CDショップ(+α)のおススメCD日記

何と、あまり聞いたことのないCDコメントの共同作業、つまりクロスレビューです。(不定期更新)

工藤さん10月のオススメ盤を聴く(bb白岩)

2010年10月31日 | 音楽
Jeff Berlin/High Standards (Seven Seas)

Jeff Berlin(B)
Richard Drexler(P, B),
Danny Gotlieb(Ds)

1. Groovin' High
2. Nardis
3. I Want To Be Happy
4. Body And Soul
5. Solar
6. Invitation
7. If I Were Bell
8. Valse Nobles Et Sentimentales No. 4
9. Someday My Prince Will Come

同じベース奏者がリーダーの作品でも9月の盤と今月の盤とでは作り方がまるで異なる2枚でした。本作では冒頭イントロ部分からベースが表に出て活躍、そのままソロもとるので流れ的には完璧にギターを聞く耳でベースを聞く感じです。今回、4. Body And Soul や7. If I Were Bell に 9. Someday My Prince Will Come等、自分にもにお馴染みの曲を聴くことで曲が元々持つ既知の成分とこの人独自のフィーリング成分が分離される感じがしました。真っ先に感じたのはブルース系やソウル・ファンク系のプレーヤーだとまず使わない音階成分が多用される反面、ブルーノートやペンタトニック系の音が皆無に近いのが判ります。結果として自分にはちょっぴり宇宙人系のジャズ、もしくは機械工学系のメカニカルな音=ロボット音楽に聞こえるのを感じます。いわば全身を特殊合金や炭素系の特殊繊維で出来た人工皮膚に身を包み、人工血管の内部を流れるのは機械オイルといった感じのメカ・マイルスが電気を動力に演奏している感じ。例えが少し変ですが、自分の場合は耳に届くその音の向こうに、額に汗をかいて演奏している人間の姿が浮かぶ音と、金属系というかメカに身を包んだロボットがコンセントに繋がって演奏している構図が浮かんでくる音楽と、大きく分けて二種類あります。その奇妙な感覚は一体いつ頃から生まれたものなのか、そのことはともかく、腰のあるベースサウンドがまるでエレキギターのように軽やかに響くことの快感は、一端それに慣れると中毒になる感じ。ピアノがハードバップ系の速弾きスタイルなのでドラムとのエイトバースなんか聴いているとごく普通のモダンジャズのピアノトリオを聴いているのと錯覚する瞬間もあります。そんな作品でした。

bb白岩(appleJam)






appleJam10月の宝物を聴く(工藤)

2010年10月27日 | 音楽
今月のbb白岩さんの取り上げたアルバムも、ニューオリンズのファンクという感じで、ヴォイスありヴォーカルありで、骨太の感じがします。曲もジェームス・ブラウン作(1曲目)、スティーヴィー・ワンダー作(7曲目)なども入っていて、半分がRoderick Paulinの自作曲(2、4-6曲目)。語り的なヴォイスもあったり何となくラップに近いような語りもあったりで、このあたりが今のファンクなのかな、という気もしています。ニュー・オリンズの音楽は、自分が聴いた範囲だけですが、ヴォイス、ヴォーカルがジャズからファンク、ロックにかけて、けっこう多いような気がするのですがいかがでしょうか。


Roderick Paulin & The Big Easy Groovers We Do What We Do
2010 USA Independent

Roderick Paulin - tenor/alto saxophones, arranger/conductor, vocals, producer
Troy Davis, Herman Jackson, Doug Belote - drums, percussion
Mark Brooks - electric bass
Larry Sieberth, Arnet Hayes, Fred Sanders - piano, keyboards, hammond b-3 organ
Detroit Brooks - guitar, vocals
Carl LeBlanc - guitar
Shane Theriot - guitar
Craig Klein - trombone
Jamelle Williams - trumpet
Roland Guerin - vocals
Nicole Slack-Jones - vocals

1. Funky Good Time 2. Groover's Theme 3. Love Won't Let Me Wait 4. Blow Roe Blow 5. It's All About You 6. One Time For The 'Ole Men 7. Summer Soft 8. Tenderly

けっこうゴキゲンなサウンドで、やはりエレキベースも、フュージョンというよりは指弾きのファンクタイプの骨太な音とフレーズ、そこにドラムス、渋い管やギターなどが絡んで、気分はもうニューオリンズの現代ファンクになってますね。サウンド自体は、もう足が地についているような安定したファンクなのですが、やはり語りやヴォイス、ヴォーカルなど、人の声が大きな要素になっていると思います。一時期現代ジャズでもラップが10年以上前に流行ったことがありましたけど、ニューヨークだとはっきりヴォーカルものとインストルメンタルと分かれているので、ボーダーレスなのが、ニューオリンズのアルバムなのかなと思いました。メロウなバラードの3曲目も男声ヴォーカルの曲です。そう思ったら、4曲目でまたアップテンポのカッコいいファンクがあって、これはインストルメンタル。5曲目もけっこうカッコいいインスト曲。元アマチュアベース弾きの私としては6、7曲目のベースソロもいいなあ、と思いました。7曲目はさすが、スティーヴィー・ワンダーの曲なのでメロディアス。この曲もインスト。そしてしっとりとしたスタンダードのバラードの「テンダリー」で幕を閉じます。トータルの収録時間も47分ほどと、聴き通すには、ちょうどいい感じです。

(追記)8曲目まで曲目が書いてあったのですが、実際聴いてみると9曲目の女声ヴォーカルの曲が入っていました。

(ジャズCDの個人ページ 工藤)


appleJam10月の宝物(bb白岩)

2010年10月10日 | 音楽
今月のロデリック・ポーリンは自分にはなんとも懐かしいインパクトのある記憶とセットになっている人。成せば成るの気持ちで初めて出した自分の店でおっかなびっくり通じない英語でニューオリンズでは初の取引先になるLouisiana Red Hot から仕入れた商品群の中で、彼の99年盤がゴキゲンな動きを見せたのです。文字通り北海道から沖縄まで列島を縦断する感じで注文が入りました。当時はまだこのようなマニアックな作品をネットで扱う店が他になくそれで申し込みが相次いだのだと思いますが、アーティストの知名度はゼロでも面白そうなら一定以上の反響はあるものだという感触をこのポーリンの作品で感じたものでした。しかしその人の新作を10年待たなくてはならなかったとは、当時は予想もしていませんでした。録音作品ももっと次々出しそうなそんな感じがしていた人でした。ちなみに現在では海外のCDを個人で手に入れる方法が当時と今では選択肢の幅が全然違うこともあってか、それほど沢山売れるCDはなくなり文字通りコツコツと丁寧に販売するそんな状況になっていますが、それでも次々新しい興味津々の音楽や頼もしいアーティストが誕生するのでまさにこの仕事に終わりはありません。売れる売れないではなく、面白いからやるんだという感覚、これがやっぱりすべての原動力のような気がしています。


メイシオ系ファンクからR&B、ブラコン・ソングにフュージョンまでと、幅広いスタンスが実に意欲的な作品
Roderick Paulin & The Big Easy Groovers We Do What We Do
2010 USA Independent

Roderick Paulin - tenor/alto saxophones, arranger/conductor, vocals, producer
Troy Davis, Herman Jackson, Doug Belote - drums, percussion
Mark Brooks - electric bass
Larry Sieberth, Arnet Hayes, Fred Sanders - piano, keyboards, hammond b-3 organ
Detroit Brooks - guitar, vocals
Carl LeBlanc - guitar
Shane Theriot - guitar
Craig Klein - trombone
Jamelle Williams - trumpet
Roland Guerin - vocals
Nicole Slack-Jones - vocals

1999盤のポーリンで大感激し、Hot8 Brass Band での客演もナイスだったポーリンの、少なくとも当店が把握している範囲ではこれが10余年ぶりの新譜です。本作でポーリンが共演しているBEG(Big Easy Groovers)は、本格翻訳6のデフォルト翻訳のままで~ ニューオリンズの文化と音楽を守っていて、促進しているニューオリンズ地域およびそのまわりで、BEGは最も素晴らしいミュージシャンの協力的なグループです。 ~ ということになりますが、もちろんその組織のセル(細胞)とも言える一人一人は普段個々に活躍している人たち。ここにも居るピアノのフレドリック・サンダースは今後益々活躍しそうで特に注目しています。#4.Blow Roe Blow のポーリンのアルトに、70年代から延々と繋がっているフュージョン・ジャズの成分を感じてこれが特にお気に入りになりました。その意味では続く#5.It's All About Youも全く同じ、もしこの路線でポーリンとドナルド・ハリソンがダブル・アルトで競演したらどんなかななんて想像します。全ジャンル何でも有りのごちゃ混ぜ音楽携帯に入れたポーリンのこの曲、Blow Roe Blow が鳴る度、10年前の彼(及び自分)と今の彼(及び自分)が切れ目なく繋がっている感を実感しています。

bb白岩(appleJam)




10月のおススメ盤(工藤)

2010年10月02日 | 音楽
2か月連続で、キングレコード発売のベーシストのアルバムとなってしまいました。

ジェフ・バーリンという超絶技巧ベーシストのリーダー作で7枚目とのこと。息の長いベーシストの割には、いろいろ事情があったらしく、活躍の場が今まで限られていましたけど、このスタンダード集を聴いても、相変わらずトップレベルのベースの腕前を持っていることが分かります。エレクトリックの4弦ベースで、ここまで弾ける人、そうはいないんじゃないかな。最近はそれでも速弾きのベーシスト、増えてきましたけれども。スタンダードでピアノ・トリオといっても、メインはピアノではなくてベースというところも、彼らしくて面白いです。ただ速いだけではなくて、歌っているように聴こえるのが、彼らしいところ。


ハイ・スタンダーズ/ジェフ・バーリン(B)(Seven Seas)
High Standards/Jeff Berlin(B)(Seven Seas) - Recorded January 2010. Richard Drexler(P, B), Danny Gotlieb(Ds) - 1. Groovin' High 2. Nardis 3. I Want To Be Happy 4. Body And Soul 5. Solar 6. Invitation 7. If I Were Bell 8. Valse Nobles Et Sentimentales No. 4 9. Someday My Prince Will Come

9曲目がクラシックの曲の他は、スタンダードやジャズメン・オリジナル。このアルバムでビックリするのは、ジェフ・バーリンの4弦エレクトリック・ベースがとにかく前面に出ていて、テーマもやってしまったり、ピアノと役割が普通のピアノ・トリオと反対なことです。もちろんピアノ・ソロの部分も、十分スゴいのですが、それ以上にベースにぶっ飛ぶ仕組みになっています。2、9曲目ではRichard Drexlerがアップライト・ベースでバックにまわって2ベースで演奏している曲も。とにかくその奏法やフレーズには驚くことばかり。有名度という点では今ひとつだけれども、テクニックはトップクラスなことを証明してしまっているアルバムです。もちろんバラードの曲も味がありますし。6曲目はちょっと遅めのテンポ。8曲目は構築された感じもある小品。(10年8月4日発売)

ジャズCDの個人ページ(工藤)