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板の庵(いたのいおり)

エッセイと時事・川柳を綴ったブログ : 月3~4回投稿を予定

エッセイ「百聞は一見にしかず(13)」2017.06

2017-06-26 22:59:41 | エッセイ
エッセイ「百聞は一見にしかず(13)」2017.06


 
 旅行は、人生にもたとえられることがある。それは旅において非日常的な事に遭遇、体験し、新たな発見をする喜びに通じるからかもしれない。

 ある調査によると、日本人全体では海外旅行に一度も行ったことがない人は3割程度いるらしい。行く機会がなかった人もいれば、絶対に行きたくないと考えている人も...。後者の人の理由が実に面白い。

・「日本を離れるのが考えられない。飛行機が落ちたらどうしようとか、海外に行っているあいだに家族になにかあったらどうしようとか...。いろいろ悪いことを考えてしまう」

・「テロ事件も最近目立つので。知らない土地で死にたくない」

・「とくに行くべき理由がない。海外に行くと視野が広がると先輩たちに言われてきたけど、疑わしい。日本でも十分生活できるぐらいの視野はあるから大丈夫」
 
・また、「海外旅行に行ったことがない」と人に打ち明けたときに返ってきた言葉に、複雑な気持ちになった人もいるようだ。

・「海外に行ったことがないと話すと、必ずと言っていいほどすごく驚かれる。ちょっとバカにされているような感じがした」

 海外未経験者の都道府県別では、北海道が48%、広島が41%、----- 愛知が12.5%であるが、これは県民性によるのか、何だろうか。

 世界各国を訪れる旅行者は、年間でフランスは8000万人を越える。アメリカは6000万人、中国は5500万人、スペインは5500万人である。
 
 日本への海外からの旅行客は、政府の観光政策の重点化により約2000万人に到達したところである。2016年には、中国人の来日者が600万人を突破した。その勢いは今年になっても変わらず訪日者数の更新をしそうだ。
 
 東京・銀座をはじめとする繁華街でのショッピングや、箱根、伊豆などでの温泉三昧、古都京都の散策や、大阪での食べ歩きを満喫した人々が自国へ帰った途端に日本が恋しくなる「日本ロス(喪失感)」に陥っているという。
 ウソのような本当の話である。中国人のネット上の会話を紹介する。

・日本に行った人は、みんな日本にいい印象を持って帰ってくる。経済では20年、民度では100年中国より進んでいる国だ
・一度東京に行くと、北京がただの大きな農村でしかないことがよく分かる
・靴屋でひざまずいて試し履きをさせてくれたり、コンビニでありがとうと言われたりするサービスは日本でしか受けられない。しかも物価はそんなに高いわけではない
・道を歩いていて人にぶっつかっても、相手から先に謝ってくれるのだ!その瞬間、言葉をなくし、恥ずかしさも感じてしまう。自分に落ち度がなくても先に謝罪するということだ
・水道水を直接飲む。多くの日本人はどこであってものどが渇けば水道水を飲んでいる。ミネラルウオーターの安全基準は18項目、水道水は51項目であり、当然である
・運転手がクラクションを鳴らさない。中国の針の穴を通すような運転をするドライバー達とは天地の差がある
・街にゴミもゴミ箱もない。ホコリモない。
・サービスよし、民度よし、韓国人みたいに中国人をバカにして騙すこともない
・旅行で国内に行ったら騙されるし、ヨーロッパに行ったら相手にされないし、中東に行ったら誘拐されるし、アメリカに行ったらかえって来れなくなる。日本以外に行く場所が思いつかない
・日本に偽者や海賊版ないというのは、中国人の多くが信じないだろうね
・中国と真逆な国がこんなに近くにあるのに、行かないわけがない

「外交関係の悪化に対する反応で、日本に行く人の気持ちが分からないという意見に反論する声」

・そんなの政治だけよ。日中の交流事業はけっこう普通に行われている。心配なし。
・絶対大丈夫。日本人は中国商店や中国車を叩き潰したりしないから
・日本に到着したすぐあとに、中国国内の報道がウソだったことに気がつくはず。
・抗日戦争の時代でも、日本の華僑が問題なく暮らしていたのだから、今問題があるわけがない。
・一般市民は礼儀正しいから、もし中国人が嫌いでも、表面的には優しく接してくれる
・団体旅行で日本に行く時は、日本人ではなく、現地の中国人に要注。奴らは本気で危ないから気をつけろ
・3年間で3回日本に行った。中国メディアがいっているのとは違い、普通の日本人は中国人を排斥しない。誠実に温和に親しげに接してくれて本当に感動する。奥飛騨の旅館を出る時に、番頭さんが雪の中、バスをずっと見送ってくれた姿が忘れられない。

「自分の目で現実を見た人数の増加とともに、中国政府の”反日プロパガンダ”に対する”耐性”を得たようだ」

・8歳の娘が「なんで日本とアメリカは中国をいじめるの」と聞く。中国には悪い人たちがいる。その人たちは脅して国民をその気にさせて金儲けをして、自分達は日本やアメリカに移住をしようとしている
・日本に連れて行けばいいんだ。うちのお父さんが日本の悪口ばかり言うから、2回日本旅行に連れて行ったら、それ以来何も言わなくなった
・日本やアメリカとの関係を悪化させている政府の役人は、妻子を日本やアメリカに移住をさせようと頑張っている。つまりそういうこと
・中国で反日なのは貧乏人だけ。中流より上が日本に文句を言っているのを見たことがない
・日本旅行に行くのは9割が公務員とその家族だろ。あとは国有企業の社員だ
・日本旅行経験者の日本に対する印象は極めて良好。テレビで聞く話とはまったく違う。私自身は日本はがあまり好きではないが、行きたい人は好きに行けばよい
・オレは日本などに行ったことがない。民族感情ではない。ただ金がないだけ
他者からのコメント;偽らないところがいいねぇ!
・アパホテルの件は完全に一線を越えた
他者からのコメント:分かった、日本製品の不買運動を頑張ってくれ

 かって、日本は中国に遣隋使や遣唐使を、また明治維新には欧米に使節団を派遣して進んだ文化等を学んできた。
 今中国は、アメリカと並んで最強の国家づくりを模索している。現に13億人を超える人口のもとでその経済発展は目覚ましい。
 
 しかしながら、革命によって過去の価値観は一変、国家と国民を牛耳るのは一党独裁の共産党である。言論の統制や国家反逆罪等で国民を縛って自由は与えられない。

 ところが経済大国になったために国民は海外旅行で民主・自由主義の国と接するようになった。漢語の「不見、不聞、不言」を訳したものが、天台宗の教えとして伝わったとされる。この「三猿」の「見らず聞かざ言わざる」がほどなく崩壊するのは理の当然であろう。

 私見でうがった見方をすれば、共産党が壊してしまった中国古来の宗教、道徳や礼儀、伝統行事などの文化を再構築するのには日本に学べという意味も有り、外交的に対峙する日本への渡航を黙認しているのではないだろうか。
 また、自分達の価値観がいかに世界からずれているか、疎まれているかを気づいてほしいものである。
            (ネット・コメントは東邦出版:JAPAN CLASSより)





エッセイ「地震・台風・火山の国(12)」2017.06

2017-06-10 10:59:52 | エッセイ
エッセイ「地震・台風・火山の国(12)」2017.06


 いつでも「あり得ない」ことが起こる。阪神淡路大震災、東日本東北大地震の「ツナミ」、伊勢湾台風などによる地震、台風などによる災害であろう。しかしこれらが全て「あり得ない」こと言えるかどうかは見解が分かれるところかもしれない。
 福島原発事故では「想定外」という表現を使っているところからも、関係者の「あり得ない」という思い込みによる「油断」「慢心」が原因だったのかも知れない。

 「あり得ない」の類語は辞書には50以上もある。ということは、日本ではそれくらい日常頻繁に使われている言葉なのだ。なぜだろうか。
 それに比べ英語では、「あり得ない!」は、No way!→There’s no way (that) ~ →can’t be true → That’s impossible →と定番である。

 「日本はいい国だけど地震が怖い」という外国人の声は少なくない。国連大学が自然災害リスクについてまとめたレポートによると、「自然災害にさらされるリスク」の項目では日本はなんと4位。先進国の中では唯一の例外。”あり得ない”の数字と言ってもいい。

 もっとも日本はインフラ整備や対処能力、適応能力などが世界最高レベルと評価され、それを加味した「世界リスク評価(WRI)」では17位、”危険な国”ということだそうだ。
 ちなみに、中国は85位、韓国は113位、アメリカは127位、ドイツは147位である。
 気象庁によると、世界中で起きたM6以上の地震の占める日本の割合は約15%。国土面積はわずか0.25%でしかないのだ。
 さらに、日本列島には火山が多い。活火山は世界に1548あるが、そのうち日本に108もあり、なんと全体の約7%もある。
 2014年の御岳山噴火では噴石や火砕流によって63名がなくなった。雲仙普賢岳の噴火、火砕流も同じである。こんな「あり得ない」悲惨なことが突然起こるのだ。  
 
 世界に誇るあの”美しい山”富士山も記録を確認できるだけで17回も噴火している。一番最近の噴火は1707年の宝永大噴火。5代将軍綱吉の治世に起きたこの噴火は、南海トラフ域・宝永巨大地震発生の49日後に起きた。2週間にわたり、関東一円に灰を降らせた。農業は壊滅的打撃を被り、20年を経ても復興できずとある。
 一般にいう南関東の関東ローム層は約6万年~1万年前までの間に数百回もあった、富士山や箱根山の大噴火でふり積もった火山灰でできている。

 当然のこととはいえ、富士や箱根の関心は景観ばかりが中心になる。ひところ箱根の異常活動で入山が制限されたが幸い大事に至らずにすんだ。、過剰警戒ではなかったかと言う向きもあろうが、人間が予測不可能な自然の力を軽視すればろくなことはないのだ。
 
 それまで160年周期で噴火を繰り返してきた富士山だが、宝永大噴火以降300年以上沈黙を続けているから怖い。「いつ噴火してもおかしくない」と言われ、世界でも有数の危険な活火山として知られる。
 噴火すれば、直接的な被害とともに東名高速や新幹線などの流通は寸断されマヒ状態になる。そのダメージからの復興には何年掛かるか見当もつかないと。

 さて、日本の災害でさらに厄介なのが台風(最大風速17m/秒以上)の存在だ。台風やハリケーン、サイクロンなどは世界で1年平均約85個が発生する。北太平洋で発生する25個の台風で日本に接近・上陸するものが11~12個と世界中の13~14%にあたるのだから凄まじい。
 
 台風は強風による直接の被害のほかに、局地的な大雨による水害が厄介だ。1959年(昭和34年)の「伊勢湾台風」は強風はもちろん、高潮、河川の氾濫で死者・行方不明者5千余名、負傷者約4万9千名を出した。
 ほぼ全国に及んだ経済的被害は人的被害以上の規模となり、GDP比被害額は阪神・淡路大震災の数倍、関東大震災に匹敵し、東日本大震災との比較対象に達するものであった
 
 それ以降、日本の観測技術は飛躍的進歩を遂げた。当初、台風の観測は米軍のB29観測機に頼っていたが、その後富士山頂の気象レーダが誕生。1977年に初めて衛星「ひまわり」をNASAに打ち上げ依頼。
 現「ひまわり8号」は「7号」に比べ50倍のデータ量であり、日本域を25分ごとに観測する。アジア近隣にも気象データを提供している。

 最近の日本は異常気象といわれており、特にゲリラ豪雨の脅威が高まっている。地域気象観測システム「アメダス」からも増加傾向が分かる。都市部では配水機能が追いつかず浸水被害をもたらす。都市部以外でも河川の氾濫、鉄砲水に加え、土砂崩れやがけ崩れをもたらす。

 ゲリラ豪雨は積乱雲がもたらし、通常山間部の近くで発達する。それが日本では東京や大都会の高層ビル群が壁になり起きてくる。また都会のアスファルトやコンクリート、エアコンのが地表の熱を生み、上昇気流に乗って積乱雲を生む。ヒートアイランド現象型のゲリラ豪雨の一因といわれている。

 日本にはありとあらゆる自然災害が起き得る。そのドレもが世界に例を見ないほど大規模で頻度も高い。日本に自然災害が大きい理由は主に立地条件によるところが多い。つい最近でも利根川水系の洪水を目の当たりにした。

 あのいやな台風がなければ、日本は直ちに水不足に陥ってしまうといわれる。
先人は水不足による食糧飢饉を嫌というほど経験してきた。 自然災害は時に多くの命を奪う脅威となるが、同時に命の恵みを運んできてくれる。
 日本は、世界で一番自然の厳しさを知り、それと同じくらい自然の恩恵を知る国でもある。
 
 欧米の信仰に見られる神と違って、神道を初めとする自然信仰が息づいてきた理由もこのような自然災害と表裏一体の関係にあるようだ。
 せめて日本では自然災害だけで勘弁してもらいたい。ISなどによる爆弾テロなど人的災害が起こらぬように祈るだけである。




エッセイ:「青いカナリア(11)」2017.05

2017-06-01 07:40:10 | エッセイ
エッセイ:「青いカナリア(11)」2017.05


 記憶が薄れつつあるが、昨年小笠原諸島で中国の漁師が大挙(最大242隻)して赤サンゴの密漁をした。中国政府はそれを見て見ないふりをする。 一網打尽に拿捕されても文句は言えない泥棒行為である。
謝罪はおろか、国際社会から非難され嘲笑されてもそれを恥とも悪いことだとも思わない無神経な国だ。
中国では法律制定により資源保護の目的で赤サンゴの捕獲を禁止した。代わりに一攫千金を狙った密漁行為だとも言われている。
 
しかし、ジャーナリストの桜井よしこ氏は、往復4~5千キロの燃料代数百万円をかけてまで個人が行くだろうかと中国政府の関与を指摘する。

 サンゴは、熱帯・亜熱帯の透明度抜群の透き通る海底に、鮮やかな赤色など色とりどりのものが木の枝のように群生する。これを動物だと言われてもピンと来ないのである。
サンゴ礁が海洋に占める面積はたったの0.2パーセントだが海水魚の種の三分の一が、そして全海洋生物の四分の一がサンゴ礁にいる。それほど生物多様性の高いのがサンゴ礁である。

サンゴの特徴は、
①自分の体(ポリプ)の外側に石製(石灰質を分泌)のコップをつくりこの中に住んでいる。
 
 ②単体1匹のポリプは小さく(1センチ以下)、脇腹から芽を出したり、分裂させたりして自分そっくりのポリプを作り出す。
 これは無性生殖で、遺伝子もまったく同じのクローンだ。この繰り返しでできる群体の石造マンションが木や塊なのである。

 ③造礁サンゴは体(ポリープ)の中に藻類(褐虫藻)を住まわせ、それと共存・共生している。サンゴの重量の半分が褐虫藻なのだ。

 海の中で光合成するものは藻類(コンブ等)だけ。ところがサンゴ礁では水に揺らぐ藻類の林など見当たらない。また水の透明度が示しているように植物性プランクトン(栄養分)も少ない。

 サンゴの中で敵から身を守ってもらっている褐虫藻はひたすら光合成に励むのである。赤道付近の海中には紫外線が強烈に注ぐ。そこでサンゴは紫外線を吸収するフィルターをつくり、これを褐虫藻の上にかけてやって住まわせているのである。

 サンゴは、動物プランクトンを触手を使って捕まえて食べている。その排泄物を褐虫藻がもらい受ける。褐虫藻が光合成するには二酸化炭素が必要だがそれもサンゴの呼吸して吐き出す二酸化炭素を利用する。
 サンゴは、殻の元になる炭酸カルシュウムの結晶をつくるのに必要な有機物を褐虫藻からもらう。さらにありがたいのは、褐虫藻が光合成する際に排出した酸素を細胞内で直接もらい受けるのだ。

 サンゴと褐虫藻の繁栄は、リサイクルを利用した共存関係で成り立っている。
またサンゴは自分を守るために表面に大量の粘液を分泌する。しかもこの粘液は、栄養分の塊であるから他の生物たちのよい食物になる。この栄養分でバクテリアが盛んに増殖する。それを動物プランクトンが食べて増え、さらにより大きな魚が食べるという食物連鎖が進んでいくのである。

 ご存知のように、近年大問題となっているサンゴの白化である。原因は、サンゴの中にいる褐虫藻の数が異常に減少すること。褐色をした褐虫藻が少なくなれば透明なポリープの壁を通して下のサンゴの骨格が透けて白っぽく見える。これが白化である。この白化が2ヶ月も続けばサンゴは弱り死ぬ。
白化の原因は地球温暖化などストレスで引き起こされる。1998年に起きた大規模白化はエルニーニョ現象が発生し、世界のサンゴの16%が破壊された。沖縄ではやく8割が死滅した。

わずか1~2度で、サンゴと褐虫藻の共存関係が失われるという事実は、極めて重要なことをわれわれに教えてくれる。

生物と生物の関係も、そして生物と環境の関係も極めてデリケートだ。わずかの環境の変化にも反応し、地球温暖化の高感度センサーだといえる。
昔は炭坑に入る時に、カナリアを数羽前面に仕立てて下りていった。一羽でも鳴きやめばガス発生危険を察知したという。NHKの朝ドラ「アサが来た」でも炭坑の場面でカナリアが登場した。
地球の危険をいち早く知らせてくれる青い海のサンゴ礁だから青いカナリアともいえるのではないだろうか。

ところがとんでもない大統領が現れたものだ。自説で、地球温暖化は”でっち上げ”だという。そして先のG8では、トランプ米国大統領は、自国に不利益な「気候変動及びパリ協定」を離脱するようなそぶりを見せたのだ。
アメリカ・ファーストを旗印に、「民主主義」「自由貿易」や「人権」といった米国がこれま訴えてきた理念や規範で牽引を果たす姿勢は皆無になった。超大国の威厳はみじんも感じられない。
 力ずくや、脅して目に見える自国の利益を優先させ、先のことなどケセラ・セラというのだろう。トランプ大統領にハートのないカードでもてあそばれては世界にとっては不幸なことである。