3月18日の日本民話
シラミの質入れ
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むかしむかし、米沢(よねざわ→山形県南部の市)の近くの村に、佐兵(さへい)という、冗談(じょうだん)好きな男がいました。
佐兵はびんぼうで着ているきものはボロばかり、そしてそのきものには、いつもシラミがたかっていました。
ある時、お金が必要になったので、家の中で一番上等のきものを質屋(しちや)へ持っていきました。
すると、質屋の番頭(ばんとう)が、
「おい、佐兵よ。お前のきものには、シラミもいっぱいたかっているぞ」
「うん。たしかにたかっているな。だが、お前さんの店では、《何でもお受けします》と書いてあるぞ」
「まあ、それはそうだが」
「そうだろう。それじゃあ、きものと一緒にシラミもあずかったと、質札(しちふだ→あずかったことを示す紙)にかいてくれよ」
「それはいいが、シラミの数は?」
「そうだな。五升(約9リットル)のシラミあずかったと、かいてくれ」
「へいへい」
番頭がかいてわたすと、佐兵はだまってかえりました。
そしてそれからいく日もしないで、佐兵はお金を持ってきものを引きとりにきました。
「たしかにきものは受け取ったが、でも、返してもらうものがまだたりねえぞ」
「なにがたりねって?」
「シラミ五升だ。質札にちゃんとかいてあるものだろう。そいつを返してもらわねえとな」
シラミの事など冗談だと思っていたのですが、たしかに質札にかいて渡したのですから、返せと言われれば返さなくてはなりません。
でもシラミを五升なんて、どこにもありません。
番頭は、頭をかきながら、
「まったく、佐兵にはかなわんな」
と、シラミの代わりに酒代をやって、かんベんしてもらったということです。
おしまい
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