エッセイ:「のれん分けとフランチャイズ(03)」2018.01


日本の食文化が海外でも評判である。特に日本食の独特な「うまみ」は、昆布だしや鰹節のだしで作られており、欧米にはないもので世界共通語になっているほどである。
食の四天王と呼ばれるものがある。①天ぷら ②鮨 ③鰻 ④蕎麦である。現在我々が食べている天丼やにぎり寿司、鰻丼、ざるそば等の原型は戸時代に考案されたもの。当時の江戸の人口が約100万人と世界最大都市のであった。江戸の庶民や参勤交代中の江戸チョンガーの武士などに大人気であったと。
今でも東京日本橋界隈ではこの四天王の・暖簾(のれん)を引き継ぐ店が繁盛している。伝統の味と現代にマッチした味を大事に守りながら“のれん分け”という方法で地道に拡大してきた。
“のれん分け”は、奉公人や家人に屋号の店を出させることであるが、製造業などにも例は多くある。
松下電器産業→松下電工、セイコーHD→セイコーエプソン、田辺製薬→東京田辺製薬など
この“のれん分け”では、本家が弟子の働きや貢献度を評価した上で、本家ののれんを汚すことがないというのが前提だ。これによって職人魂が脈々と受け継がれていく。その結果顧客が満足し、本家も分家も喜び栄えていくというものである。
昨今の起業は様変わりである。やる気ばかりが先走り、知識も資金も他(ひ)人(と)様を頼りでひと儲けしてやろうかと。しかしこんな筈ではなかったと資金不足に行き詰まり倒産の憂き目を見るケースが多いという。
昨年、全国展開する格安旅行代理業「てるみくらぶ」が倒産し多くの旅行者が被害・迷惑を被った。
また、今新年早々に全国展開する振袖・着付け業者「はれのひ」の代表が行方不明に。着付けができずに成人式を欠席せざるを得ない人が出る騒ぎになった。本当に無責任極まりない許せないことで、いずれもずさんな経営によるものである。
他の同業者もこれは商売人の風上にも置けないと、振袖と着付けを無償で手伝ったという美談がせめてもの救いだった。
ところで、起業のやり方にフランチャイズ方式がある。事業者は加盟店をサポートし、加盟店は事業者から受けるサポートの見返りとして、加盟金やロイヤルティを支払う。
その業種はさまざまで、コンビニエンス・ストアなどの小売業、ファーストフード、ラーメン店などの外食産業、不動産業や塾・スクールなど多岐にわたる。
アメリカで生まれたフランチャイズ契約の小売業は、ケンタッキーフライドチキンが世界初とされる。日本では、1960年代に不二家やダスキン、1970年代ではセブン-イレブン、モスバーガーなどの外食産業がフランチャイズ型の事業展開をしている。
当時のTVニュースでフランチャイズ方式の起業が報道されたとき、正直に言って意味がよくわからなかった。果たしてそんな事業が成り立ち成功するのかなと思ったくらいだ。
今では、セブンイレブン、ローソン、ミニストップなどのコンビニストアーは10兆円を超える産業に成長している。
しかもこのコンビニなくしては、これからの少子高齢化社会の生活は成り立たないとさえ言われている。コンビニは進化をして今では社会的インフラにまでなったようだ。
ただ商品を売るということから社会的役割(防犯、買物弱者、高齢者見守り・認知症対応、防災、行政サービス代行、物流・環境)を担うまでになっている。
特に大地震発生に伴う帰宅難民のサポートやその後の流通、そして周辺地域の防犯やコミュニティ維持も大いに期待されている。
ところで、2017年の全国企業倒産件数(東商工リサーチ、負債1千万以上)は約8700件、負債総額約3兆円であった。
倒産はキャッシュが尽きるということである。倒産の原因をみていくと、連鎖倒産を除くと社内的な原因がほとんどと言われている。
放漫経営によるずさんな管理体制や本業以外への出費等が原因で倒産に至るケースである。特に個人、中小経営者の場合、いつの間にか羽振りがよくなり放漫経営につながっていくとのだと。
企業は儲けてなんぼ、と極論を言う向きもあるが形振(なりふ)り構わず利益を出せばよいというものではない。企業コンプライアンスの基本原則の一つで、法律や内規などごく基本的なルールに従って活動すること、すなわち企業の社会的責任を求められるのだ。
これは法令遵守とも訳されるが、法令とは別に社会的規範や企業倫理(モラル)を守ること、企業の社会的責任履行ともに非常に重視されている概念、仕組みである。企業コンプライアンス今日ではCSR(corporate social responsibility) の略。
悲しいかな昨今日本の大企業でも幾多の法令違反や不祥事が発生している。そのたびに社長が会見で深々と頭を下げる姿を見せつけられる。一旦「ブラック企業」というレッテルを張られてしまうと企業の存続にも影響を与えかねない。
かって、日本の子供たちの国際的な学力試験や匠たちの技能オリンピック等では他国を寄せ付けず圧倒的な力の差を見せつけた。ところが今ではプライドもなくなり低落を必死で守る状態である。
経済競争ではもう太刀打ちできなくなった日本、ならば日本国民はどうやって心の豊かな社会構築を目指すべきか真剣に模索すべき時だろう。子供も産めない・産まない社会からは輝かしい未来は期待できないと思う。
現実を知らなすぎる国民は、外国人労働者の受け入れにはただ反対するだけ。政治が強いリーダーシップをとらないと取り返しがゆかなくなりそうだ。
幸いなことに、日本が観光立国を目指し始めて僅か数年で海外旅行者の訪日が約3000万人になった。これは日本の生きる道標(みちしるべ)を示しているのかもしれない。
外国人に人気の浅草雷門の風神・雷神像と大提灯は浅草の象徴である。雷門はたびたび焼失している。1960年、松下電器産業(現パナソニック)の創設者、松下幸之助氏が浅草寺に拝み病気の完治のお礼として門及び大提灯を寄進したものである。こんな美談を知る由もなく外人観光客は喜んでくれている。
仮に松下氏が存命だったら、今の日本にいかなるアドバイスと処方箋を書いてくれるだろうか。
了


日本の食文化が海外でも評判である。特に日本食の独特な「うまみ」は、昆布だしや鰹節のだしで作られており、欧米にはないもので世界共通語になっているほどである。
食の四天王と呼ばれるものがある。①天ぷら ②鮨 ③鰻 ④蕎麦である。現在我々が食べている天丼やにぎり寿司、鰻丼、ざるそば等の原型は戸時代に考案されたもの。当時の江戸の人口が約100万人と世界最大都市のであった。江戸の庶民や参勤交代中の江戸チョンガーの武士などに大人気であったと。
今でも東京日本橋界隈ではこの四天王の・暖簾(のれん)を引き継ぐ店が繁盛している。伝統の味と現代にマッチした味を大事に守りながら“のれん分け”という方法で地道に拡大してきた。

“のれん分け”は、奉公人や家人に屋号の店を出させることであるが、製造業などにも例は多くある。
松下電器産業→松下電工、セイコーHD→セイコーエプソン、田辺製薬→東京田辺製薬など
この“のれん分け”では、本家が弟子の働きや貢献度を評価した上で、本家ののれんを汚すことがないというのが前提だ。これによって職人魂が脈々と受け継がれていく。その結果顧客が満足し、本家も分家も喜び栄えていくというものである。
昨今の起業は様変わりである。やる気ばかりが先走り、知識も資金も他(ひ)人(と)様を頼りでひと儲けしてやろうかと。しかしこんな筈ではなかったと資金不足に行き詰まり倒産の憂き目を見るケースが多いという。

昨年、全国展開する格安旅行代理業「てるみくらぶ」が倒産し多くの旅行者が被害・迷惑を被った。
また、今新年早々に全国展開する振袖・着付け業者「はれのひ」の代表が行方不明に。着付けができずに成人式を欠席せざるを得ない人が出る騒ぎになった。本当に無責任極まりない許せないことで、いずれもずさんな経営によるものである。
他の同業者もこれは商売人の風上にも置けないと、振袖と着付けを無償で手伝ったという美談がせめてもの救いだった。
ところで、起業のやり方にフランチャイズ方式がある。事業者は加盟店をサポートし、加盟店は事業者から受けるサポートの見返りとして、加盟金やロイヤルティを支払う。
その業種はさまざまで、コンビニエンス・ストアなどの小売業、ファーストフード、ラーメン店などの外食産業、不動産業や塾・スクールなど多岐にわたる。
アメリカで生まれたフランチャイズ契約の小売業は、ケンタッキーフライドチキンが世界初とされる。日本では、1960年代に不二家やダスキン、1970年代ではセブン-イレブン、モスバーガーなどの外食産業がフランチャイズ型の事業展開をしている。
当時のTVニュースでフランチャイズ方式の起業が報道されたとき、正直に言って意味がよくわからなかった。果たしてそんな事業が成り立ち成功するのかなと思ったくらいだ。
今では、セブンイレブン、ローソン、ミニストップなどのコンビニストアーは10兆円を超える産業に成長している。

しかもこのコンビニなくしては、これからの少子高齢化社会の生活は成り立たないとさえ言われている。コンビニは進化をして今では社会的インフラにまでなったようだ。
ただ商品を売るということから社会的役割(防犯、買物弱者、高齢者見守り・認知症対応、防災、行政サービス代行、物流・環境)を担うまでになっている。
特に大地震発生に伴う帰宅難民のサポートやその後の流通、そして周辺地域の防犯やコミュニティ維持も大いに期待されている。

ところで、2017年の全国企業倒産件数(東商工リサーチ、負債1千万以上)は約8700件、負債総額約3兆円であった。
倒産はキャッシュが尽きるということである。倒産の原因をみていくと、連鎖倒産を除くと社内的な原因がほとんどと言われている。
放漫経営によるずさんな管理体制や本業以外への出費等が原因で倒産に至るケースである。特に個人、中小経営者の場合、いつの間にか羽振りがよくなり放漫経営につながっていくとのだと。

企業は儲けてなんぼ、と極論を言う向きもあるが形振(なりふ)り構わず利益を出せばよいというものではない。企業コンプライアンスの基本原則の一つで、法律や内規などごく基本的なルールに従って活動すること、すなわち企業の社会的責任を求められるのだ。
これは法令遵守とも訳されるが、法令とは別に社会的規範や企業倫理(モラル)を守ること、企業の社会的責任履行ともに非常に重視されている概念、仕組みである。企業コンプライアンス今日ではCSR(corporate social responsibility) の略。
悲しいかな昨今日本の大企業でも幾多の法令違反や不祥事が発生している。そのたびに社長が会見で深々と頭を下げる姿を見せつけられる。一旦「ブラック企業」というレッテルを張られてしまうと企業の存続にも影響を与えかねない。

かって、日本の子供たちの国際的な学力試験や匠たちの技能オリンピック等では他国を寄せ付けず圧倒的な力の差を見せつけた。ところが今ではプライドもなくなり低落を必死で守る状態である。
経済競争ではもう太刀打ちできなくなった日本、ならば日本国民はどうやって心の豊かな社会構築を目指すべきか真剣に模索すべき時だろう。子供も産めない・産まない社会からは輝かしい未来は期待できないと思う。
現実を知らなすぎる国民は、外国人労働者の受け入れにはただ反対するだけ。政治が強いリーダーシップをとらないと取り返しがゆかなくなりそうだ。

幸いなことに、日本が観光立国を目指し始めて僅か数年で海外旅行者の訪日が約3000万人になった。これは日本の生きる道標(みちしるべ)を示しているのかもしれない。
外国人に人気の浅草雷門の風神・雷神像と大提灯は浅草の象徴である。雷門はたびたび焼失している。1960年、松下電器産業(現パナソニック)の創設者、松下幸之助氏が浅草寺に拝み病気の完治のお礼として門及び大提灯を寄進したものである。こんな美談を知る由もなく外人観光客は喜んでくれている。

仮に松下氏が存命だったら、今の日本にいかなるアドバイスと処方箋を書いてくれるだろうか。
了