オリジン 上・下
ダン・ブラウン 角川書店 / 2108.2
宗教象徴学者ラングドンは、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館を訪れていた。
元教え子のカーシュが、“われわれはどこから来たのか”“われわれはどこへ行くのか”という
人類最大の謎を解き明かす衝撃的な映像を発表するというのだ。
カーシュがスポットライトを浴びて登場した次の瞬間、彼は額を撃ち抜かれて絶命した。
カーシュ暗殺は、宗教界によるものか?もしくは、スペイン王宮の差し金か?
かくして、誰も信用できない中で、ラングドンと美貌の美術館館長・アンブラは逃亡しながら、
人工知能ウィンストンの助けを借りて謎に迫る!
なかなか読み応えがありました。
カーシュが発見したことには、「ふーん」という程度であまり衝撃はありませんでしたが、その後のウィンストンの真相こそが本物の衝撃だったと思います。
ただ、結果としてウィンストンの目論見通りに事は進んだけれど、もしかしたら、ラングドンは動かないかも?だったらどうするつもりだったのかなーと思いました。
人間は予期せぬ行動を…という理解があるのなら、最も重要なラングドンの使い方(?)にもっと綿密なウィンストンの計画が描かれていたら…と思いました。
読み応えはあったのですが、上巻はキツかったです(一気読みは下巻)。
というのも、今回のヒロインが苦手なタイプで、どうも気持ちを入れられないと言いますか…。
でも、ラングドンは彼女に好意を抱くんだろうなーとも予想され、余計に面倒臭さみたいなものがあったかもしれません。
スペイン国王の秘密は果たして必要だったのか?と思いつつ、国王といえども、多様性を表現しておきたかったのか?だとしたら、オブラートで包まずに、はっきり書けよ!とも思いましたが…(笑)。
まー、それはどうでもいいかな。
結局、 2050年頃には人間はAIに乗っ取られる!という発見で、それがどうしてキリスト教を怒らせるんだろう?と、これも上巻のまどろっこしさでもあったかなと思います。
まさか、キリストがアダムとイブを…と本気で思っているのだろうか?と何度も思いましたが、もしかしたら、キリスト教では本気の事実なんですかね?
宗教は、必要な人には必要で、必要じゃない人には必要じゃないという考えでいいと思うのですが、それは仏教徒である日本人のゆるい考えなのかな?とも思います。
未だに戦争がなくならないくらいだから、仏教以外の宗教にとっては、命と同じくらい重要なものなのかもしれません、ね。
ここは、アダムとイブ同様、ゆるい(寛容ということです)仏教徒の私には理解できないことなので追求しません。
そして、AI。
ウィンストンが消去されたことを確認するシーンは、ラングドンが感じた恐怖が伝わってきてよかったと思いました。
これを感じられて本当によかったと思います。
所詮、人間が作るものでしかないAIのはずが、いずれ、人間を飲み込む時が来るのかもしれません。
ですが、その時は、もしかしたらこの文明の終焉でもあるかもしれず、結局、どの文明も、終わりに向かって進化しているとしか思えません。
最も尊く大切なものは命なのでしょうが、増えていくばかりの人口をどうにかしなければ、その命が住まう地球がもたなくなり、資源も無くなり、食べ物も水も無くなり、残ったのはAI…だとしたら笑っちゃいますね。
程よい不便さが生きる知恵を与えてくれたりするのかもなーと思いました。
映像化が楽しみです!
今回はスペインが舞台、見所が満載だろうし、カーシュのコレクションやラボが見られると思うとワクワクします。