建築設計について

建物を建設するときに何が大事かということを考えてみました。

建物メンテナンスについて

2012年07月02日 | 建物雑感

半年以上も更新せずに失礼しました。

最近起こったメンテナンスの件で参考になるような事例となりましたので、今後住まいを建築しようとお考えの方の参考になると思い半年ぶりに筆を執りました。

昨年11月に完成し前回ブログで紹介した住宅でとんでもないメンテナンスが発生してしまいました。

玄関の「片引き込み千本格子ガラス框戸」が突然開閉不能となってしまい、玄関が使えなくなってしまったという件です。この建具は木製建具で材料はナラ材で3ミリ透明のペアガラス入りで作成されており、重量が46kg程度になってしまうため、吊方式の金物を使って設置したものです。当事務所で工事監理をしていましたが、建具吊金物の仕様確認ができず、工務店任せにしてしまった為に、調査の結果、実際に取り付けられていた建具吊金物は30kg対応品で取り付けられていたことが分かり、重量に耐えきれず金物が壊れてしまい開閉ができなくなったことが明確になりました。

建設した工務店に現場を確認してほしいとお願いしたところ、「設計が悪いために壊れても修理もできないから、直す責任はない。」と言い放って、現場も確認せずに放置してしまった為、建築主が大変困ってしまい私どもに相談してきたものです。

設計では金物の仕様は具体的に特定しておらず、通常の範囲で機能する金物で取り付けることが工務店の常識であり、承認図も提出されなかった為我々も工務店を信頼して金物の仕様について特に問題が起きる状況ではないと思っていましたが、建具職人が建具重量と吊金物の関係を十分に考慮せずに選択してしまい、工務店の棟梁もそのことを全く注意しなかったことが原因で起こってしまった事故です。

建築主は故障については全く責任がなく、玄関が開閉できないことで大変ご迷惑をおかけすることになってしまいましたので、当事務所で現地調査の結果に基づいて修理をして、原因究明もせずに修理もせずに設計事務所に責任を押し付けた工務店には調査費と工事費を請求する手続きを取ることにしました。

今回の件の根底にある原因は、請負契約時の見積もり合わせにおいて仕事を受注しようとした工務店が、設計図から詳細に見積をせず、下請け見積もりを合計して坪単価に換算した金額で請負金額を算出しており、厳しい予算の中で賄いきれない状況となり、また、設計事務所の工事監理によって図面通りの仕様を要求されたことで工事費が赤字になって利益が出なかったことがメンテナンス費用まで賄いきれないとの状況を作ってしまったもので、新築工事の減少によって無理に工事を受注しようとしたための問題であり、予算不足が工務店としてのあるまじき行為に走ってしまったことによるものと思います。発注時や工事中の注意散漫がこのような事態を引き起こしたことについては反省していますが、工務店の責任についてはしっかり追求しなければなりません。曖昧にできる問題ではありません。

住まい作りは建築主の1世1代の大仕事です。予算が十分に取れなくても大きな夢を叶えたいと思うのは人情です。我々はそのお手伝いをすることを仕事にしており、工務店の見方をする必要はありません。人間のやることで多少のミスはありますが、最後まで、自分の子供のように可愛がって行くつもりで設計した建物を愛しんでいます。