板の庵(いたのいおり)

エッセイと時事・川柳を綴ったブログ : 月3~4回投稿を予定

エッセイ:「長寿と懐かしい思い出(12)」2015・05

2015-05-28 19:59:27 | エッセイ
エッセイ:「長寿と懐かしい思い出(12)」2015・05


 つい先日、黒柳徹子が司会・進行する民放TV番組の「徹子の部屋」に、聞き覚えのある声のゲストが出演していた。103歳で現役医師(聖路加国際病院)の日野原重明氏である。徹子が何か尋ねると、まあ、とうとうと喋り捲るのである。司会者にとってこんな楽なゲストはいないだろう。たまたま私がこの一年ぐらいマスコミでお目にかかれず、元気にされているだろうかと気になっていた。
 百歳の時に、「向こう3年間のスケジュールがびっしり手帳に埋まっている」といっていた。百歳といえば、次の朝には目が覚めない可能性があるのに、”よくまあ”と驚いた記憶がある。寝る間も惜しんで仕事(名誉院長、理事長、その他多数の役職等)や執筆、趣味などに勤しんでいる。若いころには結核をわずらったとか。
 40年数年前、勤めていた企業の仕事の関係で某料亭で仕事のお打ち合わせをして会食をしたことがある。当時私が抱いていた医師のイメージとはおよそかけ離れた感覚の方であったように記憶している。
 当時は聖路加看護大学の副学長であった。その後、聖路加国際病院院長から名誉院長、理事長から名誉理事長に。氏の社会に対する貢献は筆舌に尽くせない程であろう。一般人に最もよく知られているのが、氏が唱えた「生活習慣病」であろう。それまでは高血圧症や糖尿病などは「成人病」と言われており、人は歳を重ねると大なり小なり誰でもが罹患する病気であるとされていた。
 ところが、私が40数年前にお会いした時すでに「生活習慣病」を普及さることを力説されていたが、その頃には私はあまり深くは考えなかった。それが今では、病気の多くが自らの悪い生活習慣に原因があるという認識に変わったのである。国の予算の最大が健康保険で占められているのだから大変なことである。

 今月、私が勤務していた会社の一年先輩のS氏の悲しい訃報をもらった。入社から退職するまで、三十数年間にわたり公私ともどもお世話になった掛替えのない恩人だ。時には仲間であり、先輩であり、一時期は上司でもあった。
 そのS氏はこの日野原先生の聖路加病院や国立がんセンターで闘病生活を送ったと。葬儀の受付で、香典の受け取りは辞退され、代わりに「思い出の記」を渡された。
 
 「思い出の記」には、出生、生い立ちから大学時代までの思い出、両親と家系、兄弟姉妹のこと、三十数年にわたる社会人(企業人)としての活躍と経歴、さらには、趣味や信条のことなどが事細かく記載された160ページに渡るものである。よくもこれだけの内容を系統だって調査し記録したものだと関心する。同時にこれから氏の思い出、家系としても代々残るある意味家宝になるであろう。 
 
 「あとがき」では、座右の銘はないが、強いて言えば、*石田禮助氏の「粗にして野だが卑でない」が自分の性格に合っており好きな言葉の一つだと。私は、彼らしい座右の銘であるなと感じる。
  
 *石田氏は三井物産社長から、第5代国鉄総裁に就任、「公職は奉仕すべきもの、したがって総裁報酬は返上する」と宣言し、国民の支持を得た。当初は月10万円だけ貰っていた。さらに鶴見事故(1963年、横浜市鶴見区での列車多重衝突事故、死者161名、重軽傷者120名)の発生後は、給料を1円も受け取らず、1年あたり洋酒1本]を受け取ったという。

 ところで、30数年ほど前にわが家を購入した際、S氏は在住する神奈川県大船市の植木市で庭木が安く購入できるから是非と勧めてくれた。庭木をトラックに満載しで千葉県まで運び同行した植木職人とその植えつけまで手伝っていただいた。今はそれらの庭木は、狭い庭を被い尽くすほど大きくなっているが、懐かしい思い出になってしまったのが残念である。



エッセイ「ガラパゴス化と知日:11」2015.05

2015-05-15 14:02:34 | エッセイ
エッセイ「ガラパゴス化と知日:11」2015.05


 最近「ガラケ」なる新語が飛び出してきた。何のことだろうと思うと「ガラパゴス・ケイタイ」の略語であった。早い話が多機能を持ったスマートフォンを使いこなせない人や高齢者向けに開発された簡易型の携帯電話である。
 私などは携帯電話さえ持っていないのだから、ガラパゴスの最たるものである。ほとんどのことはパソコンと固定電話で用が足りている。

 恥かきのついでだが、定年退職後10数年経つが腕時計をしたことがない。引き出しのどこかに電池が切れたまま眠っているであろう。あれから時間がこのくらい経っているだろうから今何時ごろだというカンが不思議と当るのである。
 
 さて、 日本を訪れる外国人観光客が予想以上に増えている。われわれ日本人では気がつかないような観光スポットを調べてくるのだ。最近はテレビ局でも外国人観光客を取材する番組が増えている。彼らの来日の目的や旅行の満足度を尋ねると日本人が嬉しくなるような反応が返ってくる。

 中国や韓国、東南アジアからの人は団体ツアーが多く、どちらかというと名所・旧跡をめぐり、お土産をたくさん買うのが楽しみなようである。これに比べておヨーロッパやアメリカの人は、日本の伝統・文化、風習・習慣に興味があるようだ。例外なくいずれの観光客も、日本の街のクリーンさに驚き、治安のよさ安全さに満足している。
 
 財務省の発表(5月13日)によると、昨年度の日本の国際収支が約7.8兆円(昨年の5.3倍)の黒字になったと。その要因は、円安による輸出の好調と原油安そして外国人観光客の増加にあると。そして旅行収支は1959年度以来55年ぶりに黒字に転じたと。
 しかし依然として貿易収支は6.5兆円の赤字。「第一次所得収支(配当収入など)」が19兆円の過去最大の黒字となる。輸出大国を自認してきた日本としては貿易収支が黒字にならないことには元気が出ない。
 
 安倍内閣の肩を持つつもりはないが、デフレで「失われた20年」と言われた日本にもようやく日がさしてきたような気がする。東京オリンピックの開催を期に外国人観光客の年間2千万人招致も夢ではなくなった。
 
 日本の政治・外交や経済のガラパゴス化(「孤立」、日本製ビジネス用語)はもちろんいただけない。しかしこれまで日本人は、ともすると自国の伝統・文化、風俗・習慣等にネガティブな反応をとって来たように思える。実際はまったく逆で、外国人観光客に新鮮に映り興味をもたれており、日本はすばらしい資源を有することになる。

ところで、世界には約200ケ国あるが、その中で天皇制を摂り1800年も継続している世
界最古の国家が日本である。多くの読者もこの事実に怪訝(けげん)な顔をされると思う。
 戦前までは誰もが共有していたことだ。太平洋戦争後はGHQの統制による政策でこのよ
うな歴史認識が抹消されただけなのだ。

一方、「中国四千年の歴史」とよく言われる。漢族が四千年間ずっと中国文明を守り育ててきたかというと、そんなことはない。中国の歴史は、異民族が入れ換わり立代わり侵入・征服してはつぶれることの繰り返しであった。

 多くの国は数十年、百年程度で国家の成立と滅亡を繰り返してきている。日本に次ぐ長い歴史を持つのがデンマーク、英国であり、仏は革命により1789年に、中国(中共)を毛沢東が成立宣言したのが1949年、ロシアはソ連が崩壊して独立を宣言したのが1991年である。すなわち、国家とは領土と体制が継続されているものをいうのである。

 海外の観光旅行客が興味を示し、評価する日本の特異な伝統・文化、風俗・習慣とは、世界で最も古い国家の上に継続して成り立っているものと言っても過言ではない。

 さて今中国では「知日」熱が広がりつつある。日本の文化・習慣を紹介する月刊誌「知日」が若者たちに受けている。日本通の編集長(蘇静氏)が「親日」でも「反日・嫌日」でもない「知日」に絞って日本の情報を伝えるものである。私も読んでみたが、政治や歴史認識が絡むような情報を意識的に切り離している。
 
 編集長は、若者が日本文化に引かれる理由として中国人の意識の変化を指摘する。「経済的に豊かになり、情報も入るようになったことで、中国人の間で本物志向が強まりつつある。アジアで日本ほど製品や仕組みが秩序立っていて完璧なところはない」と。

 「知日」の主筆も務める神戸国際大の毛丹青氏は、中国ではいま、日本を知ることが一つの社会運動になっていると。国と国の関係では、政治は波で、人間らしい暮らしや文化は海底、どんな波も海底には届かないのだ。
 
 中国ではここ数年、「反日」と「知日」の二つの車輪が回り、それが日本への関心を呼び、中国人の訪日数の増加につながった。「爆買い」は急に始まった現象ではない。
 雑誌「知日」に刺激されて、日本の書籍を専門に扱う書店や日本映画を上映する映画館の企画まで挙がっていると。

 中国共産党革命で中国は、古い国家体制や伝統・文化等をことごとく破壊し、国民の思想までまで変えてしまった。経済的に豊かになったが国民は今の体制ではよりどころに出来るものが見当たらない。幸い隣人に共産党や政府が教えてくれない古い伝統・文化や風習・習慣等を守り続け中国の手本になるべき日本がある。

 かって、日本は遣隋使や遣唐使を派遣して中国から様々なものを学んだ。ガラパゴス化のごとく大切に守り通した日本の伝統・文化等が海外の旅行者に関心を持ってもらえることはこの上ない喜びでもある。


4月・卯月 時事川柳

2015-05-10 10:27:30 | 川柳(時事)
4月・卯月 時事川柳



1.安いのは廃炉を抜いた真っ赤なウソ
子孫に付回す、誤魔化し

2.違憲だが有効と割って2で裁き
原告・被告の顔を立て

3.ヤラセなし棒読みニュースで収束させ
   NHKのニュース

4.欲しいのにいちゃもんつけるへそ曲がり
   大綬章の慎太郎

5.泥縄でドローンをしょっ引く法規制
   官邸にドローン飛行

6.いい加減そんな優子になれました(他人作)
  小渕優子の対応

7.のんべーに安売り規制かんべんな
  酒の安売り法規制

8.根腐れで倒れた支柱のJR
   人災で山手線支柱倒れ

9.ハリケーンもを挙げるカリブ海
   米・キューバ和解

10.高齢者ポールさまさまり
   元ビートルズ・ファン

12.遺産まで難癖つける大統領
   韓国・強制労働で反対