きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

12月21日の日本民話 かほうは、ねてまて

2008-12-21 05:43:10 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 12月の日本民話


12月21日の日本民話


かほうは、ねてまて



かほうは、ねてまて
長崎県の民話長崎県情報


 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
 ひどい貧乏でしたが、二人とも心のやさしい人です。
 あるお正月の朝、目をさましたおじいさんが、おばあさんに言いました。
「おら、いい夢を見た。うらの畑に大きな木があるだろ。その木の根元をほっていたら、小判のどっさりつまったつぼが出てきてな。うれしやと思ったら、目がさめた」
 それを聞いたおばあさんは、
「それじゃ、早くほりに行きましょう。むかしからお正月に見る夢は、『初夢(はつゆめ)』といって、本当の事だといいますよ」
と、言って、急いで起きようとしました。
 すると、おじいさんが言いました。
「これこれ、そんなにあわてちゃいけない。むかしから、『かほう(→幸運)はねて待て』と、いうじゃないか」
「それもそうですね。それじゃ、ゆっくりねていましょか」
 おばあさんは、またねどこにもぐりました。
 ところがこの時、家の前を通りかかった、となりのよくばりじいさんが、二人の話を聞いていました。
(しめしめ、いいことを聞いたぞ)
 よくばりじいさんは、さっそくクワを持って畑のところへ行きました。
 大きな木の根元をほってみると、どうでしょう。
 本当につぼが出てきたのです。
「ありがたい、ありがたい」
 よくばりじいさんは大喜びでつぼをかかえて、自分の家にもどりました。
 ところがふたを取ってみると、中は石ころだらけで、いくらさがしても、小判なんか一枚も出てきません。
(あのじじいめ。よくもだましやがったな!)
 よくばりじいさんはすっかり腹をたてて、そのつぼをかかえてとなりのおじいさんの家に行き、
「この、うそつきじじい!」
と、言うなり、まどから家の中へ投げ込んだのです。
 ドッスン!
 おじいさんとおばあさんは、ビックリしてとびおきました。
 音のした方を見てみると、家の中につぼが転がっています。
「だれがこんなことを」
 言いながらつぼのふたを取ってみると、なんとピカピカの小判がどっさりとつまっていたのです。
 おばあさんは、大喜びで、
「やっぱり、おじいさんの夢は本当だったのですね」
と、言いました。
 すると、おじいさんもニコニコして、
「ほら、かほうはねて待てば、むこうからやってくるんだ」
と、言いました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 遠距離恋愛の日
きょうの誕生花 → プロテア
きょうの誕生日 → 1979年 吉川ひなの (俳優)


きょうの新作昔話 → 出石乙女(いずしおとめ)
きょうの日本昔話 → かさ売りお花
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 寒い冬の大グマ退治
きょうの日本民話 → かほうは、ねてまて
きょうのイソップ童話 → キツネとワニ
きょうの江戸小話 → 雪女


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12月20日の日本民話 峠の一本足

2008-12-20 05:44:28 | Weblog

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12月20日の日本民話


峠の一本足



峠の一本足
奈良県の民話奈良県情報


 むかしむかし、十津川(とつかわ)の奥の伯母子岳(おばこだけ)という山の峠(とうげ)に、人間を食べる『一本足』というバケモノが現れて、峠の道を通る人たちをおそうようになりました。
 ある時の事、高野山(こうやさん)の西にすむ猟師が、山の峠(とうげ)で美しい娘を見かけました。
「娘がこんなところに一人でおるとは、奇妙な事じゃ。これは、バケモノかもしれんぞ。このあたりには一本足ばかりか、ほかにもバケモノがすむようになったのかもしれん」
 自分にそういいきかせて、猟師は鉄砲(てっぽう)の引き金に指をかけていました。
 そのとき、むこうのやぶの中に立っている娘が猟師を見て、ニヤリと笑ったのです。
 猟師はおそろしくなり、思わず鉄砲の引き金をひきました。
 ズドーン!
 でも娘は笑いながら、飛んできた鉄砲の玉を、両手の手のひらでピタリとうけとめたのです。
「このバケモノめ!」
 猟師はつづけて、もう一発うちましたが、娘はその玉も両手でうけとめると、猟師の方へとせまってきました。
「まっ、待ってくれ。あと十日、いや、七日だけでいい、わしの命を取らないでくれ。お願いだ」
 猟師が泣きながらたのみこむと、娘のバケモノは、だまってやぶの中へ消えていきました。
 猟師がその後ろ姿を見ると、なんと一本足ではありませんか。
 峠の一本足が、美しい娘に化けてでてきたのです。
 猟師は家に帰ると、村の守り神をまつる神社に毎日でかけて、いのりつづけました。
 すると六日目のこと、神さまからお告げがあったのです。
「玉を二つ、一緒に鉄砲にこめてうて」
 娘のバケモノと約束した七日目の朝、猟師はバケモノと出会った峠へいきました。
 まわりを見まわすと、やぶの中に、また娘に化けている一本足の姿が見えました。
 猟師が鉄砲をかまえると、
「あはははは。鉄砲なんて、無駄よ」
 娘はそう言うと、この前と同じようにニヤリと笑っています。
「やってみないとわかるもんか! いくぞ!」
 ズドーン!
 猟師が引き金をひくと、娘は飛んできた玉を両手でピタリとうけとめましたが、続けて飛んできた二発目の玉はうけとめられず、その場にたおれてしまいました。
 今度はバケモノが、
「助けてくれ!」
と、いう番でした。
「人の命をとらないと約束するなら、助けてやるが」
 猟師がいうと、バケモノは、
「だが、人間の命をとらねば生きてはいけぬ。だから、一年のうち、十二月二十日だけは、ここを通る者の命をもらいたい」
と、いったのです。
 猟師は一年で一日だけならゆるしてもいいと思い、バケモノの願いをききいれることにしました。
 すると美しい娘の姿は消えて、一本足のバケモノはうれしそうにピョンピョンとはねながら、やぶの中へ消えていったという事です。
 今でも十二月二十日は「果ての二十日」といって、山に入る事を禁じている地方があるそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 霧笛記念日
きょうの誕生花 → アイビー
きょうの誕生日 → 1969年 荻原健司 (スキー)


きょうの新作昔話 → 日切り地蔵
きょうの日本昔話 → 虫干し
きょうの世界昔話 → 心臓を持たない巨人
きょうの日本民話 → 峠の一本足
きょうのイソップ童話 → 鳥刺しと野生のハトとかわれているハト
きょうの江戸小話 → 柱という字


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12月19日の日本民話 ウメの実になったお化け

2008-12-19 05:48:25 | Weblog

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12月19日の日本民話


ウメの実になったお化け



ウメの実になったお化け
福岡県の民話福岡県情報


 むかしむかし、あるところに、バケモノ屋敷(やしき)といわれる家がありました。
 おそろしいお化けが出るというので、日がくれるころにはだれも近よるものがいません。
 ところが、このうわさを聞いたお侍(おさむらい)が、
「何と情けない。お化けぐらい。わしが退治してくれよう」
と、言って、お酒の入ったひょうたんを腰にぶら下げて、日がくれるのを待ってバケモノ屋敷へ出かけました。
 長いこと人が住んでいないので、庭には人間の背丈(せたけ)ほどもある草がはえて、ザワザワと風にゆれています。
 雨戸(あまど)はやぶれて、床のあちこちが抜け落ち、天井はクモの巣だらけです。
 普通の人なら逃げ出すでしょうが、さすがは勇気のあるお侍、一番広い座敷(ざしき)のまん中に座ると、腰のひょうたんをはずして、チビリチビリとお酒を飲みはじめました。
 でも、いつまでたってもお化けが出てきません。
「何をグズグズしておるのだ。早く出てこい!」
 お侍がどなりましたが、物音一つ聞こえません。
 そのうちにだんだん夜がふけて夜中になると、どこからともなく生あたたかい風がふいてきて、
 ヒューーー、ドロドロドロドロー。
と、一つ目小僧が現れたのです。
 長い舌を出したり引っこめたりしながら、お侍のまわりをゆっくりまわります。
 でも、お侍は平気です。
「なんだ、一つ目小僧など、ちっともこわくない。もっとこわいお化けはいないのか?」
 すると今度は、口が耳までさけて、キバをむきだしたお化けが出てきました。
「何だ、まるでツノのないオニだな。ツノがなくてはこわくないぞ」
 お侍がからかうと、今度は本物のオニが出てきました。
「ほほう。少しはマシになったが、オニなどめずらしくもなんともない」
 それを聞いて、ろくろ首、カラカサお化け、大入道などが、次々と出てきました。
 それでもお侍は、平気な顔で、
「ただ出てくるだけでは芸がない。みんなでおどれ、おどれ」
と、言いました。
 こまったお化けたちは、しかたなく、いっせいにおどりはじめました。
「いいぞ、いいぞ」
 お侍はお酒を飲みながら、うれしそうに声をかけました。
 そのうちに、お化けたちの姿が消えて、座敷一面に花がさきました。
 ウメやモモやサクラの花がかさなるように広がり、まるでお花見をしている気分です。
「こいつは、きれいだな」
 さすがのお侍も、その美しさには目をみはりました。
 ちびりちびりお酒を飲んでいるうちに、お酒のさかながほしくなりました。
 そこで、
「何か、酒のさかなになるようなものを出してくれないか。たくあんでも、ウメボシでもいいんだが」
と、言いました。
 すると美しい花がパッと消えて、小さなウメの実になってころがりました。
 お侍は、そのウメの実をすばやく口に入れるると、
 ガリガリッ
と、かみくだいて、お酒といっしよに飲みこんでしまったのです。
 そんなことがあってから、この屋敷にはもう二度と、お化けが出なくなったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 日本初飛行の日
きょうの誕生花 → くろがねもち
きょうの誕生日 → 1973年 反町隆史 (俳優,歌手)


きょうの新作昔話 → 畳石の一ぱい水
きょうの日本昔話 → どろくをかついで
きょうの世界昔話 → 悪魔の花よめにされた娘
きょうの日本民話 → ウメの実になったお化け
きょうのイソップ童話 → おなかのすいたイヌたち
きょうの江戸小話 → お説教


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12月18日の日本民話 子うみ石

2008-12-18 06:07:15 | Weblog

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12月18日の日本民話


子うみ石



子うみ石
山形県の民話山形県情報


 むかしむかし、ある村の道ばたに、どうやっても動かせない大きな石がありました。
 いつの頃からか夜になると、その大きな石が化けて出るというので、誰ともなくこの石を《化け石》と呼ぶようになり、誰も夜はその道を通らなくなりました。
 でもある時、となり村まで用足しに行った庄屋(しょうや)さんが、村へ帰るのにどうしても化け石の一本道を通らなければならなくなりました。
「うむ。こわいが仕方がない」
と、庄屋さんがこわごわ通り抜けようとすると、
「お願いします。助けて下さい」
「お願いします。助けて下さい」
と、うしろから女の人の声が聞こえるのです。
「ひぇー! だっ、誰だ?」
 庄屋さんがビックリしてふりかえると、あの化け石が女の声で、
「私は、化け石と呼ばれる女石(おんないし)です。私にはまもなく子どもが産まれますが、腹がすいて困ってます。何か食べるものをめぐんで下さい」
と、いったのです。
「おおっ、そうか。少し待っていろ」
 かわいそうに思った庄屋さんは、急いで家に帰ってごはんをたき、にぎりめしをたくさん作って化け石のそばに持っていきました。
 すると化け石から手が出てきて、にぎりめしをたちまち食べてしまったのです。
 やがておなかがいっぱいになった化け石は、おにぎりぐらいの石を取り出して、
「お礼にお持ち下さい。この石はあなたの家をいつまでもはんじょうさせる子産石(こうみいし)です」
と、いうと、黒々としたふつうの石にもどりました。
 庄屋さんの家は、それからいつまでも栄えました。
 そしてまつっておいた子産石が、本当に子石(こいし)を産む事があったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 国連加盟記念日
きょうの誕生花 → もみ
きょうの誕生日 → 1966年 江角マキコ (俳優)


きょうの新作昔話 → 命乞いに来たコイ
きょうの日本昔話 → イワナの坊さま
きょうの世界昔話 → カンチールとバナナ
きょうの日本民話 → 子うみ石
きょうのイソップ童話 → 馬と馬丁
きょうの江戸小話 → 大蛇


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12月17日の日本民話 谷ぞこのわらい声

2008-12-17 06:24:40 | Weblog

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12月17日の日本民話


谷ぞこのわらい声



谷ぞこのわらい声
高知県の民話高知県情報


 むかしむかし、土佐の国(とさのくに→高知県)の山あいの村に、佐市(さいち)という猟師(りょうし)がいました。
 若者にしては度胸(どきょう)がすわっており、佐市はいつもたった一人で猟(りょう)にでかけていくのでした。
「佐市や。獲物はこのあたりにもいくらでもいるんだ。わざわざ深い山に行くこともねえ。あんまり山の奥に行くとバケモノが出てきて、食われてしまうぞ」
 村の人に、そういわれると、
「はん。この世にバケモノなどいるものか。もしも出てきたら一発でしとめてやるから、楽しみに待っているんだな」
 佐市はそういいながら、鉄砲をかついで猟にでかけていくのでした。
 ある年の夏の事です。
 深い山奥に入った佐市は、あたりに気をくばりながら獲物をさがしていました。
 すると風もないのに、山の木々がさわぎだしました。
 木々がはげしくゆれ動きながら、走ってきます。
 なにか大きな生き物が木々をゆすりながら、山すそをおりてくるみたいです。
 こんな不思議なものをみるのは、はじめてです。
 佐市は足をとめて、ジッと見つめていました。
 やがて木々のざわめきは、深い谷ぞこへむかって消えていきました。
 あとはまた、シーンと静まりかえっています。
「はて、いまのは、なんだろう? つむじ風なら木の葉がたくさん空へふきあがるはずだが、まったく静かなものだった)
 佐市は鉄砲をかたにのせながら、また歩きだしましたが、しばらくすると今度は谷間のそこから、わらい声がきこえてきました。
 その声は、一人の声ではありません。
 何十人もの男がいっせいにわらうような、とても大きな声でした。
「こんな山奥へ、猟の仲間たちがやってくることはないはずだが」
 不思議に思った佐市は、男たちのわらい声がわきあがった谷間のそこへ、おりてみることにしました。
 やぶをかきわけて、岩をつたっておりていくと、話し声がきこえてきます。
 あたりは、だんだんくらくなってきます。
 足もとに気をくばりながら、佐市はやっと谷間のそこへおりました。
 すると、話し声のするむこうの谷川の大岩に、大きな物が腰をかけて、足をブラブラさせていました。
 それは二メートルをこえる、大入道です。
 いえ、大きいだけではなく、頭は八つで、その八つの顔が、うすぐらい谷間のそこでフワフワと動いていて、話しをしながら笑っているのです。
 さすがの佐市も、あまりのおそろしさにガタガタとふるえていました。
 そのふるえに気づいたのか、バケモノの八つの顔が、いっせいに佐市のほうを見つめたのです。
「そこにかくれておるのは、だれだ!」
 佐市は鉄砲をかまえると、夢中で引き金をひきましたが、八つの顔はヒョイと首をのばして、鉄砲の玉をよけてしまいました。
 佐市は続けて鉄砲をうちましたが、何発うってもあたりません。
 とうとう玉は、最後の一発です。
「これが最後の一発か。たのむぞ」
 佐市は鉄砲をかまえると、八つの顔のバケモノが岩の上にたちあがったのです。
 そのとき、バケモノの着物の間から、大きなへそが見えました。
 佐市はへそにねらいをつけると、最後の一発を放ったのです。
「ウギャアー!」
 ものすごい声をあげて、バケモノは岩の上から谷川へころげおちていきました。
 しばらくようすをうかがっていた佐市が谷川へでてみると、不思議な事に、バケモノの体はパラバラになって、水にとけていったのです。
 佐市は村の人たちに見せてやろうと、バケモノの頭を一つ取り上げました。
 けれども、一度水につかったバケモノの首は帰る途中でとけてしまい、残ったのは三十本ばかりの赤い髪の毛だけだったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → ライト兄弟の日
きょうの誕生花 → ベゴニア
きょうの誕生日 → 1971年 牧瀬里穂 (俳優)


きょうの新作昔話 → 佐野の舟はし
きょうの日本昔話 → 青テングと赤テング
きょうの世界昔話 → あわれな悪魔
きょうの日本民話 → 谷ぞこのわらい声
きょうのイソップ童話 → ウシと野生のヤギ
きょうの江戸小話 → るす


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