きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

12月16日の日本民話 ぐつとカラス

2008-12-16 06:29:34 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 12月の日本民話


12月16日の日本民話


ぐつとカラス



ぐつとカラス
長野県の民話長野県情報


 むかしむかし、ある村に、ぐつという名の男の子がいました。
 ある日、おばあさんがぐつにいいました。
「今日はな、じいちゃんの命日(めいにち)だで、お坊さんにお経をあげてもらうんだ。ぐつや、となり村まで行ってお坊さんをよんできとくれ」
「お坊さんって、どんなの?」
 この村にはお寺がなかったので、小さいぐつはお坊さんがわかりません。
「そうさな、お坊さんは、黒い着物をきていなさる」
「ふーん、黒いきものか」
 ぐつはすぐに、出かけていきました。
 そして田んぼまでいったら、かかしにカラスがとまっています。
 見てみると、カラスはみんな黒い色をしています。
「あっ、あれだな、あれがお坊さんだ。おーい、お坊さーん、うちへきとくれよ」
 ぐつが大声でよぶと、カラスはビックリしてどこかへ飛んでいってしまいました。
 せっかく見つけたお坊さんに逃げられてはならないと、ぐつがカラスを追いかけると、カラスはとなり村のお寺の森へいって、どこかにかくれてしまいました。
 追いかけてきたぐつが、
「お坊さん、出て来い」
と、呼んだら、お寺の本堂から本物のお坊さんが出てきて、
「お坊さんはわしじゃが、なんの用かな?」
と、ぐつにたずねました。
「ああ、お坊さんて、人間だったのか」
 ぐつはビックリしましたが、なんとかお坊さんにわけを言って、家に一緒に来てもらいました。
 いつもはぐつをしかってばかりのおばあさんですが、今度ばかりは「いい子だ」とほめてくれたのです。


おしまい


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12月15日の日本民話 あどけない目

2008-12-15 05:57:31 | Weblog

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12月15日の日本民話


あどけない目



あどけない目
東京都の民話東京都情報


 むかしむかし、江戸(えど→東京都)の本所(ほんじょ)のいろは長屋に、二人の浪人(ろうにん)がとなりあわせにすんでいました。
 一人は榎左門(えのきさもん)といって、七つになる一人娘と、わびしくくらしていました。
 となりの浪人は、林田重三郎(はやしだじゅうざぶろう)といって、妻と二人ぐらしでしたが、妻から毎日のように、はやく仕官(しかん→役人になること)するようにと、せめられていました。
 さて、ある日の事、二人に仕官の声がかかってきたのです。
 でもそれは、殿さまの御前(ごぜん→位の高い人の前)で試合をして、勝った方だけをめしかかえるというものでした。
 これをきいた重三郎(じゅうざぶろう)の妻は、大喜びです。
と、いうのも、夫は、となりの左門(さもん)よりもずっと強いからです。
「これはどう見ても、あなたさまの勝ちでございますね」
「うむ」
 重三郎(じゅうざぶろう)は、左門(さもん)の腕前が自分よりもおとっているのをよく知っていましたが、試合の日まで、ただひたすらけいこをつづけていました。
 さて、いよいよ試合の日。
 重三郎と左門は、木刀をとって殿さまの御前でむかいあいました。
 重三郎は自分の勝利を確信しており、左門は勝ち負けにこだわらず、全力をつくそうと心にきめていました。
 でも試合の結果は、人々の予想とは反対に、左門の勝ちだったのです。
 心のやさしい左門は、
「友だちでありながら、このような事になって・・・」
と、重三郎に頭を下げました。
 しかし、負けた重三郎は左門がにくくてたまりません。
 そしてそのあげく、大変な事を考えついたのです。
(そうだ。左門がなにより大事にしている、あの一人娘を殺してやろう)
 そして左門のるすをねらって重三郎は娘をつれだすと、人気のない森の中へ連れ込みました。
「おとうさまが、森のむこうで待っているの? おじさま」
 たずねる娘に重三郎はを抜くと、いきなり小さな娘の両腕を切り落とし、そしてむねに刀を突き刺すと、知らん顔で長屋にかえってきたのです。
 ところが、家に入ったとたん、
「あっ!」
と、さけびました。
 なんと自分の妻が、血まみれになって倒れているのです。
 それもちょうど、自分が娘にやったように両手を切り落とされて、むねを刀でつきさされているのです。
 重三郎は妻殺しの罪で、その日のうちにとらえられました。
 そして刑場(けいじょう)へひかれていく途中、重三郎は目を疑いました。
 大勢の人だかりの中に、父親の左門に手をひかれて、あの娘が自分を見あげているのです。
「ああ、おれはなんとあさましい事をしたのだ。人をうらむと、それは自分にかえってくるのか」
 重三郎は処刑される前に、そういったという事です。


おしまい


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12月14日の日本民話 お坊さんにばけた古ダヌキ

2008-12-14 06:59:25 | Weblog

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12月14日の日本民話


お坊さんにばけた古ダヌキ



お坊さんにばけた古ダヌキ
福井県の民話福井県情報


 むかしむかし、あるいなかのお寺に、一人のお坊さんがやってきました。
 京の都からやってきた、りっぱなお坊さんだというので、お寺には村中の人たちが集まりました。
「きっと、ありがたいお話を聞かせてくださるにちがいない」
「おとなしく聞かないと、ばちがあたるぞ」
 村人たちはお堂の中にならんで座ると、お坊さんが出てくるのを、今か今かと待っていました。
 やがて一人のお坊さんが出てきて台の上にあがり、仏さまのお話を始めました。
 ところが不思議な事に、お坊さんの耳がピクピクと動くのです。
 ちょうどそこヘ、村の宿屋にとまっている猟師が、
(京から来たというのは、どんなりっぱなお坊さんだろう?)
と、思って、お寺へやってきました。
 猟師はしょうじに指で穴をあけると、そっとお堂の中をのぞきました。
 見た感じはとてもりっぱなお坊さんですが、お坊さんの耳がピクピク、ピクピクと、動物のように動くのを見て、猟師はビックリしました。
 もう一度よく注意してお坊さんを見てみると、ときどき顔の上にも、スーッと毛がはえるのです。
(こいつは、きっと)
 猟師はこっそりお寺をぬけだすと、急いで宿屋にもどり鉄砲を持ってきました。
 しょうじの穴から鉄砲の先をさし込むと、お坊さんにねらいをつけて、
 ズドーン!
と、撃ちはなったのです。
 そのとたん、お坊さんは台の上から転がり落ちました。
「だれだ! 鉄砲を撃ったのは!」
 お堂の中は、大変なさわぎです。
「何て事をするのだ! お前は頭でもおかしくなったのか!」
「よりにもよって、お坊さんを撃つなんてゆるさん!」
 みんなはいっせいに、猟師をとりかこみました。
「ま、待て!」
 猟師が、言いました。
「あいつはお坊さんなんかじゃない。人をだまして食い殺す、おそろしい古ダヌキだ。うそだと思うのならよく見てみろ」
 そう言われて村の人たちは、いっせいにお坊さんのところへかけよりました。
 胸を撃たれたお坊さんが、あおむけになって死んでいます。
「何が古ダヌキだ。まちがいなく、りっぱなお坊さんだ」
「いや、まちがいなく古ダヌキだ。朝までにはきっと正体をあらわすはず。万一、本当のお坊さんであったなら、わしをどんな目にあわせてもかまわん」
 さてそのうちに、だんだんと夜が明けてきました。
 すると、どうでしょう。
 お坊さんの足先から、けもののような毛がはえてきて、みるみるうちに体中が毛だらけになりました。
 そしてニワトリが鳴き出したころには、まるまるとふとった古ダヌキの姿に変わったのです。
「なんと。猟師のいうとおりだ」
「この人がいなかったら、みんなどんな目にあわされていたかもしれないぞ」
 村人たちは死んでいる古ダヌキを見て、ホッと胸をなでおろしたという事です。


おしまい


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きょうの日本民話 → お坊さんにばけた古ダヌキ
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12月13日の日本民話 家出人の身がわり

2008-12-13 06:42:23 | Weblog

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12月13日の日本民話


家出人の身がわり



家出人の身がわり
東京都の民話東京都情報


 むかしむかし、江戸(えど→東京都)の神田(かんだ)の鍋町(なべちょう)に、一軒のこまもの屋(→雑貨屋)があって、十四、五才になる調市(ちょういち)という小僧(こぞう)がはたらいていました。
 ある年の十二月十三日の夕方、仕事のすんだ調市が、
だんなさま、おふろにいかせてもらいます」
と、店の主人に言って、手ぬぐいとおけを持って近くの銭湯(せんとう)へ出かけていきました。
 ところがしばらくたって、主人がなに気なく店のうら口をのぞくと、だれか若い者が中をのぞくようにしてたっています。
「そこにいるのはだれだい? 用があるなら中へお入り」
 主人が声をかけると、若い者はなれた足どりで店の中へ入ってきました。
 見ると、いまさっき銭湯へ出かけたばかりの調市です。
 しかし、そのかっこうは旅姿で、わらつつみとつえを持っています。
 顔もうすよごれていて、どうみても旅からもどってきたばかりという感じです。
(たしかさっき、手ぬぐいとおけだけで出かけたはずだが)
 主人は首をかしげましたが、その事にはふれず、
「さあ、わらじをぬいで、足を洗うがよい」
と、調市をあたたかくむかえてあげました。
「ありがとうございます。本当に長いあいだ勝手をしてすみませんでした」
 調市は井戸ばたにいって手足をあらうと、わらつつみにしてあった、じねんじょ(→ヤマイモ)をおぼんにのせて、主人の前にもどってきました。
「これは、おみやげでございます」
「・・・? そうかい。めずらしいものをありがとう」
 にこやかにうけとったものの、主人はますます不思議に思い、
(まさか、キツネが化けているのでは?)
と、調市をつくづくながめました。
 でも、どこから見ても調市にかわりがありません。
 主人はなにくわぬ顔で、たずねました。
「ところで、今までどこにいたのかね?」
「はい、秩父(ちちぶ)の山にずっといて、けさ早く出て来ました。だまって店をぬけだすなんて、本当に申し訳ありませんでした。これからは心を入れかえて働きますから、どうかゆるしてください」
「??? ・・・そうかい。まあ、すんだことはしかたがないな。・・・で、いつ店を出たのだ?」
「?」
 主人の言葉に、今度は調市が首をかしげました。
 店の人間がだまって家出したのを、知らないわけがないからです。
 それも、一番いそがしい年のくれです。
「はい、だんなさまもこぞんじのように、去年(きょねん)の十二月十三日、ちょうど、すすはらいをした日の夜です」
「なるほど。それで秩父では、何をしていた?」
「はい、大きな宿屋(やどや)で働いていました。なにしろお客さまが多くて、目の回るいそがしさでした。でもどういうわけか、お客さんは出家(しゅっけ→今までの生活をすてて、坊さんになること)された人ばかりでした。でもそこで、わたしもいろいろとめずらしいものをごちそうになりました。出家された人たちですから、生ものは出しませんが、おいしい山菜がどっさりと。そうそう、このじねんじょもすって食べると、とてもおいしいですよ」
 作り話しのようにも思いましたが、調市がうそをつくような人間でないことは、主人もよくわかっていました。
「しかし、なんだってそんなところへいったのだ?」
「はい、それが、わたしにもよくわからないのです。けっして、このお店で働くのがいやになったというわけではありません」
 調市の話しによると、すすはらいがすんで銭湯に出かけていったら、その途中、急に風がふいてきて飛ばされそうになったといいます。
 あわてて近くの木にしがみついたのですが、そのまま空へ飛ばされて、ハッと気がついたら山の中にいて、だれかが調市をのぞきこんでいるのです。
 それが宿屋の主人で、調市の話しをきくと、
「ここは秩父の山の中だ。しばらくわしの宿にいて、来年になれば店にもどればいい」
と、調市を自分の宿屋につれていってくれたのです。
 とてもしんせつな主人でしたので、調市も逃げだすわけにもいかず、店の仕事を手伝っていたのです。
「ところが、きのうの事です。宿屋の主人がわたしをよんで、『あす、江戸にかえしてあげるから、おみやげにじねんじょを持っていくといい』と、わざわざ自分でほって、わらつつみにしてくれました。そのほかの事は、さっぱりわかりません」
 調市はそこまでいうと、なつかしそうに店の中を見回しました。
(なるほど、不思議な話しだ。・・・でも、それならばさっき銭湯にでかけた調市は、いったい何者だろう?)
 主人はまた、首をかしげました。
と、いうのは、去年のくれ、調市が何者かの手で秩父の山へつれていかれたというのに、こまもの屋の店では、一日もかかさず調市が働いていたからです。
 調市の話しが本当だとするなら、だれかが調市になりすまして、この店で働いていたことになります。
(銭湯にいった調市が、もうそろそろもどってくるころだ)
 主人は銭湯にいった調市を待っていましたが、どうしたことか、銭湯にいった調市は二度ともどってはきませんでした。
(こんな事をするのは、テングのしわざにちがいない。調市を秩父の山にはこび、じぶんが調市になりすましていたのだろう)
と、主人は考えました。
 その後、調市はいつものとおり、こまもの屋でせっせと働いたという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 双子の日
きょうの誕生花 → はぼたん
きょうの誕生日 → 1967年 織田裕二 (俳優)


きょうの新作昔話 → 鬼笛
きょうの日本昔話 → ウナギつりのおじいさん
きょうの世界昔話 → 6人の男が世界をあるきまわる
きょうの日本民話 → 家出人の身がわり
きょうのイソップ童話 → オオカミとヒツジの群れとオスヒツジ
きょうの江戸小話 → 初めてのこたつ


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12月12日の日本民話 はだかにされたエンマ大王

2008-12-12 06:10:24 | Weblog

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12月12日の日本民話


はだかにされたエンマ大王



はだかにされたエンマ大王
石川県の民話石川県情報


 むかしむかし、能登(のと→石川県)には、さんえもんという、とんちのきく人がいて、みんなからは「さんにょも」とよばれていました。
 そのさんにょもも、とうとう死んでしまい、あの世へ行くことになりました。
 今までずいぶんと人をだましたりしているので、エンマ大王の前に行けば必ず、
「お前は、地獄(じごく)行きじゃ!」
と、いわれるにきまっています。
「うーむ。地獄へ行かずにすむには、どうしたらよかろうか?」
 さんにょもは、ある考えを思いつきました。
「そうじゃ、いいことがあるぞ」
 そして、どこかで酒を手に入れたさんにょもは、エンマ大王に酒だるをさしだすと、
「エンマ大王さま。わしをさばく前に、酒など一ぱい、いかがでしょう」
と、すすめたのです。
 お酒の大好きなエンマ大王は、ゴクリとのどをならすと、
「うむ。そうか、仕事中だが、それほど言うのなら、一杯ぐらいよかろう」
と、酒を湯のみについで、グイッと飲みました。
「おお、これはよい酒だな」
 この酒が、たいへんおいしかったので、
「あと一杯」
「もう一杯」
「さいごに一杯」
「おまけに一杯」
と、とうとう酒だるを空にしてしまいました。
 さて、酒のまわってきたエンマ大王は、
「ああ、少しやすませてくれ」
と、いって、そのままグウグウと寝てしまいました。
 さんにょもはエンマ大王の着物を脱がしてかんむりをはずすと、さっそくそれを自分の身につけて、はだかのエンマ大王を地獄にほうりこみ、自分はエンマ大王のイスにすわりました。
 エンマ大王になったさんにょもは、たいへんやさしく、生きていたときに悪い事をした人間ががやってきても、少しでもいいところがあると極楽(ごくらく)行きのハンコをおしてやりましたから、だれからもよろこばれたという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 漢字の日
きょうの誕生花 → あおき
きょうの誕生日 → 1960年 西村雅彦 (俳優)


きょうの新作昔話 → 五分次郎
きょうの日本昔話 → お花地蔵
きょうの世界昔話 → ウシを手に入れるまで
きょうの日本民話 → はだかにされたエンマ大王
きょうのイソップ童話 → 野生のロバとかわれているロバ
きょうの江戸小話 → よっぱらい


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