また池田です。どうせ池田ですよ。
『ハリウッドランド』という映画の試写を観せていただきまいた。
50年代のハリウッドを舞台にした、ムードたっぷりのフィルム・ノワールです。探偵役はエイドリアン・ブロディ。いつもの八の字マユゲとヒョロイ身体で、いわゆるハードボイルド系とは違う、ひとクセある私立探偵を演じてます。この探偵、奥さんと子供からは別居を強いられ、安モーテルを事務所代わりに使い、仕事といえば初老の男から依頼された浮気調査。しがなーい感じの探偵なんです。
そんな探偵にある日、ちょっと派手めの事件が舞い込む。
「1959年、TVシリーズ『スーパーマン』の主演俳優ジョージ・リーブスが自殺」しかし、母親は「自殺」を信じない。探偵さん真相を探っておくれ、という依頼。
そうして現在進行形の探偵の調査と、俳優ジョージ・リーブスが死ぬ前の数年間が、平行して描かれていく。スーパーマン役者ジョージ・リーブス役はベン・アフレック。おそらく少し体重を増やして、かなり念入りに役作りをしているのだと思う。
・・・思う、と書いたのはですね、そのぉ、知らんのですよ、ジョージ・リーブス版『スーパーマン』を。僕ら世代は『スーパーマン』といえば、クリストファー・リーヴ。せいぜい雑誌の『スーパーマン』特集記事で、ジョージ・リーブス版TVシリーズの写真を見たことがあるくらいで。
そこがこの映画の弱いところです。たぶん、アメリカではもっともっと国民的なスターで、この「自殺」もアメリカ芸能史の中で、衝撃的な記憶となっているんでしょう。想像すると『初代ウルトラマン』の黒部進とか、『仮面ライダー』の藤岡弘ね。そういう存在なんだと思います。子供にとっては大ヒーローですよ。地球で一番偉い人ですよ。
しかしジョージ・リーブス自身は「映画」にこだわりがあって、馬鹿げたマント姿のテレビのヒーローでは満足できない。アメリカでも最近は事情が違うかと思いますが、50年代当時、テレビというのは映画よりもランク下だったんですね。このへんもねー、今の日本の芸能界を見てると理解しにくいかも知れませんね。日本の芸能界だと「どんな映画に出ているか」じゃなくて「何本CM契約してるか」で、俳優のランクを決めたりするじゃないですか。映画ファン的には、ふざけんじゃないっつーの、藤原紀香のどこが大女優なんだよ・・・とか思いますけどね。いや、別にいんですけどね、ご結婚おめでとうございます。
なんだっけ。そう、ジョージ・リーブスは、映画に欲を持ちつつスーパーマンのマントを背負う。彼を巡り、愛人であるトニー(ダイアン・レイン)、その夫であるMGM映画の権力者エディ(ボブ・ホスキンス)、婚約者レオノア(ロビン・タニー)といった人物が登場する。自殺じゃないとしたら、犯人はこの中にいるのか。
探偵エイドリアン・ブロディは、捜査をすすめるうちに、大きな権力の壁に遮られる。警察の力さえ及ばない、これが「ハリウッドランド」なのか・・・。
にがーい後味を残して、映画は終わります。犯人はお前だー!バーン!!的な幕切れはしません。でもね、ハリウッド内幕ものとしても興味深いですし、探偵映画としてもムード抜群。あとベン・アフレックがね、いいんですよ。僕、ベン・アフレックがいいと思ったの初めてですね。もうね、ベン・アフレック主演で『スーパーマン』作ればいいじゃんってくらいね、好演してます。(池田)
『ハリウッドランド』(6月公開)公式ホームページはこちら。