板の庵(いたのいおり)

エッセイと時事・川柳を綴ったブログ : 月3~4回投稿を予定

エッセイ:「卑怯者(14)」2018.07

2018-07-31 11:03:04 | エッセイ
エッセイ:「卑怯者(14)」2018.07


世界的に有名な労働歌の一つ「赤旗の歌」の訳詞(赤松克磨)の一小節に「~~卑怯者去らば去れわれらは赤旗守る」というのがある。1960年に安保反対闘争で日本中が揺れ動いたときに、東京に出てきて右も左もわからない田舎者の私が覚えた歌である。今にも日本が戦争に巻き込まれるかのような錯角に陥ったものである。改めて訳詞を読んでみてその現実離れしたすごさに驚く。

英語には、日本の「卑怯」と同じ様に使える単語や表現はないのだそうだ。一言で「卑怯」と言っても、かなりいろいろなニュアンスがある。臆病でできない「卑怯」、裏切りをする「卑怯」、公正性に欠ける行為の「卑怯」などさまざま。まさに世界語になろうとしている若い女性が好んで使う「かわいい」という表現も同じだ。

人間には本来卑怯というDNA(?)が組み込まれているのだろう。しかしほとんどすべての人が「他の人はともかく、自分は卑怯な人間ではない」と思い込んでいるのだ。確信犯であろうがなかろうが、程度の差こそあれ、他人を裏切ったりしたことがない人などいない。これを否定できるのはイエスか釈迦に値する人であろう。ところが卑怯という概念さえ持ち合わせていない人種がいるのだと思う昨今である。

マスコミで話題になった日大アメフトの危険タックル事件。当時監督の内田氏は、「危険タックルは支持していない、加害者選手個人のやったことでコミュニケーションに問題があった」と。
これに対して試合のビデオや聞き取り調査等をもとにアメフト関東連盟や日大が委託した第三者委員会でも内田氏や井上氏からの指示があったと明言している。
にもかかわらず、内田氏はしらを切り加害者選手に全責任をおっかぶせようとする。さらにアメフト部選手たちを強圧的に従属させようとする悪質さ。私はこれほど卑劣極まりない人間を知らない。教育現場に携わる人間として聞いたことのないような卑怯者である。
「三つ子の魂百まで」という諺があるが、彼の生い立ちはいかなるものであったのであろうか。正直で優しい利発な子供だったとは到底思えないが。

本事件を機に日大の経営側の体質が一気に暴露されてきた。こんな大事に組織を牛耳る田中理事長は卑怯にも表に出てこず、また組織の改革を拒み続ける。さらには世間の騒ぎにも黙秘、放置しておけばそのうち沈静化すると高を括(くく)る。
確かにマスコミが叩くのもその時だけですぐに沈静化するのも事実である。唯一フジテレビの「バイキング」が面白おかしく取り上げ続けていることに日大側は不快感を示しているそうだ。
結局は我慢比べと面の皮が厚いほうが常に得をするようになっているのである。

さて突然飛び込んできた文科省佐野局長による東京医科大学裏口入学贈収賄のニュースにはびっくりした。私立大支援事業の対象校に選定するよう便宜を図る謝礼として、自分の子供を同医科大に裏口入学させてもらったのだと。

さすがに東京医大の臼井理事長や鈴木学長は裏口入学に関与した事実を認めて辞任した。ところが肝心の佐野氏はこれを否認しただから開いた口が塞がらない。
対象校に選定する見返りにわが子の裏口入学を局長たるものが学校側に直接的に依頼するはずがない。そもそも文科省の局長(当時は内閣官房)が個別の大学とこっそり面会し申請書の助言をすることなど言語道断で許されるはずがない。
社会の公正性を欠くような背任行為が厳禁であることぐらい入省するときのイロハのイとして叩き込まれているはずである。
すでに東京医大には裏口入学の過去数年間の内部リストがあることが判明しているのだ。
本件も森友学園や加計学園や公文書改ざんにまでに発展した財務省の問題と同じように、卑怯にも誰かの勝手な忖度に落ち着かせたいというのであろうか。

総裁任期を連続3期9年に延長することになった自民党、安倍総理は3期目を目指すことに意欲的である。対抗馬として石破氏などが出馬しようが大方の見方は安倍で決まりと。
そうなれば、安倍氏は歴代総理大臣の中で最長となり歴史に残ることになる。あの伊藤博文や吉田茂を超える偉人となるのだが、彼らの政治実績を果たして超えられるであろうか。
横綱白鵬の優勝記録や女子レスリングの伊調馨選手の五輪4連覇などは心から祝福したい。
しかし森友学園や加計学園騒動はまさに私的な関係に当たるものである。記憶の彼方であろうが関係者には自殺者まで出し、国会を空転させ、国民の政治への信頼性を失墜させた罪は大きい。

大河ドラマでは、西郷隆盛の長州征伐(和戦)の結果に不満である徳川慶喜の身勝手さに西郷は「徳川家を守ることにきゅうきゅうとしており民や日本国のことなど全く考えていない」と慶喜との決別を決心した。
日本の夜明けには勝、西郷、坂本など20代30代の多くの若者が羽ばたき近代国家に進んでいったのである
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エッセイ:「さすがに参った腹痛(13)」2018.07

2018-07-16 16:20:47 | エッセイ
エッセイ:「さすがに参った腹痛(13)」2018.07

今年の1月の真夜中に腹痛により目が覚めた。鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸)が膨らんで元に戻らないのだ(これを嵌(かん)頓(とん)という)。数年前から症状は出ており、子供のころにも出ていたが自然に治って50有余年たったのであまり深刻には考えてはいなかった。

通常この脱腸は風呂に入れば水圧で、指で押せばへこむし夜寝れば引っ込むのだ。ところがこの日はそうではなかった。陰嚢(袋)がパンパンに張って自分の力ではどうしようもない硬さになっていた。もうその痛さは表現のしようもないくらいだ。のたうち回っていた。このまま朝まで待つか-------頭の中に救急車が過(よぎ)った。必死で119番を回し救急車を要請した。とりあえず保険証と現金を握って救急車の到着を待った。
救急車の中で隊員から質問攻めにあうが痛さでそれどころでない。今は独居の私には娘が市内に住んでいる。連絡を取るための電話番号を聞かれたが普段はダイアルを回さない登録を使っているので思い出せない。こじつけで覚えていた”皺ない老婆心”を伝えたところ連絡を取ってくれたのは午前2時半ごろであったろうか。
痛みは最高潮に達し救急車の中では大声でのたうち回りながら足に触れるものはすべて蹴飛ばしていた。自宅前でおよそ一時間近く隊員は受け入れ施設に電話を入れるがらちがあかない。7施設目の病院がようやく受け入れてくれることになったのだ。どこですかと確認すると、成田の徳洲会病院でこれから約40分位かかるという。
病院に到着するまでの激痛に耐えることは死にも値するものであった。人間は痛みにこれほどまでに弱いものであることを改めて痛感した。
到着すると医師が嵌頓した腸を力いっぱい押しこんでくれ徐々にへこんでいったように記憶している。それまでの激痛がウソのようになくなったのだ。
娘夫婦が駆け付けてくれ、彼らに医師が説明しているのを聞いていた。今日午後一番でオペを行います。嵌頓で怖いのは腸の癒着や壊死であり手術してみなければわかりませんと。
手術台に乗せられると全麻でオペが行われ、名前を呼ばれ気が付くと病室のベッドの上であった。
術後熱もあり三日間入院したが、回診に来られた担当医師は左側もヘルニアですね。手術しておいたほうが良いですよと言われた。
手術をしなければいけないことはわかっているけどなかなか具体的な行動にいたらないのだ。
この話を近くのかかりつけA医師に話したところ、2~3年前にオープンした成田の徳洲会病院を見学に行ったが、11階のフロアが倉庫になっており、日本が外国に医療支援する際の物資が保管されていると。最近では国立病院がほとんど廃院になりそれを代替しているのだとかと。
105歳まで現役であった日野原重明先生が聖路加国際病院の院長ころ講演の席で「昨日鼠径ヘルニアの手術をしてきました」と言われびっくりした話をしてくれた。
A医師の紹介状で、7月中旬当市にある大学附属病院で左鼠径ヘルニアの手術を無事済ませることができた。

鼠径ヘルニアと言われるとほとんどの人はよくわからないが、脱腸と言えばあああれかと理解できる。鼠径ヘルニアの”そけい” 鼠(ソ、ねずみ)と径(ケイ)の2文字から出来ている。径は”こみち”つまり通り道、 何が通るのかというと鼠の通り道。 鼠とは男性の生殖器である睾丸を意味する。
よく耳にする”ヘルニア”という 言葉の意味は、”飛び出す”ということ。 ヘルニアという病名では椎間板ヘルニアなど有名。睾丸が通った所から腸が飛び出してくる。腹の中にあった睾丸が腹の膜の外(陰嚢、袋)に出るための道を意味しておりその道は、筋肉が薄くなっているので血管も通り道にしている。
 ほとんど男性の病気であり、年齢とともにその部分が弱くなって腸が出やすくなるのだそうだ。

今でこそ穏やかな生活になったが、若いころにはずいぶん無茶な生活をやってきた。高齢になれば予期しないことが起こりうる。病気をすると家族や他人様に迷惑をかけることになる。健康が宝であることを痛感した次第である。長寿県の長野県佐久市に“ぴんころ地蔵”があるのを思い出した次第である。


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エッセイ:「戦争だけはご勘弁を(12)」2018.06

2018-06-18 11:33:29 | エッセイ
エッセイ:「戦争だけはご勘弁を(12)」2018.06


史上初めての米朝首脳会談が行われた。専門家によるとトランプ大統領も金正恩(キム・ジョンウン)委員長もこれまでになかった異質のタイプのリーダーだから実現したのだろうと。
双方が「ちびのロケットマン」だの「老いぼれ爺」だのと我々一般人でも言わない下品な罵(ののし)り合いをしたばかりである。突然、米朝首脳会談開催の報道を聞いても、そんなことがあるわけがない、どうせトランプ氏の思いつきの冗談であろうと。

しかもシンガポールでの開催が決まった後でもトランプ氏は会談の中止をほのめかすなど相手を揺さぶる。毎度のことであるが、予測不能であり駄々子じみた交渉術を使う。
それが手のひらを返したように首脳会談後の記者発表では金正恩を持ち上げ”お互い信頼でき実りある成果”となるからわからないものだ。

主に米側は「北朝鮮の体制保障」、北朝鮮側は「完全な非核化」を約束した共同声明を取り交わした。トランプ氏が金正恩氏に贈ったという映像は、「結果は二つしかない、過去に戻るのか前に進むのか」というメッセージである。
ミサイルと戦闘機の映像が流れるものと、北朝鮮各地に明かりがともり、鉄道が敷かれ、ビルの建設が進むと言った未来の繁栄が描かれているものだという。

米朝で共同声明が発表されたからと言って約束がそう簡単には進まないだろうことは想像に難くない。何せ北朝鮮は過去の例から見ても一筋縄ではいかない国である。
所有する核弾頭の数も定かでない上に、施設も非公開であるからよく把握されていない。今後開発に携わった技術者の処遇をどうするのか、設計図等の破棄の問題など様々だ。外貨稼ぎのために技術者が海外に拡散したら地球上に癌細胞が転移するようなものである。

まあ、このようなことを心配始めたら切りがない。具体的なことの発表がないということは、決めていない、決められないということだろう。またトランプ氏は会談成功の焦りがあったのかもしれない。「もうここにいてもすることがない」とそそくさと帰国してしまった。
トランプ氏は秋の中間選挙を意識し演出した劇場型の首脳会談で自らを鼓舞したかったかもしれない。
とは言え、識者の中には言葉を過小評価してはいけないともいう。言葉は時に危険だが、時に人に希望を与え、その希望が物事を良い方向に変えるというのだ。

2009年にオバマ前大統領はノーベル平和賞を受賞した。プラハで表明した「核廃絶に向けた国際協調外交推進の理念」、そして6月にカイロで行った「イスラム世界に対する融和と対話の呼び掛け」などである。

氏への受賞には賛否あるが、オバマ大統領は「核兵器が危険な国家へ拡散してしまうことを防ぐことが第一義とした上で、ゆっくりと核兵器配備の縮小を進めていこう、私が存命のうちには達成不可能かもしれないが」と、理念に対して、現実論で返歌しているのだ。

もしかしたらトランプ氏はノーベル平和賞を期待しているのかもしれないとも言われている。北朝鮮から核兵器の完全廃棄という国連決議を実現させる協定を取り付けたのだから大変なものである。
トランプ氏の決断は、誰の目にも米本土に届く北朝鮮の核ミサイルの開発が現実味を帯びてきて、一刻の猶予もできなくなったからだろうと映る。

歴代の米大統領は、北朝鮮など鼻にもかけないと交渉どころか無視してきたところがある。疲弊した北朝鮮は、国民を犠牲にして核とミサイルの開発に集中してきた。米国をテーブルにつかせる方法はこれしかないと思ったのかもしれない。

北朝鮮は、米国が国際世論の前で北朝鮮の体制を保障し敵対関係を辞めてくれれば核・ミサイルの破棄は大きな問題ではないと思っているかもしれない。
国の経済を立ち直らせるためにも国連の経済制裁を解除し、関係国からの経済援助が欲しいのが本音であろう。よりによって同じ一党独裁国家であるシンガポール(リー・クアンユー初代首相の長男リー・シェンロン首相)の繁栄を目の当たりにしたのだから。

ところで、第一次世界大戦(1914年~)による死者数は、軍人と民間人で1500万人~1800万人といわれる。
また、第二次世界大戦(1939年~)による死者数は、軍人と民間人を合わせると6000万人~8500万人といわれている。

「桶狭間の戦い」(1560年)といえば日本三大奇襲戦として知られる。2万5千の大軍を率いる今川義元に対し織田信長は僅か数百人の兵で本陣を急襲し義元の首を討ち取ったのである。

だが偵察衛星が進んだ現代では宣戦布告になしの不意打ちで勝利することは不可能である。誰もが好まない米朝戦争が勃発すれば双方の兵器の進歩もあって間違いなく夥(おびただ)しい犠牲者が出る。日米同盟がある日本は間違いなく戦争の当事者になり巻き添えを食う羽目に陥らざるを得ないのだ。

 最後になるが、昭和12年1月の年頭の新聞に作家の野上弥栄子は心からの願いを寄せている。「たった一つのお願いごとをしたい。今年は豊作でございましょうか。凶作でございましょうか。洪水があっても、コレラとペストが一緒に流行っても、よろしゅうございます。どうか戦争だけはございませんように」と。

 一人の小説家の眼には、ひそかに忍び寄ってくる不吉な影が、ありありと映じていたのだ。いかなる自然の災害よりも、人間が引き起こす戦争こそが、最大の悲劇であるという、野上さんのこの言葉は、つぎに来るべきものは人類破滅の核戦争以外にないと言っているように聞こえる。



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エッセイ:「長崎に奇跡を呼んだ男(11)」2018.06

2018-06-06 10:29:01 | エッセイ
エッセイ:「長崎に奇跡を呼んだ男(11)」2018.06


最近はヤマト運輸,佐川急便など運転手不足により宅急便の配達問題がクローズアップされている。
2006年、ホリエモンこと堀江貴文氏がライブドアファイナンス社の証券取引法違反(粉飾決算)の容疑で東京地検に逮捕された。
当時はM&A(企業合併・買収)が盛んな時で、東大中退の若い起業家ホリエモンは時代の脚光を浴びていた。このホリエモンが「インターネットが進むと広告掲載が増えそれに伴う通販事業が活発になる時代が来る-------」と容疑を否認する会見で手八丁、口八丁のしゃべりをしていたのを覚えている。

今や地方都市の商店街は、シャッター通りへと変遷。一方通販による販売は増え続け、宅急便の配荷個数は年間40億個、なんと国民一人当たり年間40個も通販で商品を購入していることになる。 
 宅急便業者がパンクしそうなくらいの勢いで伸びておりホリエモンの予測した通りになっている。
 
通販業者は今ではアマゾンや楽天、他など夥(おびただ)しい数になっている。その中でも特異な存在に「ジャパネット・たかた(高田)」がある。テレビやラジオから聞こえてくる独特の甲高い男性の声によるコマーシャルだが、よくある10秒や20秒の短いものではない。2~3分で長い商品特徴を丁寧に説明するものである。 高田明社長自らが出身地長崎の平戸弁(?)のトークでコマーシャルに登場していたのであるから驚きであった。そのトークと共に人柄のせいか女性層には人気だとか。

父親の経営する平戸市や諫早市でカメラ販売、フイルム即日現像・手渡しで業績拡大し、その後ビデオやカラオケセットを販売。依頼された地元長崎放送のラジオ番組の通信販売トークで大成功をおさめたのを機に通販に進出。全国ラジオネットワークを達成後さらにテレビショッピングへと拡大する。
2013年に売上高千数百億円、営業利益が150億円に達したことから、2015年に社長を息子の旭人氏(東大理Ⅱ卒、野村證券)に交代し、自身経営の一線から引いた。

ところで、私はJリーグにはあまり興味がなく、日本代表が出場するWカップや他国との親善試合をみる程度である。しかしながら、日大アメフト事件他スポーツの不祥事や指導者の在り方について、元ジャパネット社長高田明氏の話を聞きJ1昇格と彼の気概に敬服した。
少し長くなるが以下にしたためた次第である。

ジャパネット社長を退任した高田氏は地元長崎になにか恩返しができることがないかと思案していた。
2017年にJ2リーグ、「V.ファーレン長崎」の債務超過や所属選手への給与未払いなどが相次いで発覚したことで存続の危機や3部への降格が危ぶまれたのを受けて、ジャパネット・ホールディングスは運営会社の完全子会社化へ踏み切る。代表取締役社長に就任した高田はクラブの所属選手を取り巻く環境を大幅に改善。
2012年から5年間J2リーグにとどまっていたチームも、昨年11月のホーム最終戦での勝利によって、高田の目の前でクラブ史上初のJ1リーグ昇格を決め「長崎の奇跡」と言われている。
 
以下は高田氏の言葉である。
「スポーツとビジネスの共通の目的は、人々を元気で幸せにするということです。今の社会にはいろいろな問題がありますが、スポーツを観ている間、人はすごくハッピーな気分になれますよね」
「私が考えていたのは、経営を安定させるのはもちろん、どうすれば監督と選手の気持ちを鼓舞し、J1昇格を目指してもらえるかということでした」

クラブがJ1リーグ昇格を決めた試合で、本拠地のトランスコスモススタジアム長崎(諫早市)には、今季最多となる2万2407人もの観客が詰めかけていた。何がきっかけで、ここまで大勢のファンが足を運ぶようになったのだろうか。

「チームが試合に負けなくなって話題に上がってくれば当然、スタジアムまで応援に行ってみようかとファンも増えてきますよね。あとはサッカーを観るだけではなく、お客さんが試合前・試合中・試合後と丸一日楽しめる空間作りをするにはどうしたらいいのか、あちらこちらを視察して勉強しました」

「たとえば、試合前においしいスタグル(=スタジアムグルメ)を味わえるようフードコーナーを活発にしてみたり、グッズの売り場を広げてみたり、子どもが遊べるような企画をしてみたり。試合のハーフタイムには花火をあげることもありましたし、J2としては珍しくスタジアムにLED看板を設け、臨場感を出しているというのもあります。そういった工夫を、コツコツと積み重ねてきたのです」

スタジアムまでは駅から徒歩で30分、これをバス輸送すれば簡単だがそれでは商店街は潤わない。ファンを飽きさせないでウオーキングを楽しいものにするために商店街に工夫をさせる。会社としてのバックアップ体制は順次強化しているという。

「V・ファーレンは元陸上選手の為末大さんに走り方の指導をしていただいており、メンタル面ではスポーツドクターの辻秀一先生を講師に招いています。また、タニタ食堂と契約して食事指導に乗り出したり、良質な睡眠の確保のため『エアウィーヴ』のマットを選手たちに使ってもらったりもしています。そういう環境づくりに投資をし、選手のコンディションを整えていけば、今後より一層の力を発揮してくれることでしょう」(

 これら以外にも、高田氏は自宅にて選手たちとの食事会を開いたり、今冬にはJ1昇格を祝して選手たちをハワイ旅行に招待する予定だったりと、その太っ腹な対応には世間から好意的な声が多い。そこにはいったい、どんな意図があるのか。

「自宅での食事会については取り立てていうほどのことでもないのですが、私もジャパネットを30年近く経営してきましたから、選手みんなの思いがひとつにならなければミッションを果たせないということはわかっているつもりです。モチベーションを上げるという意味では、食事会のようなコミュニケーションの機会はすごく有効です」

 「ハワイ旅行は、選手との食事会の席で私が酔った勢いで『J1に上がったら海外に一緒に行くぞ』と、つい言ってしまったのが最初でした。勢いで言ってしまいましたが、約束は約束として私財を投げ打ってでも個人的に連れて行こうと思います。シーズンオフの期間でも選手はみんな忙しいのですが、なんとか日程を調整したいと思っています」

 最後に、V・ファーレンにまつわる将来の展望は「『1年先、2年先にはどうなりたい』というより、一日一日をどのように改善・改革していくかを意識しながら、日々精進していこうと考えています。それを実行できたからこそ、今季はJ1昇格を決められたのだと思いますし、人間は常に自己を更新していくことが大事でしょう。“今”を一生懸命にがんばっていたら、目標には自ずと近づいていけるはずです。

 「それに、監督も選手もスタッフも特別ではなく、みんな同じ立ち位置にあります。スポーツから礼儀や挨拶を学び人間性を磨くということも、V・ファーレンのようなプロチームの課題ではないでしょうか」

 「ジャパネット以外のスポンサーや行政、ファンのみなさんの知恵を借りながら、これからもっともっとV・ファーレンを県民の誇れるクラブにしていきたいですね。そのための力がだんだん湧いてきていることを、私も実感しています」

 ジャパネット時代とはまた違った“名物社長”として、新たなキャリアを歩み始めたばかりの高田氏。長崎のみならず、日本中を大いに盛り上げてくれそうだ。(文=森井隆二郎/A4studio)


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エッセイ:「捨てる神あれば拾う神あり(10)」2018.05

2018-05-25 21:18:35 | エッセイ
エッセイ:「捨てる神あれば拾う神あり(10)」2018.05


日本の大相撲、女子レスリング、アメリカンフットボールなどのスポーツ界が物議を醸している。多くの国民に支持され健全であるべき選手や指導者・チームそれを支える組織、団体がおかしい。
世間の常識から乖離した悪しき伝統や習慣が生きている。指導という名目のもとに制裁・暴力行為が一部では相も関わらず行われているようだ。

女子レスリング界では伊調馨選手に対するパワハラが問題に。日本の女子レスリングを世界トップのチームに引き上げた栄和人強化本部長にどうして陰湿ないじめをする必要があったのかと俄(にわ)かに信じきれないものがあった。
しかし第三者機関の調査の結果、パワハラの事実が認められて栄氏は強化本部長を引責辞任。日本女子レスリングの功労者は栄光から一転して奈落に落ちた。

2015年の至学館大学(旧・中京女子大学)創立110周年を記念するシンポジウム「日本女子レスリング、強化の軌跡」で、聴衆を前に栄氏が自らの教え子である選手二人(結婚・離婚そして結婚)に手を出したことを堂々と告白したのである。常識では考えられないスピーチであり、噂ではこれ以外にも手を出していたようだ。
何のことはない、スケベ爺が自分の意のままにならず志学館を離れ、東京に練習拠点を移した伊調選手に嫌がらせをしたという憶測が成り立たつのだから開いた口が塞がらない。若い女子には指導者に対して自ずと信頼と情が移りある種のカリスマ性ができることは想像できる。

栄氏のパワハラ問題を内閣府に告発状を提出したのは、後輩(鹿児島商工高、日体大)で栄氏からレスリングの覇権を交代させた安達巧氏であるから因縁が深い。氏の勇気がなかったらこの問題は闇に葬られ、伊調氏は潰され日本レスリング界は改革されずに悪しき体質が続いていたであろう。

栄氏はアマレス選手時代から一流選手として有名であった。日本女子レスリングをここまで引き上げた指導力と功績は評価に値するとされている。協会の強化本部長まで上り詰めた過信と慢心がさせた結末であろうか。
それにしても突然テレビ会見で意味不明な持論を吐いた谷岡侑子至学館大学学長の「伊調は選手なのですか?」という不遜な態度には唖然とした。さらに日本レスリング協会の本件の対応のまずさと自浄能力のなさには呆れ果てた次第である。

日本中を巻き込み議論を呼んでいるのが関学と対戦した日大アメフトの悪質・危険タックルの問題である。当事者である悪質タックルを行った日大・宮川泰介選手本人のテレビ記者会見では、本人の意思で真摯な反省と負傷した選手並びに関学への謝罪会見である。危険タックルにいたった事実と心情を淡々と語る本人のつらさは如何ばかりであったかと思うと胸が熱くなってきた。

これに対する内田監督、井上コーチの対応、さらには宮川選手の会見内容を否定する緊急記者会見の司会者の態度などどれ一つとっても納得するどころか憤りをさえ感じた。試合後10日以上も経った18日に日大では理事会が開催されたが世間が騒いでいるにもかかわらず話題にも出なかったという。そこから垣間見えるのは、日大の経営組織のゆがんだ構造的な部分である。学内では内田氏はナンバー・2の常務理事で人事権を行使できる怖い地位にいるのだとか。

25日、ついにナンバーワン・の大塚学長が記者会見を開いた。その会見はこれまた自己防衛に終始した一般論で、大学の危機などどこ吹く風で具体性のない第三者委員会を立ち上げ調査するというもの。
その表情、態度、しゃべりは内田氏と瓜二つに見えた。自己保身のために悪の強い内田氏を抑え人事権を委ねて脅しで学内を牛耳る。

日大では非正規雇用の英語の職員30名が内田氏の命である日突然解雇されたのだとか。付属高校ではアメフトの選手が日大を嫌がって他大学に入学したら関係する職員が冷や飯を食わされる羽目になったとか。生活が懸かった人には触らぬ神に祟りなしで物が言えなくなるのは当然である。
一方厳しい掟の中に閉じ込められたアメフト部の生徒は、就職先を推薦してもらうために頑張り続けなければならないのである。

大人しく命令に従う者にはそれなりの扱いをし、逆らうと切り捨てられるどこかの組の組織ではないかと勘繰りたくなる。

しかしながら、一部の報道によると近々に日大アメフト部員達が内田氏のまやかしに反論する声明を出すと。これ以上傍観していたら自らも同じムジナになる。一時も早く理不尽な内田イズムから脱却したいと思って当然だろう。
 国民はその勇気と行動力に感動しリスペクトするだろう。

諺に「捨てる(棄てる)神あれば拾う神あり」というのがある。世の中には様々な人がいて、自分のことを見限って相手にしてくれない人もいれば、その一方で救いの手を差し伸べてくれる人もいる。
 日本には八百万の神がいるのだから、不運なことや非難されるようなことがあっても、くよくよしなくてもよいという教え。




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