建築設計について

建物を建設するときに何が大事かということを考えてみました。

建築主とのトラブルと解決シリーズ 第7回

2012年07月31日 | 工事監理

「町つくり」修景工事の工事監理をしている中で建築主との間でトラブルになった問題をシリーズで掲載します。
(工事完了時の報告書の1部を抜粋して掲載しております。)

第7回    内装壁のALC版の塗装について

  • 契約では店舗内装については工事費として見込んでおらず、御社がが出来上がってきたところを見て、色が着いていないことに気付いて違和感を持った為、当初の約束以外に塗装することが当然であると要求してきたことに対して、店舗内装は当初から見込んでいないと説明しました。
  • 当設計事務所としては元々仕上げてあった壁や天井を解体して、外壁材あらわしの店舗は高価な人形等の品物を購入しに来た顧客に対して大変失礼な扱いをしている店であると感じており、既存店舗の内装のコンセプトが建築に携わる者として理解できないものでした。
  • ALC版に下地処理をせずに直接塗料を塗布した場合、後で剥れる等の問題が発生したり、今回の修景事業によって入り口のサッシュ上に開いていた大きな穴を塞ぎ、密閉度の高い空間になったために、仕上げや断熱材の施されていないALC版は結露が起こりやすくなり、結露した水が商品に影響を与えることになる可能性が非常に高くなってしまい、当然に原状で放置することが出来なくなり、仕上げの必要性が出てくるものと予想して、現段階では必要以上に仕上げをする必要性を感じていませんでしたし、何れ、様子を見て仕上げる必要性を感じていましたので、店舗内部仕上げについては当初から考えておりませんでした。
  • 出来るだけ早い時期に店舗内部の断熱材と仕上げを施すことをお勧めいたします。

既存の店舗の内装は建築主が元々仕上げてあった仕上げ材を全て撤去して壁は外壁のALC版表し、天井はデッキプレート表しで梁はロックウールの耐火被覆材表しの内装となっていたため、契約時の打ち合わせで対応を話し合いましたが、躯体表しにして、飾り付で印象付けたいとのコンセプトで仕上げを撤去したとのことであったため、契約範囲には店舗内の内装は別途扱いにしてありました。しかし、ALC版が剥き出しの状況では商品に埃が付くと思いシーラーの塗布をすることにしたところ、そのことが理解されずに色つけ塗装を行うとの誤解が生まれ、外部が出来上がってくるに従って内部の躯体表し部分がみすぼらしく感じたのか、「塗装をするようになっている」との要求をされたもので、改めて説明して誤解をといていただき、シーラーのみの施工としました。


建築主とのトラブルと解決シリーズ 第6回

2012年07月29日 | 工事監理

「町つくり」修景工事で工事監理をしている中で建築主とのあいだでトラブルになった問題をシリーズで掲載します。
(工事完了時の報告書の1部を抜粋して掲載しております。)

第6回    店舗内部の柱の耐火被覆のALC版の高さの違いについて

  • 耐火被覆のALC版の高さの違いについて御社に指摘された折、当事務所の見解として、階段の上り口であり1段(約30cm)上がっている為、「荷物の上げ下ろし等で触ってもトムレックス(吹付け耐火被覆)が欠落しないように高くしてあります。」と説明して、監理建築士は切断に対して同意しませんでした。
  • 御社は当事務所の説明を聞き入れず、請負会社の専務に直接指示を行ってALC版の切断を行わせ、吹き付け耐火被覆材を脱落せしめた為、急遽ボンドを混入して貼り付けを行いましたが、この部分については欠落する可能性が高く、耐火被覆の機能を損なうことになってしまいました。
  • 切断当日監理建築士が現場に到着する前に処理が終わってしまっていたので、対策の方法がなくなってしまいましたが、設計事務所としては低いほうの柱のALC版を高くすれば問題が解決できると思い対処するつもりでおりましたが、素人の指示によって欠陥が生じてしまいました。
  • 先日、監理建築士が御社に呼び止められて叱責を頂いたときに、ALC版の切断は当事務所の監理建築士の指示で当事務所が勝手に行ったとのご指摘がありましたが、請負会社の専務さんや現場担当者に伺ったところ、御社の指示によって切断したとの証言を頂いております。

鉄骨造の耐火被覆は建物の耐久性や防災上大変重要な要素です。建築主の勝手な思い込みで処理を直接指示してしまったことで、建物の防災上の欠陥を作ってしまったことは誠に残念なことです。目に見えている範囲についてその建築部材の役割を理解していない方は見た目だけで安易に作業を実行してしまうところに問題が有り、設計事務所が関わっている事を理解して、十分にコミュニケーションを取る必要があります。追加工事金が出せない状況の中では問題の起きた部分の耐火被覆の剥がれを補修することしかできない状況でした。


建築主とのトラブルと解決シリーズ 第5回

2012年07月28日 | 工事監理

「町つくり」修景工事で工事監理をしている中で建築主とのあいだでトラブルになった問題をシリーズで掲載します。
(工事完了時の報告書の1部を抜粋して掲載しております。)

第5回 和室の壁補修について

  • 和室の補修については契約時に防水と一緒に施工する場合、「現在汚れている範囲で補修します。」ということで打合せを行い、和室で請負会社の会長の立会いの基に範囲を確認していただいており、部屋全体の壁を塗り替えるとの約束は請負会社ではしていません。奥様の思い込みで作業内容の変更を指示されたと思いますので、再度現場で施工範囲の説明をさせていただいており、その後請負会社の専務も説明しています。
  • この折に御社から「ころころ、ころころ、言っている事が違って、いやだ!」といわれましたが、御社の発言は契約を無視した建築主の暴言と受け止めており、施工上約束したとおりの工事範囲で施工を行いました。

工事範囲について建築主と請負会社の食い違いが発生した問題です。既存建物の室内が漏水により変色してしまっている部分が有り、その部分の補修範囲について、契約時の補修範囲は部分補修ということで契約しましたが、建築主が当初の見積もり範囲を超えて元の壁と塗り替えた部分が色が違ってしまうので、請負金額の範囲内で部屋全体を塗り替えて欲しいとの要求が出されたため、契約範囲を説明して部分補修を行いました。修正後建築主に見ていただきましたが、違和感がないように色を調整して塗ったため、了解していただけました。


建築主とのトラブルと解決シリーズ 第4回

2012年07月27日 | 工事監理

「町つくり」修景工事で工事監理をしている中で建築主とのあいだでトラブルになった問題をシリーズで掲載します。
(工事完了時の報告書の1部を抜粋して掲載しております。)

第4回 外部の塗装色について

  • 外部の木部と壁の色について見本を提出して選んでいただきましたが、 それまでの経過から、設計事務所の選択ではお気に召さないと思い、御社にアドバイスなしでお願いしました。選択された木部の色はまったくの黒で、建築の常識では考えられない色となってしまい、事務所の言うことは聞き入れていただけない雰囲気でしたので、修景事業の補助対象にもなっていた為、市役所にも相談して、改めて色を決めさせていただきました。
  • 色の選択についてはデザインセンスで選択することになりますし、建築のように小さな見本で大きな部分を塗った場合、見本で見た色とはかなり違った色に見えてしまいます。その為、色決めについては専門家でも大変難しい状況です。御社のどなたが黒色を決めていただいたのか知りませんが、デザインセンスが多少でもあれば、黒色を選ぶことは無いはずと思い選んでいただきましたが、決めた色を見て愕然としてしまいました。
  • 通常施工会社は建築主の指定した色はそのまま塗ってしまいますので、監理建築士が付いてアドバイスをしなければ、修景事業の補助金も出ない方向に進んでしまいました。

建物の色決めは常日頃行なっている我々でさえ苦労しています。建築主の性格や好みと建物の特徴等を加味して決定しますが、コミュニケーションがうまく取れないていない建築主に対してアドバイスなしで色見本だけで選択していただくと周囲の状況や建物の特徴等の重要な要素や施工性を考慮できずに決定者本人の感性だけで決めてしまう傾向が強く、今回はその典型的な状況となってしまいました。

設計事務所のアドバイスに対して聞く耳を持たない建築主の典型的な悪例となってしまい、変更を求めても修正していただけない状況となった為、止む終えず補助金の対象から外されてしまうという最終手段に訴えて変更していただき、事なきを得ました。


建築主とのトラブルと解決シリーズ 第3回

2012年07月25日 | 工事監理

「町つくり」修景工事で工事監理をしている中で建築主とのあいだでトラブルになった問題をシリーズで掲載します。
(工事完了時の報告書の1部を抜粋して掲載しております。)

第3回  既存のステンレス看板の切抜き文字について

  • 既存のステンレス看板の切抜き文字については設計時点から余分な費用をかける必要がないので、既存の文字を切り抜いて作成すると説明しており、審議会の説明でもその様に説明しております。
  • 御社の提示されたロゴで切り抜くとの話は打合せの時点でも全く出ておらず、「ロゴ」の袖看板の文字の見本を提示したときに突然要求されたもので、無償では出来る状況ではありませんし、納期に間に合うかどうかも問題であった為に、設計仕様の通りの制作方法を説明して、作成しました。

 制作物については事前に図面提示や打ち合わせで納期や工法デザインを確認して制作にあたりますが、突然の思いつきの変更では納期が間に合わなくなってしまう事が有り、それまで準備してきたことが無駄になってしまうなど、請負契約の履行に支障が生じてしまうため、突然の変更に対しては工期と工事代金の追加を頂くか、事前の打ち合わせに従っていただくかを選択していただくようにしています。
この問題は後者の方法で解決しました。

    


建築主とのトラブルと解決シリーズ 第2回

2012年07月24日 | 工事監理

「町つくり」修景工事で工事監理をしている中で建築主との間でトラブルになった問題をシリーズで掲載します。
(工事完了時の報告書の1部を抜粋して掲載しております。)

第2回    提示されたロゴ使用問題

  • 店舗看板用ロゴについて提示されましたが、提示されたロゴはご御社が直接手作りで作成されたものではなく、第3者の御社の役員の友人によって作成されたものであり、当事務所が提示されたロゴを設計に取り入れる為には、著作権法による製作者の文書による許諾が必要です。当事務所としては御社の了解だけでは使えない状況でもあり、そのことについては説明させていただいております。
  • 看板文字の作成に当っては、お店の看板として長年ご利用いただいていた文字が先代のおじいちゃんの書いた文字ということなので、御社の許諾にて使用可能です。御社の了解を頂いて利用させて頂きました。
  • 御社の提示されたロゴ文字については、検討の段階で、製作取り付けに当って強度と、高い位置につけると見えにくくなる等の欠陥があり、今回のデザインとしては長期間の使用や看板としての機能が充分発揮できないと説明して、現在の設置の文字で了解を頂きました。
  • 提示されたロゴにつきましては包み紙やユニフォームのロゴとしては充分デザイン的な価値があると説明し、ご自身で直接ご使用いただけるようにお願いしております。

ロゴ等の著作権に関わるデザインは作者の許諾が必要であり、建築主が作成したものでなければ、たとえ作者が口頭で了解しているものであっても、再度文書による許諾を受領しておく必要があり、今回はまさしくその類であったために、建築主の要望に沿うことはできませんでした。


建築主とのトラブルと解決シリーズ 第1回

2012年07月22日 | 工事監理

「町つくり」修景工事で工事監理をしている中で建築主とのトラブルになった問題を
シリーズで掲載します。
(工事完了時の報告書の1部を抜粋して掲載しております。)

第1回 店舗の袖看板の設置問題

 1.   隣地に対する目隠し袖看板について

  • 袖看板について設置して欲しいという要求がありまして、当事務所としても検討を行い既存のステンレス看板を利用した袖看板を考案して口頭で提案しました。
  • その後市役所の町つくり推進課との打合せの中で、「出来るだけ目立たない方法で建物と一体化するデザインにしていただきたい。」との指導があり、現設計に変更しました。
  • 又、袖看板として建物の東側に設置して隣地への目隠しとすれば、修景された建物も隠れてしまい、かえって障害になるとして2階庇の支持方杖に民家風にデザインして設置するようにしてビデオを製作して説明を行い、了解を得たつもりでおりました。
  • ビデオをご家族3人に見ていただいた時点で1階の袖看板についての異議は表明されなかった為、市に対する申請図面を作成しましたが、町つくり協定審議会の前日になって、「是非袖看板の図面を修正して、申請内容に含めなさい。」という指示をされました。
  • 既に図面も書類も出来上がっており、修正していれば審議会に間に合わないという事情もあって、ゴミ隠しの目隠しをするという理由であれば、町会全体の問題として隣地の方に片付けていただくことが先決であり、わざわざお金をかける必要はないと説明してご了解いただきました。

 隣接のお店の周囲が汚れていて、汚れを袖看板で隠したいという要望が建築主にあり、修景工事が終わってもお店が汚れているように見えてしまうので、設置を要望したもので、町ぐるみで修景工事をしている中で1件だけ汚れている店があれば、汚れている店を片付けることが先決で、設置の趣旨が違っていたために要望に対する答えとして、隣接の店主とのコミュニケーションを取って店前をきれいにしていただくことで問題は解決しました。


旧家の茶室を作りました!

2012年07月20日 | 建物雑感

建築後200年以上経った旧家のご主人から「茶室を作ってくれ!」との
依頼を受けて建設した茶室です。幸い学生時代に数寄屋の研究をしており、
茶室についてもいろいろ勉強してあったことが役立って何とか作り上げることができました。

                                          

現代で茶室の材料となるような草木を見つけることは至難の業とも思いましたが、建築主様のご理解もあって、現代の建材でも良いとの承諾を頂きながらも、できるだけ本来の侘び寂びの空間を作り出せるように努力した結果写真のような茶室が完成しました。
手を掛けてくれた大工さんも大変苦労をしていただき、出来上がりも大変良い仕上がりとなりました。

松本地方の伝統的な庄屋作りである本棟作りの母屋の広縁の先端に創ったもので面積にして、2.5坪程度の大きさですが、母屋の軒下に創りこむことで違和感のない落ち着いた雰囲気が作り出せたと思っています。
裏千家の茶道作法を教えていただきながら細かなディテールに気を使い、できるだけ往時の茶室に近つけようと試みましたが、勉強不足が足を引っ張って必ずしも建築主の思い通りの茶室になったのかはわかりませんが、私自身は満足しています。

 

 

 

 

 


建築主の予算と工事監理!

2012年07月19日 | 工事監理

我々が建物の設計を依頼されて、最初に感ずることの大きな問題は建築主が建物に掛ける費用と要望する内容とのアンバランスな状況です。

建物は一つ一つの部品を組み合わせて空間を組立てて作り上げていくものですが、すべての部品に価格が設定されており、1つの部品を変更したり、追加することで全体価格も変わってきます。個人が拠出する費用の中でも最大な費用であるため、その中でちょっとしたものであれば吸収できるのではないかと思い無頓着に追加変更をしてしまいます。

建設業者は競争見積もりになった時には、仕事を手中にするために極力無駄を省いて経費を抑えて、下請け企業に発注できるギリギリの単価で見積書を作成して、建築主に提出します。場合によってはこの時点で利益0または赤字ということもあります。このような状況で利益を捻出するために現場においては様々な詳細な打ち合わせを行い、見積時に見落としていた省力化や無駄を省きながら工事を進捗させて行きます。しかし、打ち合わせと違う仕様に勝手に変更してしまう業者もいるため、工事監理は発注金額が安い時ほど慎重に行わなければならなくなります。