建築設計について

建物を建設するときに何が大事かということを考えてみました。

消費税が上がったら!

2012年07月17日 | 建物雑感

今、参議院で消費税増税法案が審議されています。
小沢一郎議員がこの議案に対して反対を表明して民主党から離れて「国民生活が第一」という名称の党を作りましたが、かつての勢いはなく、むしろ野田首相のぶれずに信念を貫いたとの評価が高くなってきて、このままいけば小沢新党が多少抵抗しても消費税の増税は確実に実施されると思います。

消費税の増税は建設関係の人々にとっても大きな影響が出ますが、建築主にとっても大変重大な問題となってきます。
今までは請負契約時に消費税分くらい値引きしてよと言って値引きできていたものが、8%、10%の消費税となると請負業者の経費の圧縮だけでは賄いきれない状況となり、デフレ状況の経済状態での消費税値上げは建築主にとっても大きな痛手となってしまいます。まだ、実施時期までには多少の時間はありますから、住宅をつくろうと思っている方は駆け込みで創ることをお勧めします。
考慮中の方は決断の時期です。ハウスメーカーの住宅であれば契約までの時間はそれほど必要としませんが、独自の「住まい」として考えている方は計画から図面作製、請負契約まで時間が掛りますから、早めに決断して、設計事務所や工務店に依頼することが必要です。

建設工事費2000万円の住宅では、現在の消費税率では100万円、増税後8%では160万円、10%では200万円となってしまい建物の質にも影響が出てくる状況となってしまいます。

日本の高齢化社会に対する福祉行政の見直しということでの増税ではありますが、もう少し経済状況が好転してからでも遅くはないと思います。今の状況で増税すれば、返って民間の建設投資が少なくなって、経済が冷え込むことになってしまいます。政府には経済が冷え込むことがないように各種の景気刺激策を講じていただくように願っています。


信州松本でマンションを自由設計で取得!

2012年07月13日 | 共同住宅をつくる

マンションの部屋数や住宅設備機器、部屋の仕上げ等が区画の中で
自由に決められれば素敵ですね!

私たちはそんなマンションを北アルプスを一望できる長野県の松本市で計画しております。松本駅から徒歩6分の松本中心市街地の直近に位置した非常に便利なところです。姉歯事件に端を発した建築基準法の大改正で構造的には厳しい状況となりましたが、建物内部の間仕切りの変更については、設計事務所で予めどんな間仕切りになっても基準法に抵触しないという検討がされ、審査機関で認定を受けて建築確認ができることになり、区画内の間仕切りを建築確認時に決めなくてもよい状況になったことは、マンション購入者にとっては朗報です。

分かりやすく言えば、部屋の間仕切りを決めないでも建築確認ができるようになったということで、多少の制約はありますが、区画を決めてから購入者が自由に間取りを決められるようになったということです。これは購入者が独自の個性あふれる「住まい」をマンションの中でもライフスタイルに合わせてオプションなしでつくることができるということです。

技術的には多少厄介な問題はありますが、設計者が協力することで今までできなかったマンションの自由設計ができるようになったことは喜ばしいことです。
この建設方式は共同住宅の共有部分と各戸の内装部分が分離されますが、従来のマンションは階高さを抑えてあるため排水管の横引きができないことによって水回りの部屋位置が変えられない為に間仕切りが固定化してしまっていましたが、今回の計画は水回りを含めて自由に平面計画ができるようにしています。

内装を後から作るためには構造躯体と分離させる必要があり、分離させることで内装のリフォームも躯体とは関係なくできます。このため、中古で転売するとき、購入者は部屋の間仕切りを自身の好みに合わせてそっくりリフォームできるようになるため、内装を新しく作りかえることもできますから、環境と立地条件が良ければ、資産価値が大きく低下しないメリットが出ます。また、自身のライフスタイルに合わせて部屋数の増減も使い勝手も変更が可能です。躯体に損傷を与えないことで建物の寿命も格段に延びてきます。
このような建設方式を建築界ではスケルトンインフィル方式と呼んでいます。

また、建築確認が済むまでに時間がかかった上にその後内装設計を実施することになれば、時間がいくらあっても足りなくなってしまいますので、全体計画を含めて入居者が設計にかかわり、組合をつくって購入するというコーポラティブ方式をとることで時間も短縮でき、デベロッパーが関与しないことで、経費も抑えることが可能になります。

自分独自の個性あふれる「住まい」を一緒に作ってみませんか? 
現在参加者の募集を始めました。  
建築相談または0263-36-4320へ連絡をください。


住まい作りの原点 その2

2012年07月11日 | コンセプト

「住まいを作る」ことは必ずしも「住宅建設」と同義語ではありません。

「住まい」とは何かと考えた時、それは物理的な建物を指すのではなく、そこに生活する家族の結びつきや家族愛があり、そこにいる家族の精神的支えとなって安心感を与え、子供たちを大きく成長させる空間であると思います。

今、いじめの問題でTVや新聞報道がされていますが、いじめをする子もいじめをされる子も家庭環境が必ずしも愛情の満ちた状況でないことがあります。私の長男も一時期いじめられたことがありましたが、親が子供の発する注意信号を早めにキャッチすれば、自殺をするまで追い込まれることはないと思います。いじめる子にしても普段から親の愛情がしっかり注がれている子はいじめをするような状況にはならず、むしろ、庇うことができる正義感の強いやさしい性格の子に育っていくと思います。親が生活に汲々として余裕のない生活の中ではなかなか中学生の子供のことまで気をかけてやることはできませんが、せめて憩いの空間を作ることで子供に接する時間を取るようにすれば、それぞれの気持ちが通じ合って、人の気持ちが分かる子になると思います。

このような環境を作りをするには家をつくるような家族の大事業を行うときがちょうどよい切っ掛けになります。
家を作るときには子供部屋や居間、台所、老人室、水回り等の生活のすべてを家族が寄り集まって一生懸命に考えるようになるからです。普段何も言わない子供たちが自分の部屋をどのようしたいかを親にお願いすることで親や兄弟とのコミュニケーションをとり、親は子供たちの成長の過程を考え、どのように育てていくかを考えて、経済的な安定も考慮して使い勝手の良い家の平面計画を考えて作るろうとします。 このような家族全員の考え方を建物に反映させることで家族の意思疎通が図られて建設される建物には愛着が生まれ、家族の居所として位置つけられ、子供が成長してその家を出た後も、心のよりどころとしての自宅となるような空間が「住まい」といえる住宅かと思います。

私はそんな「住まい」を作るためのお手伝いができることを喜びとしております。


ジャズと空間のコラボレーション

2012年07月07日 | コンセプト

 

  

長野県北安曇郡松川村に建設したジャズ喫茶です。
オーナーが若いころから趣味で収集したジャズレコードを聞く施設として趣味と実益を兼ねて建設したものです。

ジャズ喫茶ということで音楽を聴く為の部屋と喫茶店というコミュニケーションの場としての部屋を結び付けて、より良い空間として存在させるための音楽とコミュニケーションの結び付き、喫茶店として機能させるための社会との結びつきを良くするための装置を結界空間として作り出そうと試みた建物です。

音楽を聴くための装置では外部からの雑音と建物内部の雑音に注意することが重要です。特にスピーカーから出る重低音の振動が建物の各部に伝わった時にその振動が雑音になってしまいます。
この建物では特に重低音が建物各所に伝播させないようにする為、スピーカーを置くステージ部分の基礎を他の基礎とは完全に分離して振動が伝わらないようにし、壁はステージ以外の壁を平面曲線として、天井は垂木および野地板表しの直仕上げとして無駄な反響をさせないように空間を作り出しており、壁は吸音材を埋め込み、有孔ボード下地の上にクロスを張って仕上げています。 

地域の中でジャズ喫茶として位置つけることはなかなか難しい問題で、ジャズ喫茶を外観でイメージつけるような形態をとれば、返って違和感が出てしまうと思い、一見和風住宅風な雰囲気を醸し出す形とすることで、地域に溶け込ませ、玄関周りに日本人が好む結界空間を作って、地域との人々に好まれる空間にしたことで、誘客装置として十分に機能しています。

音に気を使った空間構成ができたことで、外観からは想像の出来ない豊な空間の広がりがうまれ、ジャズ音楽とのコラボレーションができ、そこに身を置く人々を豊潤な世界に導くことができたと思います。また、人々はジャズ音楽を聴くことを目的として訪れるばかりではなく、その豊な空間の中でジャズ音楽をバックグラウンドとして、マスターのおいしいコーヒーを飲みながらのコミュニケーションの場として地域の憩いの場として利用しています。

地域と空間とジャズ音楽が見事にコラボレーションして地域に密着して安定した経営の店舗として成功しています。


建物メンテナンスについて

2012年07月02日 | 建物雑感

半年以上も更新せずに失礼しました。

最近起こったメンテナンスの件で参考になるような事例となりましたので、今後住まいを建築しようとお考えの方の参考になると思い半年ぶりに筆を執りました。

昨年11月に完成し前回ブログで紹介した住宅でとんでもないメンテナンスが発生してしまいました。

玄関の「片引き込み千本格子ガラス框戸」が突然開閉不能となってしまい、玄関が使えなくなってしまったという件です。この建具は木製建具で材料はナラ材で3ミリ透明のペアガラス入りで作成されており、重量が46kg程度になってしまうため、吊方式の金物を使って設置したものです。当事務所で工事監理をしていましたが、建具吊金物の仕様確認ができず、工務店任せにしてしまった為に、調査の結果、実際に取り付けられていた建具吊金物は30kg対応品で取り付けられていたことが分かり、重量に耐えきれず金物が壊れてしまい開閉ができなくなったことが明確になりました。

建設した工務店に現場を確認してほしいとお願いしたところ、「設計が悪いために壊れても修理もできないから、直す責任はない。」と言い放って、現場も確認せずに放置してしまった為、建築主が大変困ってしまい私どもに相談してきたものです。

設計では金物の仕様は具体的に特定しておらず、通常の範囲で機能する金物で取り付けることが工務店の常識であり、承認図も提出されなかった為我々も工務店を信頼して金物の仕様について特に問題が起きる状況ではないと思っていましたが、建具職人が建具重量と吊金物の関係を十分に考慮せずに選択してしまい、工務店の棟梁もそのことを全く注意しなかったことが原因で起こってしまった事故です。

建築主は故障については全く責任がなく、玄関が開閉できないことで大変ご迷惑をおかけすることになってしまいましたので、当事務所で現地調査の結果に基づいて修理をして、原因究明もせずに修理もせずに設計事務所に責任を押し付けた工務店には調査費と工事費を請求する手続きを取ることにしました。

今回の件の根底にある原因は、請負契約時の見積もり合わせにおいて仕事を受注しようとした工務店が、設計図から詳細に見積をせず、下請け見積もりを合計して坪単価に換算した金額で請負金額を算出しており、厳しい予算の中で賄いきれない状況となり、また、設計事務所の工事監理によって図面通りの仕様を要求されたことで工事費が赤字になって利益が出なかったことがメンテナンス費用まで賄いきれないとの状況を作ってしまったもので、新築工事の減少によって無理に工事を受注しようとしたための問題であり、予算不足が工務店としてのあるまじき行為に走ってしまったことによるものと思います。発注時や工事中の注意散漫がこのような事態を引き起こしたことについては反省していますが、工務店の責任についてはしっかり追求しなければなりません。曖昧にできる問題ではありません。

住まい作りは建築主の1世1代の大仕事です。予算が十分に取れなくても大きな夢を叶えたいと思うのは人情です。我々はそのお手伝いをすることを仕事にしており、工務店の見方をする必要はありません。人間のやることで多少のミスはありますが、最後まで、自分の子供のように可愛がって行くつもりで設計した建物を愛しんでいます。