ジャッピー!編集部日記

映画の雑誌「ジャッピー!」編集部の活動記録です。

あともう少し

2006-08-30 00:14:46 | Weblog
ジャッピー!24号の作業も大詰めな感じですが、
今週、プロデューサーの安岡卓治氏に取材することになりました。
ジャッピー!の中でもマイナーな「ドキュメンタリー番外地」っていう
コーナーをやっているのですが、
森達也監督の『A』、綿井健陽監督の『リトルバーズ』

これらは、安岡プロデューサーの手によるものなんですね。
あと『セキ・ララ』の松江哲明監督は、教え子だし、
『由美香』を撮った平野勝之監督を世に知らしめたのも安岡さんです。
最近話題になったドキュメンタリーは、
この安岡プロデューサーが絡んでいると思って間違いありません。

そんな方に取材をしてきます。
ちょっと強面な方のような印象がありますが、
ドキュメンタリー好きとしては、是非お会いしたい人ですので、
気合を入れて取材に臨みたいと思います。(中島)




拳銃は俺のパスポート

2006-08-20 22:36:44 | Weblog
毎週土曜日はジャッピー!の編集作業日。

の前に、京橋のフィルムセンターで「拳銃は俺のパスポート」を観てきました。宍戸錠さんが最高傑作に挙げる作品で、以前から「貴様、ジャッピー!スタッフでありながら、こんな傑作ば見とらんとや!」と言われ続けてきたので、こりゃ見逃しちゃならんなと思ったわけです。素晴らしい作品でした。宍戸錠さんのたたずまいに、プロフェッショナルのあるべき姿を見たオイラでありました。

あ、もちろんジャッピー!も頑張って作ってますよ。でももう少しピッチを上げないとヤバいよなぁ。いちおうプロフェッショナルの端くれとしてはね。(壬生)

出口のない海

2006-08-15 16:45:26 | Weblog
今日は終戦記念日ってことで、朝日新聞の全面広告でクリント・イーストウッドの『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』が、バーンと出てましたね。
製作発表記者会見で、イーストウッド師匠の話を聞いただけでも感動してしまったのですが、映画がどんな風に仕上がっているのか、いまから楽しみです。

『出口のない海』という映画が、9月に公開されます。原作・横山秀夫、監督・佐々部清の『半落ち』コンビの映画ですが、今回は戦争映画です。
第二次大戦末期、海軍は「回天」という秘密兵器を開発。通称「人間魚雷」。一人乗りの魚雷を操縦して敵艦に突っ込むという、ヤケクソとしか思えない兵器「回天」と、それにに乗り込むことになる若者たちを描いた映画です。
こんなもんね、棺桶ですからね。これ乗って死んでこいという、ムチャクチャな時代ですよ。こんなことを、せいぜい60数年前の日本人はやってたんです。

当然、映画もツライです。悲しいです。どう考えたってハッピーエンドはあり得ません。でも映画は過剰なお涙頂戴になるのを避けて、意外にも青春映画のような味わいです。
主人公(市川海老蔵)は大学野球の投手で、肩を壊して速球が投げれなくなっても、魔球を生み出す夢を持っている。あるいは、陸上部で黙々と走り続ける北(伊勢谷友介)等、ごく普通の気持のいい青年たち。
そんな彼らはなぜ志願したのか。なぜ自ら「回天」に乗ろうとするのか。ここが難しい。
日本を守るためといっても、彼らも内心、日本がもうじき負けることを知っている。最前線にいるからこそ、日本の劣勢を感じているんです。それでも「回天」の出撃を待つ青年たち。
あれだよ、主人公の並木なんて、故郷に戻れば上野樹里ちゃんが待ってるんだよ。「久しぶりにスカートはいたら、なんだか落ち着かなくって」なんて言ってるんだよ。生きて帰りたいだろ、そりゃ。そういう彼らの葛藤とか、覚悟とか、決意がじっくり描かれています。

横山秀夫さんの原作も、最後の数ページはポロポロ泣いてしまいましたが、映画は「回天」という物体の不気味な姿、操縦の難しさや脆さ、潜水艦の中で待機する息苦しさなどが、映像で伝わってきます。
映画初出演となる市川海老蔵は、声がいいですね、エビちゃん。低くてよく通る声が、映画を引き締めています。そして、さらに低い声でニヒリズムを漂わすのが伊勢谷友介。彼は、原作の描写そのまんまのハマリ役です。

9月に『出口のない海』、10月に『父親たちの星条旗』、12月に『硫黄島からの手紙』と続くと、こりゃちょっと、戦争について考えてみなきゃいけませんね。(池田)

取材へ

2006-08-10 03:18:20 | Weblog
昨日は、僕がライターとして参加させてもらってる「中南米マガジンの取材で、キューバ映画『永遠のハバナ』を配給した「アクション」という会社に行ってきました。
一人でキューバに渡り、映画の買い付けから配給、宣伝まで一人でやってしまったという、とんでもなくパワフルな方で、面白い話がたくさん聞けました。
社名の「アクション」というのは、映画のカチンコの掛け声(っていうの?)から取ったそうです。なんかこう、身が引き締まるような、行動力が湧いてくるような、いい社名ですよね。
この取材記事は、次の「中南米マガジン」に載る予定ですので、よろしくです。

一方その頃、「ジャッピー!」メインチームの方は、女優にして監督の唯野未歩子さんにインタビューしていました。これで予定ししていたメイン記事は一段落です。でも、まだまだ、新たな企画も進行中だし、特集ページもまだまだ制作中・・・。
僕らも、そろそろお尻に火を付けないとヤバイっすね。(池田)

ルイーズに訪れた恋は・・・

2006-08-06 21:28:38 | Weblog
昨日は久々に編集スタッフが集まって、ちょびっとお酒を飲んだのですが、その時「映画は年間300本観ると、ようやく分かってくる」という説が出ました。ひぃぃぃぃぃ、すげぇーな、ウチの編集部は。僕なんか、映画のことを何にも分かっちゃいないということが判明しました。このブログを読んでる人にも、何言ってんの?300本くらい普通じゃん、とか思ってる人いるんだろうな、きっと。
僕も自分では「映画バカ」だと思ってたけど、「映画」を抜き取られて、ただの「バカ」に格下げです。でも、読者の中には、僕と同じくらいの映画ファンもいると思うので、負けずに今回は『ルイーズに訪れた恋は・・・』という映画を紹介します。

ルイーズは39才、バツイチ。大学の芸術学部で、入学選考部長を務めるキャリア・ウーマン。ある日ルイーズは、入学願書の中に、高校時代に事故で亡くなった恋人と同じ名前を見つける。個人面接に現れた学生は、まさに彼そのもの。彼を家に招いたルイーズは、彼もまんざらじゃないことを感じて、思わずそのー、やっちゃうわけです。そこから始まる恋は、果たしてうまくいくのかどうか、という物語。

39才の女性と、24才の男。これは観る人の年齢、性別によっていろんな感想があると思います。僕なんかはルイーズの年齢に近いので、ルイーズの戸惑いとか喜び、すっごい分かりますね。意外に高校時代のこととかって、鮮明に覚えてるし、引きずってる部分もある。ルイーズも、まだ若いという気持ちもあるけど、後がないという焦りとか、15才年下はヤバイだろという自覚とか、いろんな感情が湧き出て、揺れ動くわけです。
このルイーズをローラ・リニーが繊細に演じています。キャスティングが絶妙で、例えば30代後半だからって、ニコール・キッドマンとか、ナオミ・ワッツあたりだと、24才の男がコロッと参っちゃうのも仕方がない気がするじゃないですか。でもローラ・リニーは、知的で充分に美しいけど、ちょっと疲れた感じもある。その地味な個性こそが、この映画では輝いています。

ローラ・リニーというと、クリント・イーストウッドの『目撃』でのイーストウッドの娘役や、『ミスティック・リバー』でのショーン・ペンの妻役が印象的でした。そして、ルイーズの高校時代以来の親友役にはマーシャ・ゲイ・ハーデン。彼女も『ミスティック・リバー』でティム・ロビンスの妻役をやってたので、イーストウッド・ファンとしても、なんだか嬉しいキャスティングですね。
ルイーズの前夫には、ガブリエル・バーン。離婚した後もルイーズとは友人関係を保っているのですが、えーっ!?という、ちょっと衝撃的な告白で、ルイーズを泣かせてしまいます。

秋のニューヨーク郊外を舞台にした、繊細な大人の恋愛映画です。監督ディラン・キッド。音楽はクレイグ・ウェドレン。(池田)

『ルイーズに訪れた恋は・・・』9月9日よりロードショー

セプテンバー・テープ

2006-08-04 22:46:12 | Weblog
いやあ、暑いっすね。夏ですよ、みなさん。海に、山に、映画に、忙しいことでしょう。僕は『ハチミツとクローバー』を観て、蒼井優ちゃんの「ありがと」ってセリフにメロメロになってます。
それはいいとして、試写で見せていただいた映画をチョロっと紹介していきます。

『セプテンバー・テープ』。これは問題作ですよ。あの「9.11」同時多発テロの1年後、アフガニスタンで8本のビデオテープが見つかった。それは、ビン・ラディンの行方を探して消息を絶ってしまったアメリカ人のドキュメンタリー監督のものだった。・・・というストーリー。

そう、ストーリーはあるんです。でも、この映画のスタッフは、ホントに監督と俳優を含めた5人だけで、アフガニスタンに撮影に行ってるんです。それで事前に書いたストーリーに添って、現地撮影をするわけです。だから、劇中登場するアフガニスタン北部同盟要人のインタビュー、ビン・ラディンを追う賞金稼ぎ、武器商人などは本物だっていうから驚きます。俳優のセリフに対するリアクションなどは予測不能の即興劇なんですね。どこまでが脚本なのか、どの映像がノンフィクションなのか。よく分からないことが、異様な緊張感を生み出しています。

主人公のドキュメンタリー監督は、ビン・ラディンを追うわけですが、果たして「スクープ映像」を撮りたいだけなのか、その目的が分からなくなってくる。現地ガイドの忠告を守らず、危険地帯へ入って行く。自衛のためとはいえ、銃を手に入れる。明らかにジャーナリストの領域を踏み越えて行く様は、決して共感できるものではないです。テロリストに銃撃されて、応戦するというのはもう「ジャーナリズム」じゃないですからね。一体この男は何者なのか。本当の目的は何なのか・・・。それは映画の最後の方で分かってくるのですが、そこがこの映画の評価の分かれ目だと思います。

この主人公に共感出来るかどうかは別にして、映画には、同時多発テロとその後のアメリカによる空爆により、アフガニスタンという国がいかに混乱してしまったかが、リアルに映し出されています。一体何が正しいのか。主人公はアメリカが被害者だと言う。現地のアフガニスタン人もテロリストを憎んでいる。しかし、テロの原因はアメリカにあるのだとも言う。そう考えると、主人公をイイ人にすると「アメリカ人=正義」に見えてしまうので、注意深く「いまいち共感出来ないヤツ」にしたのかも知れません。

とにかく、この映画のスタッフは全員無事にアメリカに帰国したそうなので、そこだけはホッと一安心です。(池田)

『セプテンバー・テープ』9月下旬よりシアターN渋谷にてロードショー