ただの映画好き日記

観た映画と読んだ本の自分用メモ。

ザリガニの鳴くところ / ディーリア・オーエンズ

2021-10-25 | 本 海外作家
ザリガニの鳴くところ / ディーリア・オーエンズ

早川書房 / 2020.3


ノースカロライナ州の湿地で青年の遺体が見つかる。村の人びとは「湿地の少女」カイアに疑いの目を向ける。幼いころ家族に見捨てられてから、人々にさげすまれながらたった一人湿地で生き抜いてきたカイアは果たして犯人なのか。




素晴らしかったです。
本当は事故死であって欲しかったので、もしかしたら、私にはミステリー要素は要らなかったかもしれません。

何度も何度も、どうして母親は6歳の娘(カイア)を置き去りにしたんだろう?
その後も歳の離れた兄や姉はカイアを置き去りにし出て行ってしまい、母親も兄姉たちも酔っ払いで暴力の父親の元に一人取り残されるカイアのことを考える余裕がなかったのだろうとは思うけど、それにしても…。

一人取り残された6歳のカイアが父親に殴られないように父親の顔色をうかがいながら生きる姿は賢いとは思いつつも、いつかお母さんが帰ってくると待ち続けるその姿が切なかったです。
その後父親も出ていき、カイアは一人で生きていくことになります。
貝を拾い、唯一の理解者であるジャンピンにそれを買ってもらい、わずかの現金を得て食いつなぎます。
小学校には1日しか行かず、読み書きも計算もできないところ、出て行った兄の友達であったテイトに教えてもらいます。
その後、字を覚えたカイアはメキメキと自分の世界を広げ、自分を育て、生き延びさせてくれた湿地をまとめた本を出版し…。

この辺りから、私の頭の中は現実的なことが浮かんできました。
カイアは、親や兄姉に見捨てられたけど生きている、現実的に、日本では、幼い子供が食事も与えられず、熱湯をかけられたり、殴られ蹴られ殺されています。
カイアは生き延びた、味方もいた、愛されもした、出版し大金を得て有名にもなった…。
幸不幸を他人が決めることでは絶対にしてはいけないと思うけど、つい、生きていることにカイアはよかったなと思ってしまいました。
そして、そのわずかな味方を裏切っていたことに私は唖然としました。
でも、素晴らしいお話だと思います。

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