはやと、

 


侘しと思へるものから、情けなく、こはごはしうは見えじと思へり。酔ひ

心地や例ならざりけん、ゆるさん事は口惜しきに、女も若うたをやぎて、

強き心も知らぬなるべし。らうたしと見給ふに、程なく明けゆけば、心あ

はただし。女は、まして樣々に思ひ乱れたる気色なり。「なを名乗りし給

へ。いかでか聞こゆべき。かうで止みなんとは。さりともおぼされじ」な

ど宣へば、

  うき身世にやがて消えなば尋ねても草の原をば訪はじとや思ふ

といふ樣、艶になまめきたり。「理や。聞こえ違へたる文字かな」とて

  いづれぞと露の宿りをわかむまに小笹が原に風もこそふけ

煩はしうおぼすことならずは、何かつつまん。もし、すかひ給ふか」と

言ひあへず、人々起き騒ぎ、上の御局に参りちがふ気色共、繁く迷へ

ば、いとわりなくて、扇ばかりをしるしに、取り替へて出給ぬ。

桐壺には、人々多く侍ひて、驚きたるもあれば、かかるを、「さもたゆみ

なき御忍びありきかな」と、突きじろひつつ、空寝をぞしあへる。入り給

ひて臥し給へれど、寝入られず。おかしかりつる人の樣かな。女御の御を

とうと達にこそはあらめ。まだ世になれぬは、五、六の君ならんかし。師

の宮の北の方、頭の中将のすさめぬ、四の君などこそ、よしと聞きしが、

中々それならましかば、今少しおかしからまし。六は春宮に奉らんと志給

へるを、いとおしうもあるべいかな。煩はしう尋ねむ程も紛らはし。さて、

絶えなんとは思はぬ気色なりつるを、いかなれば、言通はすべき樣を、教

へずなりぬらんなど、万づに思ふも、心の止まるなるべし。かやうなるに

付けても、先づ、彼のわたりの有樣の、こよなう奥まりたるはやと、


和歌
朧月夜
うき身世にやがて消えなば尋ねても草の原をば訪はじとや思ふ
意味:憂き身の世にやがて死んでしまったら、貴方は探し出して私の墓までは訪ねてはくれないと思います
備考:草の原は、墓の意味。

 


いづれぞと露の宿りをわかむまに小笹が原に風もこそふけ
意味:どこの方かと貴女を探しているうちに、その噂が世間に広まってしまって貴女との関係がダメになってしまう事が心配なのですよ
備考:露、小笹が原、風は縁語。 

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