板の庵(いたのいおり)

エッセイと時事・川柳を綴ったブログ : 月3~4回投稿を予定

エッセイ:「特異な都市・江戸の町(16)」2015.07

2015-07-24 21:59:17 | エッセイ
エッセイ:「特異な都市・江戸の町(16)」2015.07



 2020年の東京オリンピック用の新国立競技場は、すったもんだの末に白紙撤回され、振り出し戻った。大方の国民は無責任極まりないやり方に憤慨しているのである。
 誰が責任者だか分からないうちに設計から予算まで一人歩きしていたのだ。しかも数十億円はすでに返らぬ費用として支払い済みであるというから驚きである。よくもこんなことがまかり通るものだ。森元総理や建築家・安藤氏などおいしい汁を狙っていただろうが、手のひらを返して言い訳に終始する。
国の借金が1000兆円を超えるのは、つまるところ政治家や役人などが税金をどんぶり勘定で、大判振る舞いしてきた結果であろうか。

 ところで、取り壊しになった旧国立競技場のグラウンドの下に、女性用のトイレがあったことはご承知の通りだ。試合直前の女性選手たちが急に行きたくなった時のために設けられた施設である。それは、立ち小便の便器であり、女性が立ち小便をするするのかと驚くムキもいるかもしれない。

 私も子供の頃農作業中のお年寄りが着物をたくし上げて立ち小便をしているのを見たことがある。江戸では少なかったようだが、京都の女性にとってはごく普通の行為だったとか。
 現代は女性がトイレで苦労することは少なくなったと思う。しかし江戸の女性は、外出先で大便がしたくなったときはどうしたのだろうか。江戸の町には町内ごとにという現代の交番のような施設があり、そこに町役人が交代で詰めていたので常設の便所があった。また武家屋敷地ではという自衛の番所があり、通りがかりの者でも借りられた。一歩裏通りに入れば長屋の共同便所があり外からでも自由にいることができた。

 しかし、郊外の景勝地などに出かける時、必ずしも近くに民家がない場合は困ったはずだ。そういう場所にはムシロで囲った簡易便所が設置されていた。江戸時代、大便はとして農業にとって大切な肥料だったのである。
江戸の町までわざわざ買いに行ったほど多くの人肥がほしかったのだから、喜んで便所を作って待ち構えていた。しかも郊外に遊びに来るような裕福な町人の上質な人肥が手に入ったのである。

 有名な隅田川の花火大会は、毎年7月の最後の土曜日に開かれている。江戸時代隅田川に浮かぶ屋形船の多くには便所が設置されていなかった。そこに登場したのが便所専用船で、屋形船から合図があると船縁に近づいて客を乗り移りさせた。ゆれながら用を足すのは大変だったろうが、女性にとっては地獄から生き返った心境だったと察せられる。

 豊臣秀吉に転封を命ぜられた徳川家康は、1590年に駿府から江戸に移り江戸城を居城とした。当時の江戸は漁村が点在し葦などが生い茂る湿地帯あった。 江戸城の間際まで日比谷入江が入り込み、現在の皇居外苑のあたりまで海だったのである。

 江戸の人口は、正確な統計はないが、資料として1611年に来日したスペインのフィリピン総督ドン・ピベーロが書き残した数字で15万人。
 赤穂浪士の討ち入りの7年前1695年には町人や職人などの町方だけで35万人、それに全国から集まる藩士や幕臣が50万人、さらに神職や僧侶を入れると90万人に上る。
 この時代パリやロンドンの人口がやっと50万人ぐらいだった。それが文化文政の時代には120万人というピークを迎えた。

 江戸という町がロンドンやパリと違う特徴は、毎年参勤交代により人口の五分の一が入れ替わるということである。また、時を経ずして江戸文化が帰国する時に持ち帰られ全国の隅々まで伝わるのである。そういう意味で江戸は、世界的に特異な都市でだったといえる。

 今年6ヶ月で日本を訪問した観光旅行者が900万人に達し、年間1800万人が推測されると。観光客もリピータが増え始め彼らの多くが、日本の文化はすばらしい、面白い、また訪日したいといってくれる。
 世界はグローバル化の波にもまれて均一化が進む。太平洋と日本海という外堀が日本の特異な文化を外敵から守ってきた。また日本人は古いものを大切に保護してきた。
日本がお手本にしたことのある中国は、4000~5000年の歴史とは言うけれど、その伝統文化は共産党により打ち壊されてしまった。

 栃木県の史跡足利学校では、孔子(BC552~479)の教えである「論語」を、参加者全員が大声を出して読む素読体験プログラム(論語素読の集い、小中学生の論語体験、日曜論語素読体験など)を行っている。これには本家の中国人もびっくりしていると。



エッセイ:「日韓関係の雑感(15)」2015.07

2015-07-11 09:27:34 | エッセイ
エッセイ:「日韓関係の雑感(15)」2015.07
                        
 6月22日、どの朝刊も一面トップは日韓外相会談の記事である。私が購読している新聞は、あまり評判のよくない朝日新聞である。あるところで毎日新聞と産経新聞を読むことが出来た。いずれ新聞も外相会談の結果「韓国が、日本の世界遺産登録を容認する」で、日韓の緊張が未来志向になっていくことの期待感である。産経新聞は例のごとく韓国にそれほどの期待は出来ないとしている。

  明治維新の産業革命遺産17の世界遺産登録をめぐって、寛容なる韓国に容認をしていただき、日本は胸をなでおろしたと、まあ皮肉ればかような外相会談の結果である。
 50年前、軍事政権の朴正煕大統領により日韓基本条約の締結が取り交わされた。ご存知の通り、日本の韓国に対する莫大な経済協力(当時の韓国年間予算3.5億ドルに対し、無償・有償・民間援助合計で8億ドル)と一切の請求権の完全かつ最終的な解決、それらに基づく関係正常化などが取り決められた。
 
 南・北朝鮮間のDGPは北朝鮮が韓国の2倍であった。戦争状態が継続する中で、朴軍事政権は何はともあれ国力の増大を最優先し、国交正常化を急いだのだ。この日韓基本条約の締結を機に「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれる経済発展につながったことは紛れもない事実である。朴大統領は、国民に日韓協定の中身を伏せ、徴用工の損害賠償費の分まで経済開発に投入してしまったのだ。
 
 今日の日韓の不協和音をここまで高まらせた張本人が朴槿恵(パククネ)政権である。諸外国に従軍慰安婦問題で「告げ口外交」をしてまわったが、それが自らの墓穴を掘り、窮地に陥れてしまったのだ。
 父親の朴大統領との調印ですべてが決着すみと相手にしない日本に、振り上げたコブシの持って行き場がなくなった。この朴・父子と日本とは何という因果な因縁であろうか。
 
 日中の首脳会談が動き出すと、韓国は孤立化を恐れてマスコミや国民が怯えだしたとも言われる。さらに、米国からは日韓の関係改善を再三にわたり求められ、今年を除くと改善の機運は遠のくとの危機感である。
 
 韓国内政問題でもフェリーの事故や地下鉄事故、ビル崩落事故、大韓航空ナッツ・リターン事件、MERS感染の問題など政府の対応のまずさで大幅に支持率(30%)を失っている。

 7月4日の世界遺産登録会議では、日韓外相会議で両国の遺産を登録を認め合うという合意で決定するのかと思えば、そうではなかった。政権内部の思惑と国民に見せたい反日の姿勢のあり方が一致しないのだ。そこでなんとしても日本に恩を売る作戦をとったともいえるようだ。
 結果的には、産業革命遺産は承認されたが、多くの日本国民は韓国のこの対応に少なからず嫌気がさしたのではなかろうか。「嫌韓人」は、はらわたが煮え繰り返るほどの不快を感じていると思う。
 こんなことを書いている私には、他国から統治・支配されて植民地にされた韓国民の痛みや悔しさは分かりようもないのである。しかし長年の韓国の行動を見てみると、よく言われる韓国は「恨みの文化」そのもののようにも思える。日本とは未来志向よりも歴史認識、過去の精算を重要視するのだろう。

 日韓の外相会談について、韓国報道は「日本に”逆転判定勝ち”」と喜んだが、日本側が「強制労働を意味しない」と説明すると、韓国報道は「外交詐欺だ」と反発。こうなると、基地に反対する沖縄新聞2紙と自民党の勉強会の関係のようである。

 私は英語に疎いが、英語で「forced to work」と表現されたら、「本人の意思によらず無理に働かされた」というような意味ではなかろうか。日本国民は、韓国人の強制労働を認めており、炭鉱等では日本人も同様に働かされたのでなかったのか (私の無責任な意見ではあるが)。
 
 なぜ、菅官房長官は、わざわざ「強制労働を意味しない」などと説明する必要があったのだろうか。ただ意地になっているとしか思えない。それに比べて、韓国の尹外相は「難題も対話を通じて解決する良い事例だ」と。また、「英文に忠実になれば何の誤解もない」と説明した。

 ところで、ベトナムのチョン共産党書記長が7日オバマ大統領とホワイトハウスで会談した。
 1975年に米国がギブアップしてベトナム戦争(約10年間)は終結した。兵役を終えた旧米兵の多くが未だにその後遺症の精神疾患に苦しんでいるといわれている。それくらい厳しい戦争であったのだ。
 トンキン湾事件で北ベトナムと衝突が起こした米軍は、連日北ベトナムに爆撃を行い、なんと255万トンの爆弾を落とした。太平洋戦争で日本が受けた爆弾の総量が13万トンといわれているから、約20倍にあたる凄まじい数の爆弾であった。除草剤による枯葉作戦も有名な話である。

 米国に対する恨みも、つらみも脇において「未来志向」でベトナムの国家を建て直そうとするリーダーの決断であろうか。
 
 了
 

6月・水無月・時事川柳

2015-07-04 15:07:23 | 川柳(時事)
6月・水無月・時事川柳


1.見栄はった洋式便座自慢する
     屋根つき新国立競技場

2.延期だともったいぶった拉致調査
     北朝鮮拉致

3.懲らしめと単細胞の思いつき
     若手自民党の勉強会

4.身内から声なき声の違憲論
     安保法で自民党内から

5.損(孫)しても金持ち喧嘩の振る舞いで
     ソフトバンク・副社長アローラ氏契約報酬金165億円

6.慰霊の塔あっという間に古希となり
     沖縄慰霊の日、

7.日韓が目くそ鼻くその支持率に
     総理と朴大統領の30%
8.ひと悶着起こさすは祖父似かな
     独自「首相談話」

9.民主党のツケ取り戻す五輪工事
     八ツ場ダム、公共工事中止

10.何にでも責任とると言い始め
     首相の口癖・勉強会

11.道ずれに呆れた自殺のむごさかな
     新幹線内自殺