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板の庵(いたのいおり)

エッセイと時事・川柳を綴ったブログ : 月3~4回投稿を予定

エッセイ:「のれん分けとフランチャイズ(03)」2018.01

2018-01-21 15:32:40 | エッセイ
エッセイ:「のれん分けとフランチャイズ(03)」2018.01


日本の食文化が海外でも評判である。特に日本食の独特な「うまみ」は、昆布だしや鰹節のだしで作られており、欧米にはないもので世界共通語になっているほどである。
 食の四天王と呼ばれるものがある。①天ぷら ②鮨 ③鰻 ④蕎麦である。現在我々が食べている天丼やにぎり寿司、鰻丼、ざるそば等の原型は戸時代に考案されたもの。当時の江戸の人口が約100万人と世界最大都市のであった。江戸の庶民や参勤交代中の江戸チョンガーの武士などに大人気であったと。
 
今でも東京日本橋界隈ではこの四天王の・暖簾(のれん)を引き継ぐ店が繁盛している。伝統の味と現代にマッチした味を大事に守りながら“のれん分け”という方法で地道に拡大してきた。

“のれん分け”は、奉公人や家人に屋号の店を出させることであるが、製造業などにも例は多くある。
松下電器産業→松下電工、セイコーHD→セイコーエプソン、田辺製薬→東京田辺製薬など

この“のれん分け”では、本家が弟子の働きや貢献度を評価した上で、本家ののれんを汚すことがないというのが前提だ。これによって職人魂が脈々と受け継がれていく。その結果顧客が満足し、本家も分家も喜び栄えていくというものである。
昨今の起業は様変わりである。やる気ばかりが先走り、知識も資金も他(ひ)人(と)様を頼りでひと儲けしてやろうかと。しかしこんな筈ではなかったと資金不足に行き詰まり倒産の憂き目を見るケースが多いという。

昨年、全国展開する格安旅行代理業「てるみくらぶ」が倒産し多くの旅行者が被害・迷惑を被った。
また、今新年早々に全国展開する振袖・着付け業者「はれのひ」の代表が行方不明に。着付けができずに成人式を欠席せざるを得ない人が出る騒ぎになった。本当に無責任極まりない許せないことで、いずれもずさんな経営によるものである。
他の同業者もこれは商売人の風上にも置けないと、振袖と着付けを無償で手伝ったという美談がせめてもの救いだった。

ところで、起業のやり方にフランチャイズ方式がある。事業者は加盟店をサポートし、加盟店は事業者から受けるサポートの見返りとして、加盟金やロイヤルティを支払う。
その業種はさまざまで、コンビニエンス・ストアなどの小売業、ファーストフード、ラーメン店などの外食産業、不動産業や塾・スクールなど多岐にわたる。

アメリカで生まれたフランチャイズ契約の小売業は、ケンタッキーフライドチキンが世界初とされる。日本では、1960年代に不二家やダスキン、1970年代ではセブン-イレブン、モスバーガーなどの外食産業がフランチャイズ型の事業展開をしている。
当時のTVニュースでフランチャイズ方式の起業が報道されたとき、正直に言って意味がよくわからなかった。果たしてそんな事業が成り立ち成功するのかなと思ったくらいだ。

今では、セブンイレブン、ローソン、ミニストップなどのコンビニストアーは10兆円を超える産業に成長している。

しかもこのコンビニなくしては、これからの少子高齢化社会の生活は成り立たないとさえ言われている。コンビニは進化をして今では社会的インフラにまでなったようだ。

ただ商品を売るということから社会的役割(防犯、買物弱者、高齢者見守り・認知症対応、防災、行政サービス代行、物流・環境)を担うまでになっている。
特に大地震発生に伴う帰宅難民のサポートやその後の流通、そして周辺地域の防犯やコミュニティ維持も大いに期待されている。

ところで、2017年の全国企業倒産件数(東商工リサーチ、負債1千万以上)は約8700件、負債総額約3兆円であった。
倒産はキャッシュが尽きるということである。倒産の原因をみていくと、連鎖倒産を除くと社内的な原因がほとんどと言われている。
放漫経営によるずさんな管理体制や本業以外への出費等が原因で倒産に至るケースである。特に個人、中小経営者の場合、いつの間にか羽振りがよくなり放漫経営につながっていくとのだと。

企業は儲けてなんぼ、と極論を言う向きもあるが形振(なりふ)り構わず利益を出せばよいというものではない。企業コンプライアンスの基本原則の一つで、法律や内規などごく基本的なルールに従って活動すること、すなわち企業の社会的責任を求められるのだ。
これは法令遵守とも訳されるが、法令とは別に社会的規範や企業倫理(モラル)を守ること、企業の社会的責任履行ともに非常に重視されている概念、仕組みである。企業コンプライアンス今日ではCSR(corporate social responsibility) の略。
悲しいかな昨今日本の大企業でも幾多の法令違反や不祥事が発生している。そのたびに社長が会見で深々と頭を下げる姿を見せつけられる。一旦「ブラック企業」というレッテルを張られてしまうと企業の存続にも影響を与えかねない。

かって、日本の子供たちの国際的な学力試験や匠たちの技能オリンピック等では他国を寄せ付けず圧倒的な力の差を見せつけた。ところが今ではプライドもなくなり低落を必死で守る状態である。

経済競争ではもう太刀打ちできなくなった日本、ならば日本国民はどうやって心の豊かな社会構築を目指すべきか真剣に模索すべき時だろう。子供も産めない・産まない社会からは輝かしい未来は期待できないと思う。
現実を知らなすぎる国民は、外国人労働者の受け入れにはただ反対するだけ。政治が強いリーダーシップをとらないと取り返しがゆかなくなりそうだ。

幸いなことに、日本が観光立国を目指し始めて僅か数年で海外旅行者の訪日が約3000万人になった。これは日本の生きる道標(みちしるべ)を示しているのかもしれない。
外国人に人気の浅草雷門の風神・雷神像と大提灯は浅草の象徴である。雷門はたびたび焼失している。1960年、松下電器産業(現パナソニック)の創設者、松下幸之助氏が浅草寺に拝み病気の完治のお礼として門及び大提灯を寄進したものである。こんな美談を知る由もなく外人観光客は喜んでくれている。

仮に松下氏が存命だったら、今の日本にいかなるアドバイスと処方箋を書いてくれるだろうか。




エッセイ:「正月雑感(2)」2018.01

2018-01-09 15:17:53 | エッセイ
エッセイ:「正月雑感(2)」2018.01


正月も浮かれる間もないうちに過ぎ去った。毎年のように変わり映えもせずテレビ番組を見ながらなんとなく過ごしてしまった。こんなことでよいのかという反省もちょっぴりあるが、先も長くない歳であるからあまりプレッシャーをかけずにのんびり行きたい。
 
 * さて正月テレビ番組は、元旦の「ニューイヤー実業団駅伝」、群馬県高崎の県庁前からスタートする100キロコースである。久しぶりにチャンネルを回してみた。実況解説者はかって旭化成が長期の連覇を成し遂げた宗茂氏であった。ここ数年しばらく旭化成は低迷が続いていたが、なんと昨年優勝し今年連覇がかかっているということを知ってびっくり、そんなことなら昨年も見ればよかったと反省しきり。

というのも、父親が戦後復員してから30年以上旭化成延岡工場に勤めていた。私が今日あるのも旭化成のおかげだ。実業団駅伝は戦国時代に入り旭化成は低迷する。その原因の一つは他社が戦力としている外国人ランナーの採用に二の足を踏んだことにあったようだ。それは宗監督らの意地であったのかもしれない。低迷を反省して外人の登用、一区からのぶっちぎり優勝・連覇であった。
来年もまた見るぞ!!!

* 二日、三日は箱根駅伝、これ無くして正月は越せないというほど、国民に浸透している。歴代六校目の4連覇がかかる青山学院大は、かっての覇者東洋大学とどう戦うだろうかと注目された。往路優勝した東洋が素人目には復路も逃げ切って総合優勝の可能性を匂わせた。優勝があまり青山ばかりでは面白くない、頼もしい東洋の復活を期待した。
 ところが、青学の原晋(すすむ)監督は談話で、復路の山下りで東洋を捕え逆に引き離すと。結果はご存知の通りで、この自信って何だろう。
 
原監督はランナーとしての実績は一流とはいえず、中国電力の一営業マンであった。箱根への出場など夢のまた夢であった青山である。自ら素人で監督になったと謙遜している。一言でいうならば、素人であるがゆえに新しいやり方ができたのだろう。人心を掴むのが上手いし、明るいキャラクターだ。
毎日箱根駅伝のことを考え、明日レースがあったらどういうオーダーにしようかと。インターネット等で原監督のことを知れば知るほど知りたくなる。いろんな意味ですごい人だなと思う。
特に世界からも大きく取り残された日本のマラソン界、学生たちにチャレンジするよう仕向けるユニークな指導者である。それについてはマラソン界の重鎮からも期待されているらしい。
 
 * 昨年将棋界に旋風を巻き起こしたのは天才棋士藤井4段(15歳)であった。一気に子供たちの将棋に対する関心が高まったと聞く。ゲームにはまっているよりも、集中力が高まりより教育的価値があるのかかもしれない。

将棋界を代表する羽生善治永世7冠(47歳)と、囲碁界で二度目の七冠独占を果たした井山裕太(28歳)の二人に国民栄誉賞の受賞が正式に決まった。昨今批判されることが多い政府もタイミングよく気の利利いたことをやるもんだ。

この世界では七冠の一つでも保持することは容易ではなく名誉なことであるのに、よりによって七冠とは。勝負の世界では一度つまずき、タイトルを失うとなかなかカムバックできないのが普通である。
“成功のするための秘訣はと”の問いに期待をすると、羽生は間をいて“よくわかりません”と。集中力については、マラソンに似ていると。対局中の集中力の配分を言っているようだった。
二人の並外れた精神力と努力たるや想像を絶するものであろう。しかし、インタビューではそれを感じさせない穏やかな口調で語り、これが「天才」なのかと印象的であった
 
将棋の七冠は(竜王、名人、叡王、王位、王座、棋王、王将、棋聖)。囲碁の七冠は(棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、天元)

* 昨年末に大相撲界を揺さぶった日馬富士の暴行事件。毎日どのチャンネルをひねってもこればかり。いい加減してほしい、バカバカしいと思いながらも気になってテレビをみてしまう。
テレビ局の方も話を広げ、視聴者を引っ張り込む術はさすがにすごい。貴乃花親方が一言もしゃべらないだけに憶測が広がっていく。
評議員会議長の池坊保子氏がしばしばテレビに登場、記者会見で偉そうな口をきいていたが、ちょっと違うんじゃないと言いたい。
また相撲協会ベッタリの高野危機管理委員長(元名古屋高検検事長)の紋きり口調の「悪いのは貴乃花親方」という過度な偏向より、前危機管理委員長の宗像氏(高野氏の先輩で元名古屋高検検事長)の高野氏を批判し被害者側目線で公正にという意見の方が私には説得力を感じた。

正月四日の評議員会の決定は、年末の協会の理事会の決定から一歩も出ていないのである。評議委員会は理事会の決定を踏襲しないこともある、と思わせぶりを吐いたからテレビ局は余計な憶測をする羽目になったのである。

ここまで騒動を大きくし、長引かせたのは貴乃花親方の態度であったことは言うまでもない。私を含めて、貴乃花贔屓(ひいき)のファンであっても多少首をかしげたくなるのではないだろうか。
しかし今回の騒動によって相撲協会が一般社会ではありえないような旧態依然とした体質と理事会・組織であることも判明した。それにしてもよくわからない不思議な公益財団である。

* 六日、日本テレビの「日本人が絶滅危機」、いわゆる少子高齢化問題で岸田自民党政調会長、他がゲスト出演した番組で、見かたによっては「日本沈没」である。全国民が現状と将来を認識するのに役立つ番組だったように思う。

タイトルの「日本人が絶滅危機」というのはちょっとオーバーすぎないかと、インターネットで検索してみる。何のことはない少子高齢化ではなくて動・植物の「絶滅危惧種」の解説が出てくるのだ。
しかし、これはまさに日本人が絶滅危惧種と同じ運命にあるのと同じことである。
一旦、生態系(出生率)が崩れると止めどもなく進行していく。日本で繁殖し周年生息するコウノトリの個体群は生息環境の悪化によって絶滅した。
今は国の天然記念物として保護されているが、中国からつがいを譲り受けて人工的に繁殖させて現在数は野生を含めて100羽ぐらいまで回復しているそうだ。

人口減少をこのまま放置しておけば、30~50年にはとんでもないことになっている。確実に日本は衰退、崩壊していくことは誰の目にも明らかであると。
一般論では他人事でピンとこない。高齢化した高島平団地や多摩ニュータウンさらには過疎地などの現状が日本全体と考えればよい。ゴーストタウン化され生活が成り立たなくなるのだ。

働き手が減って税収が足りないのだから予算も組めない。老々介護どころの話ではなくなる。次世代の人たちはどうするのだろうか。こういうことを考えると日本人の価値観を変えることが必要だろう。外国人労働者の受け入れをさらに積極的に進める必要性を考える。
それについてはEUの状況を引っ張り出して多くの問題点を指摘するむきもある。日本人は単一民族を誇り、その中で安全と平穏を守ってきたと。しかし日本の少子高齢化のスピードの速さは別格なのである。

単一民族で生きていくなんて夢物語で、限界にきていることは政府も関係機関も十分承知しているはずだ。ただそれを打ち出しても選挙の票にはならない。国民に深刻さを理解させるのは得策ではないなどの思惑が働いているのかもしれない。
また、小松左京の推理小説「日本沈没」(1973)は、視点は違うが大胆な小説である。今、南海トラフ大地震が叫ばれている。地震が起これば日本が現状を回復するためには何十年も要することになるかもしれない。私が生きている間は平穏無事でありたいのが本音である。