板の庵(いたのいおり)

エッセイと時事・川柳を綴ったブログ : 月3~4回投稿を予定

エッセイ:「正月雑感(2)」2018.01

2018-01-09 15:17:53 | エッセイ
エッセイ:「正月雑感(2)」2018.01


正月も浮かれる間もないうちに過ぎ去った。毎年のように変わり映えもせずテレビ番組を見ながらなんとなく過ごしてしまった。こんなことでよいのかという反省もちょっぴりあるが、先も長くない歳であるからあまりプレッシャーをかけずにのんびり行きたい。
 
 * さて正月テレビ番組は、元旦の「ニューイヤー実業団駅伝」、群馬県高崎の県庁前からスタートする100キロコースである。久しぶりにチャンネルを回してみた。実況解説者はかって旭化成が長期の連覇を成し遂げた宗茂氏であった。ここ数年しばらく旭化成は低迷が続いていたが、なんと昨年優勝し今年連覇がかかっているということを知ってびっくり、そんなことなら昨年も見ればよかったと反省しきり。

というのも、父親が戦後復員してから30年以上旭化成延岡工場に勤めていた。私が今日あるのも旭化成のおかげだ。実業団駅伝は戦国時代に入り旭化成は低迷する。その原因の一つは他社が戦力としている外国人ランナーの採用に二の足を踏んだことにあったようだ。それは宗監督らの意地であったのかもしれない。低迷を反省して外人の登用、一区からのぶっちぎり優勝・連覇であった。
来年もまた見るぞ!!!

* 二日、三日は箱根駅伝、これ無くして正月は越せないというほど、国民に浸透している。歴代六校目の4連覇がかかる青山学院大は、かっての覇者東洋大学とどう戦うだろうかと注目された。往路優勝した東洋が素人目には復路も逃げ切って総合優勝の可能性を匂わせた。優勝があまり青山ばかりでは面白くない、頼もしい東洋の復活を期待した。
 ところが、青学の原晋(すすむ)監督は談話で、復路の山下りで東洋を捕え逆に引き離すと。結果はご存知の通りで、この自信って何だろう。
 
原監督はランナーとしての実績は一流とはいえず、中国電力の一営業マンであった。箱根への出場など夢のまた夢であった青山である。自ら素人で監督になったと謙遜している。一言でいうならば、素人であるがゆえに新しいやり方ができたのだろう。人心を掴むのが上手いし、明るいキャラクターだ。
毎日箱根駅伝のことを考え、明日レースがあったらどういうオーダーにしようかと。インターネット等で原監督のことを知れば知るほど知りたくなる。いろんな意味ですごい人だなと思う。
特に世界からも大きく取り残された日本のマラソン界、学生たちにチャレンジするよう仕向けるユニークな指導者である。それについてはマラソン界の重鎮からも期待されているらしい。
 
 * 昨年将棋界に旋風を巻き起こしたのは天才棋士藤井4段(15歳)であった。一気に子供たちの将棋に対する関心が高まったと聞く。ゲームにはまっているよりも、集中力が高まりより教育的価値があるのかかもしれない。

将棋界を代表する羽生善治永世7冠(47歳)と、囲碁界で二度目の七冠独占を果たした井山裕太(28歳)の二人に国民栄誉賞の受賞が正式に決まった。昨今批判されることが多い政府もタイミングよく気の利利いたことをやるもんだ。

この世界では七冠の一つでも保持することは容易ではなく名誉なことであるのに、よりによって七冠とは。勝負の世界では一度つまずき、タイトルを失うとなかなかカムバックできないのが普通である。
“成功のするための秘訣はと”の問いに期待をすると、羽生は間をいて“よくわかりません”と。集中力については、マラソンに似ていると。対局中の集中力の配分を言っているようだった。
二人の並外れた精神力と努力たるや想像を絶するものであろう。しかし、インタビューではそれを感じさせない穏やかな口調で語り、これが「天才」なのかと印象的であった
 
将棋の七冠は(竜王、名人、叡王、王位、王座、棋王、王将、棋聖)。囲碁の七冠は(棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、天元)

* 昨年末に大相撲界を揺さぶった日馬富士の暴行事件。毎日どのチャンネルをひねってもこればかり。いい加減してほしい、バカバカしいと思いながらも気になってテレビをみてしまう。
テレビ局の方も話を広げ、視聴者を引っ張り込む術はさすがにすごい。貴乃花親方が一言もしゃべらないだけに憶測が広がっていく。
評議員会議長の池坊保子氏がしばしばテレビに登場、記者会見で偉そうな口をきいていたが、ちょっと違うんじゃないと言いたい。
また相撲協会ベッタリの高野危機管理委員長(元名古屋高検検事長)の紋きり口調の「悪いのは貴乃花親方」という過度な偏向より、前危機管理委員長の宗像氏(高野氏の先輩で元名古屋高検検事長)の高野氏を批判し被害者側目線で公正にという意見の方が私には説得力を感じた。

正月四日の評議員会の決定は、年末の協会の理事会の決定から一歩も出ていないのである。評議委員会は理事会の決定を踏襲しないこともある、と思わせぶりを吐いたからテレビ局は余計な憶測をする羽目になったのである。

ここまで騒動を大きくし、長引かせたのは貴乃花親方の態度であったことは言うまでもない。私を含めて、貴乃花贔屓(ひいき)のファンであっても多少首をかしげたくなるのではないだろうか。
しかし今回の騒動によって相撲協会が一般社会ではありえないような旧態依然とした体質と理事会・組織であることも判明した。それにしてもよくわからない不思議な公益財団である。

* 六日、日本テレビの「日本人が絶滅危機」、いわゆる少子高齢化問題で岸田自民党政調会長、他がゲスト出演した番組で、見かたによっては「日本沈没」である。全国民が現状と将来を認識するのに役立つ番組だったように思う。

タイトルの「日本人が絶滅危機」というのはちょっとオーバーすぎないかと、インターネットで検索してみる。何のことはない少子高齢化ではなくて動・植物の「絶滅危惧種」の解説が出てくるのだ。
しかし、これはまさに日本人が絶滅危惧種と同じ運命にあるのと同じことである。
一旦、生態系(出生率)が崩れると止めどもなく進行していく。日本で繁殖し周年生息するコウノトリの個体群は生息環境の悪化によって絶滅した。
今は国の天然記念物として保護されているが、中国からつがいを譲り受けて人工的に繁殖させて現在数は野生を含めて100羽ぐらいまで回復しているそうだ。

人口減少をこのまま放置しておけば、30~50年にはとんでもないことになっている。確実に日本は衰退、崩壊していくことは誰の目にも明らかであると。
一般論では他人事でピンとこない。高齢化した高島平団地や多摩ニュータウンさらには過疎地などの現状が日本全体と考えればよい。ゴーストタウン化され生活が成り立たなくなるのだ。

働き手が減って税収が足りないのだから予算も組めない。老々介護どころの話ではなくなる。次世代の人たちはどうするのだろうか。こういうことを考えると日本人の価値観を変えることが必要だろう。外国人労働者の受け入れをさらに積極的に進める必要性を考える。
それについてはEUの状況を引っ張り出して多くの問題点を指摘するむきもある。日本人は単一民族を誇り、その中で安全と平穏を守ってきたと。しかし日本の少子高齢化のスピードの速さは別格なのである。

単一民族で生きていくなんて夢物語で、限界にきていることは政府も関係機関も十分承知しているはずだ。ただそれを打ち出しても選挙の票にはならない。国民に深刻さを理解させるのは得策ではないなどの思惑が働いているのかもしれない。
また、小松左京の推理小説「日本沈没」(1973)は、視点は違うが大胆な小説である。今、南海トラフ大地震が叫ばれている。地震が起これば日本が現状を回復するためには何十年も要することになるかもしれない。私が生きている間は平穏無事でありたいのが本音である。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿