一歩先の経済展望

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強めの企業物価と共通事業所賃金、9月以降の日銀利上げへ整いつつある環境

2024-07-10 09:52:30 | 経済

 日本の消費者物価(CPI)の動きを先取りすることが多い国内企業物価(CGPI)が、円安などの影響を受けて再び上昇基調を強めている。また、日銀が重視している毎月勤労統計の中の共通事業所による賃金データが5月に目立って上昇し、この先の消費拡大に明るい兆しが出てきている。賃金データはまだ、先行きを見極める必要があるものの、筆者は日銀が9月以降の利上げ検討を本格化させる環境が整いつつあるとみている。

 

 <円安で再加速する輸入物価の上昇>

 日銀が10日に発表した6月の国内企業物価指数は、前年比プラス2.9%と5月の同2.6%から伸びが加速した。ドル/円の月中為替レートが157.9円と円安に振れ、円ベースの輸入物価指数が同9.5%と5月の同7.1%からさらに伸び率を高めたことが大きく影響した。

 CGPIの上昇率加速は数カ月間のタイムラグを伴ってCPIに波及するため、輸入物価上昇を起点にした物価上昇の動きは緩和方向に向かっているとみていた日銀の見方を変える可能性がある。6月の金融政策決定会合における主な意見の中で、ある委員は輸入物価の上昇に関連し「2024 年後半に向けて価格引き上げの波が再び生じる可能性もある」と指摘していたが、今回のデータはそうした見方が正しかったことを裏付けたと言えるだろう。

 

 <5月共通事業所給与、伸び率拡大>

 一方、5月の毎月勤労統計で実質賃金は26カ月連続でマイナスを記録したが、日銀が重視している共通事業所による一般の「決まって支給する給与」は4月の前年比プラス2.0%から5月は同2.7%へと大幅に伸びた。今年の春闘における賃上げ率は、連合によると、33年ぶりの5%台乗せとなる5.10%だった。

 ただ、4月の毎勤統計では大幅賃上げが反映されていなかったため、その原因や先行きについて市場関係者の間で多様な見方が交錯していた。5月のデータが強めに出たことで、日銀は先行きの消費回復のプロセスに自信を深めるのではないか。

 先々のCPI上昇率や賃金上昇率の高まりが見通せるようになれば、現在の0.1%の政策金利は緩和効果が強すぎると日銀が判断する可能性が高まる。言い換えれば、日銀にとって次の利上げの環境が整いつつあると筆者は考える。

 

 <7月利上げには距離>

 ただ、共通事業所による一般の「決まって支給する給与」のデータが1カ月だけ伸びても、基調を判断するにはデータが足りないということになるとみられ、7月利上げの結論に日銀が到達しそうだと考えるのは尚早だ。

 また、5月の家計調査では、2人以上世帯の消費支出が29万0328円と前年比マイナス1.8%と落ち込んでおり、賃上げの効果が消費押し上げに波及するのかどうかは、この先のデータで確認する必要がある。

 したがって物価と賃金、消費などの統計をさらに見つつ、日銀は9月以降に利上げの検討を本格化させるのではないか。


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