CDショップ(+α)のおススメCD日記

何と、あまり聞いたことのないCDコメントの共同作業、つまりクロスレビューです。(不定期更新)

9月のおススメ盤(工藤)

2016年09月15日 | 音楽
3月には発売されていたアルバムなんですが、見逃していました。知り合いから、これいいよ、と言われて、ブログ仲間も何人かこのアルバムを取り上げているので、7月に注文した次第。組み合わせの関係で、届くまで時間がかかってしまったうえに、聴くまでまた時間がかかってしまいました。やっぱりヴォーカルアルバムでありながら、メンバーから予想した通り、現代ジャズにもなっていますねえ。むしろこういうヴォーカルアルバムって好きな方なので、ちょっと遅れたけれども、出会えて感謝です。オーソドックスなヴォーカルが好きな方からすると、好き嫌いは出てくるのかもしれませんけれども。10曲目はしっとりと、奇をてらうことなく、歌い上げています。


Traces/Camila Meza(Voice, G)(Sunnyside)(輸入盤) - Recorded January 25 and 26, 2015. Shai Maestro(P, Key, etc.), Matt Penman(B), Kendrick Scott(Ds), Bashiri Johnson(Per), Jody Redhage(Cello pn 2, 4, 8), Sachai Vasandani(Voice on 2) - 1. Para Volar 2. Away 3. Traces 4. Amazon Farewell 5. Mar Elastico 6. Lunchin 7. Greenfinch And Linnet Bird 8. Mangata 9. Merald 10. Little Person

(16/09/11)4、7、10曲目以外はCamila Mezaの作曲。浮遊感があって、変拍子割合もある程度あって、ヴォーカルもギターもカッコいい。特にギターはジャズギタリスト的にうまい。聴きやすいながら、これはもう現代ジャズとしてのヴォーカルアルバムの範疇になるのでは、と思います。参加メンバーからしても豪華だし、サウンドからしても現代ジャズだし。ヴォーカル曲ではあるけれど、器楽的な旋律でのメロディという部分もあって、そこに少し素朴な味わいがあるのは彼女がチリ出身だからか。今っぽい部分と素朴な部分の加減が絶妙。プロデュースは本人とマット・ペンマン。繊細なところもあれば、割と雄大な感じのするところもあって、なかなか変化に富んでいます。時代はこういうヴォーカルを求めているのかも。なかなか。

ジャズCDの個人ページ(工藤)

appleJam9月のお宝盤

2016年09月01日 | 音楽
祝80才のアニバーサリー作品、古典スタイルを貫くブルースピアノの生々しさに改めて心臓がバクバクします
Erwin Helfer / Last Call
2016 USA The Sirens Records SR-5024

シカゴの、というか全米スケールでもこれが唯一のブルースピアノの専門レーベル、サイレン(Sirens)レコードの新作です。
共演作も含めると同社リリースのアーウィン・ヘルファー作品は今回で通算五作目に当たりますが、日本で言えば傘寿(80才)に当たる彼のアニバーサリー・アルバムとなりました。
基本的にはピアノ・ソロ・アルバムなのですが、前作同様合間合間にゲストが加わるので全体の印象は今回も結構分厚いのが特徴です。
独特のセンスだなぁと感じたのが大スタンダード#4.St.James Bluesでのアレンジで、歌は終始一貫したペースで歌われるそのバックでピアノが自由な呼吸で踊る感じに展開。
一方サックスは終始ゆったりとしたオブリやソロを展開する。
そんな瞬間がとても新鮮に響くので、類型のブルースピアノものとは印象面でもはっきりと一線を画した仕上がりです。
さらには曲自体私の大好な#3.St. James Infirmary も星の数ほどあるカバーの中で今回のアーウィンの演奏ほどナチュラルな起伏を感じる演奏は他にありません。
特にカウント1分47秒以降のクライマックス部分のソロは魂を根こそぎ持って行かれる感じで、2分40秒辺りのひらめきときたらこれはまさに天才のセンスが光る瞬間。
昔コンコルドというレーベルが好んだ手法で、リズム隊を抜いてピアノとサックスだけのデュオとか、ピアノとヴォーカルだけのデュオといったシンプルなスタイルでのジャズを彷彿とする作りです。
録音が抜群に良いこともあって改めて21世紀の技術で聴くピアノブルースはその超リアルさに腹の底から感動と魂の真の燃焼を感じます。

bb白岩(appleJam)