CDショップ(+α)のおススメCD日記

何と、あまり聞いたことのないCDコメントの共同作業、つまりクロスレビューです。(不定期更新)

appleJam6月のトレジャー・ディスクを聴く(工藤)

2010年06月29日 | 音楽
今月は直球ど真ん中のジャズの登場ではありますが、やはりクリスチャン・スコットも現代ジャズを構成する一員なのかな、というクセのあるサウンド。でも、自由度が高いながらも、ピアニストの奏法の影響なのか、ドラムスが前面に出てきつつも、流れていくようなサウンドも曲によっては鮮明に耳に残ります。もちろん3曲目のように、これぞ都会的な黒い現代ジャズ、というような曲も登場しますけれども。曲によっていろいろな特徴はあるものの、こういう世界を味わってみるのもいいぞ、と現代ジャズ好きな私は思ってしまいます。出てくるメンバーそれぞれ個性があって、いいですねえ。しかし、コンコードからこういうアルバムも最近出ていたとは。何だかブルーノートのような雰囲気です。


Christian Scott Yesterday You Said Tomorrow(2010 Concord) - Christian Scott - trumpet, Matthew Stevens - guitar, Milton Flethcer, Jr. - piano, Kristopher Keith Funn - bass, Jamire Williams - drums - 1. K.K.P.D. 2. The Eraser 3. After All 4. Isadora 5. Angola, LA & The 13th Amendment 6. The Last Broken Heart 7. Jenacide 8. AMerican't 9. An Unending Repentance 10. The Roe Effect

2-3曲目を除き、クリスチャン・スコットの作曲ないしは共作。1曲目ではドラムスがかなり暴れまわっていて、それにゆったりと他の楽器が流れていくような雰囲気。これだけでフリーのフォーマットに近いのかなと思わせますが、フリーとは一線を画すような、それでいて自由なサウンドを作り上げていっています。2曲目などはファンク的なビートがあって、やはり自由度の高いサウンドなので、彼独自のやりたいことが見えてくるような感じがします。マイルスの影響もないと言えばうそになると思いますけれども。 けっこう黒さを感じさせつつ、体力もあるけれども智の方がやや勝るかというサウンドが、いい刺激になります。4曲目のバラードのほど良い緊張感も、彼ららしくていいなあ、と思います。5曲目も静かな場面もあるゆるい8ビート的な曲ですが、メンバーの力関係がところによって変化していくのが面白い。7曲目もファンクビートだけれど、他は比較的ゆったりとたゆたうようなサウンドで、グループの個性かも。変拍子(8分の11拍子?)の8曲目も冷めたゆったり感とビートがあります。やはり多くの曲でそのようなイメージがあるのは彼のサウンドの指向なのでしょうか。その中で時に紡ぎだされていく速いパッセージのソロ。9曲目は大いなる盛り上がり。ちょっと聴く人を選ぶかもしれませんが、ハマると心地良いサウンドです。

ジャズCDの個人ページ(工藤)


工藤さんの6月のオススメ盤を聴く(bb白岩)

2010年06月20日 | 音楽
前回ここでちょこっと触れたアイテム、マイナスワン教材をバックに小さい音でギターを弾くのによさそうだと感じたBOSSの e-Band JS-8は実際にもイメージ通りで使い勝手と機能共に抜群の機材でした。何よりバッキングの音と自分のギターの音が同じソースから流れていると錯覚するくらい溶け込み具合が良いです。バッキングにCDを使おうが内蔵の教材演奏を使おうがとにかく一発で同じバンドのメンバーになれる感覚です。自分のギターの音が浮かないのが凄い。

あと驚きは内蔵されているエフェクトで、プリセットされている種類が豊富ということ以上に、実在するヴィンテージ・ブランドのアンプの音を実際のアンプと同じ感覚でヴァーチャルな「つまみ」をつまみ別に細かくシュミレート出来る機能が付属しています。私はこれでややウォームでファットな浅めのオーヴァードライヴを好んで使用していますが、耳にはほとんどプリセットされているソフト・オーヴァードライヴと同じなので凝った意味はなかったかも(笑)。大きさも手頃でまさにデスクトップ・ギターオーディオって感じです。メーカーでもあえて多機能ギターアンプとは言わずこれをオーディオ機器としている背景には実は唯一の弱点と関係があるかもです。

唯一悲しかったのは肝心なクリーントーン、生音がお話にならないくらい貧弱で、生音に関してはZOOMの小型デジタルMTR MRS-8内蔵のリヴァーヴを通して JS-8にぶっ込んだ方がうんと好い音になります。良い音と書かずに好い音と書いたのは、そこは好みがあるのであくまでユーザー次第で意見は分かれるかなと思った次第ですが。あと曲のスピードと音程も自由自在に変更できるのですが、いざ手を加えると音が不自然に気持ち悪く揺れるので(テープがワカメになったときに似ている)余り実用的ではなかった。とまぁ、実売39,900円ですから好きな曲なんでも放り込んでゴキゲンな音質で一緒に演奏出来るというだけで充分元は取れる、元どころか私なんかひとつ気に入ると一生使いますから、メチャメチャいい買い物をしたと大満足しています。とにかく凄いです、これ。久しぶりに指がジンジンするまで連日弾き倒しました。って、ここはジャズ盤日記のページでした。つい、勢いで…すんません。m(_"_)m

では本題の今月の工藤さんのオススメ盤、いきます。

Mark Egan / Truth Be Told ) (輸入盤 Wavetone)

Mark Egan(B)
Bill Evans(Sax)
Mitch Forman(Key)
Vinnie Colaiuta(Ds)
Roger Squitero(Per)
1. Frog Legs
2. Gargoyle
3. Truth Be Told
4. Sea Saw
5. Cafe Risque
6. Shadow Play
7. Blue Launch
8. Rhyme Or Reason
9. Blue Rain
10. Pepe
11. After Thought

全体の印象が80年代 ジャパン・フュージョンに聞こえるサウンドで、例えばイーストウィンドやイレクトリック・バードを始め当時私が勤務していたレコ屋のオリジナル・レーベル 「T-フレンズ」で制作されていた日本のフュージョンと全く同じ感覚なのが凄い。もし海外のジャズメンにあの時代の日本の音を聞かせたらきっと大好物になるのではなか。いつも思うのはあの頃の日本のフュージョンは特に誰が牽引しているって感じではなくてそれこそシーン全体がシーン全体をさらに盛り上げていたとっても勢いのあった時代。日本のジャズにそんな凄い時代があったこと今の若い人に想像が付くのかな、と思いつつ当時活躍した人がほとんど全員まだ若くて健在ですから第二期ジャパン・フュージョン黄金期はきっとまたくる、絶対くると期待していますけど。おっと、また話が脱線です。転覆しないうちに元に戻しますが、#4.See Saw から #6.Shadow Play への流れが特に強烈に疑似ジャパン・フュージョンに聞こえる瞬間。マッコイとハードに共演していた頃のビル・エヴァンスを最後にあとは知らなかったので、こんなに柔らかい癒し系のプレイをしていることに驚きもしました。リーダーがベース奏者なのとkeybが部分部分でややチープなせいか耳にはエヴァンスが主役級で聞こえてきます。ともかく時代は変わってもこのスタイルは絶対不滅。癒し効果と元気倍増効果がダブルなのがフュージョン・ジャズの特徴でもあります。

bb白岩(appleJam)


6月のおススメ盤(工藤)

2010年06月08日 | 音楽
このアルバムは数か月前に出ているのですが、このところ遅れ気味です。でも、いいアルバムなので、今月紹介します。マーク・イーガンのリーダー作は、以前はウィンダム・ヒルから出たこともあって、内省的で静かなアルバムも目立ったのですが、今回はハードコア・フュージョン。いや~、こういうアルバムもいいですねえ。インド音楽の風味を多少持つような、ラストの静かな11曲目の小品は別にして、あとは外側を向いている曲が多いし、ファンクです。こちら方面、けっこう好みなので、珍しく何度も聴いてしまいました。メンバーもかなり強力ですし、軟弱でもないし、ということで、こっち方面が好きな方は聴いてみてもいいんじゃないでしょうか。彼のエレキ・ベースは何でも好きですが、特にフレットレス・ベースを弾くところは絶品です。


Truth Be Told/Mark Egan(B)(Wavetone)(輸入盤) - Recorded June 15-17, 2009. Bill Evans(Sax), Mitch Forman(Key), Vinnie Colaiuta(Ds), Roger Squitero(Per) - 1. Frog Legs 2. Gargoyle 3. Truth Be Told 4. Sea Saw 5. Cafe Risque 6. Shadow Play 7. Blue Launch 8. Rhyme Or Reason 9. Blue Rain 10. Pepe 11. After Thought

(10/05/25)2曲目が他人の作で6曲目がミッチ・フォアマン作の他は、全曲マーク・イーガンの作曲。ハードコア・フュージョンで、外側を向いている演奏が多いので、けっこう気持ちがいいです。メンバーも、これだけそろったら最高というメンバー。ドライブにも合いそう。エレキ・ベースのソロも、本来ソロのあるべき部分でのソロ(1曲目など)と、多重録音で、普通のベースの音にかぶせて高音域でメロディをとるようなソロとあります。後者の方が多いかな。ベースはフレット有りとフレットレスを使っていますけど、どちらも上手いですが彼の個性的な方面はフレットレスにあると思います。ポワーンとした響きの味がなかなかです。どの曲もいい感じのファンクになっていて、しかも割と硬派なのに聴きやすいところもいい。11曲目は静か。

ジャズCDの個人ページ(工藤)


appleJam6月のトレジャー・ディスク(bb白岩)

2010年06月06日 | 音楽
ギターでブルースを弾くというのを趣味にしたその日以来、たいていは適当なマイナス・ワン素材の音源を相手に好きに弾き倒す、というのが自分のスタイルなんですが、自室で近隣への騒音被害を気にしながら小さく弾いているとなかなか本気で汗だくで弾くことが少ない。それ故今までは小型のデジタルMTRを経由して、ギターアンプではなく小型のパワードスピーカーからギターの音を出してごまかしていたのですが、最近ようやく待ち望んでいたタイプの小道具が発売になっていることに気づき、早速手配してみました。いつ頃届くのかは定かではないのですが、来てそれを使いこなすことが出来たらまたここで報告します。ちょっと楽しみ(笑)。

btw、今月のお宝盤はまたまたクリスチャン・スコットです。彼が果たしていつまでこのマイルスの手法で作品作りをするのか先は読めませんが、私はこのもう一つのマイルスの世界を結構楽しんでいます。マイルス存命当時はパンゲアとかアガルタとか、如何にも想像力が逞しくなるタイトルがマイルス作品には付いていましたが、雰囲気的には全く同じチャンネルだよなと感じています。


ペットを手にした瞬間、彼にはきっとマイルスが残したマイルストーンが見えるのだと思う
Christian Scott Yesterday You Said Tomorrow
2010 Concord
Christian Scott - trumpet
Matthew Stevens - guitar
Milton Flethcer, Jr. - piano
Kristopher Keith Funn - bass
Jamire Williams - drums

ピアノ奏者が前作までとは入れ替わっているのですが、私の耳には明らかに今回のピアノの方がクリスチャンの目指すイメージにドンピシャ合っている気がします。その辺、実際はご本人がどう感じているかは判断がつかないものの、ビッチズ・ブリューに始まったコロムビア時代の革命的なイレクトリック・マイルス路線を行く彼にとって、ハービー・ハンコックやキース・ジャレットを思わせるピアノの方がマッチングが良いのは当然かと思います。そのことはおいても、ショーター役のサックス抜きで挑んだ今回の作品はホーンを自分独りにすることでより自身の内面宇宙に向かって深度深くペットを吹いた気がします。その割に#3.After All はショーター在籍時代の黄金のマイルス五重奏団の音がして、#7.Jenacideなんかはショーター~ハバード・コンボの音がしてくるのが妙に嬉しいです。マイルスが描こうとしたもう一つの世界をより鮮明なものにするためにも、彼の存在はとても大きな意味があるように感じます。もとより決してこれは成りきりマイルスではなくマイルスの絵の具と筆を手にキャンバスの前に立つクリスチャン自身です。

bb白岩(appleJam)