30-31日の日銀金融政策決定会合に対する市場の注目度が高まっている。仮に国債購入の減額計画公表とともに利上げを決めた場合、市場の織り込み度合いが低いため、ドル/円が150円近辺までドル安・円高方向に振れ、それを受けて日経平均が下落に転じるのではないかとの観測が出ている。利上げ見送りの場合は、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見での発言にマーケットの関心が集中し、年内の米利下げのペースをめぐる思惑次第で市場価格が変動しそうだ。
<国債購入の減額幅、月額3兆円は市場に織り込み>
29日の東京株式市場で日経平均株価は9日ぶりに大幅反発し、2.13%高の3万8468円63銭で取引を終了した。9月の米利下げを織り込みに行った米株式市場の上昇を受けて、買い戻しが優勢になった。
市場関係者の話しを総合すると、このまま日本株の買い戻しが継続するかどうかは、やはり31日に公表される日銀の金融政策の結果が大きなポイントになりそうだ。
日銀は6月の決定会合で、国債購入の減額計画を7月会合で決めると公表。その後の市場参加者が参加した会合での発言内容などから、月額6兆円の購入額が1年半から2年の減額計画の終了時に3兆円程度に減額されているなら、市場に織り込まれているので大きな変動はない、との認識がマーケットで形成されつつあるようだ。
したがって減額幅が3兆円前後であれば、それを材料に円債市場や外為市場が大変動するリスクは低下しているとの見方が多くなっている。
<同時利上げ、低い市場の織り込み度合い 150円方向の円高か>
ただ、減額計画と同時に利上げが決まった場合、市場の織り込み度合いが低いため、市場変動が相対的に大きくなるとの声が市場の一部に出ている。まず、反応しそうなのはドル/円で、足元の153円前半から150円近辺まで急落し、一時的には150円を割り込む展開もあると想定している市場関係者もいる。
円高が日本株を押し下げる展開になるのは、すでに前週に経験しており、日経平均の下値が切り下がり、3万7000円台での取引になる可能性を指摘する市場参加者もいる。
<利上げ見送りなら、植田総裁の発言が最大の注目点に>
一方、国債購入の減額計画公表との同時利上げを見送った場合は、植田和男総裁の会見での発言に内外の注目が集まることになる。
その場合のポイントは、1)9月利上げの可能性をどの程度にじませるのか、2)9月利上げの可能性を高める経済指標は何か、3)今後の利上げのペースをどのように考えているのか──という点になる。
また、足元の国内景気が一進一退になっていることを示すかもしれない2024年4-6月期(国内総生産)の1次速報が8月15日に発表されるが、日銀の政策判断における位置づけはどうなるのか、といった点についても植田総裁がコメントすれば、関心を集めるだろう。
複数の市場関係者は、利上げ見送りの場合の市場反応は、植田総裁の会見での発言内容次第でかなり展開が異なるのではないか、との見方を示している。9月利上げの可能性をかなり強く印象付け、さらに今後の利上げペースも市場の一部でささやかれている半年に1回ではなく、もっと速いペースになる可能性が示唆されれば、相応の値幅の円高・株安という反応があり得るとの声もある。
<米利下げペース、パウエル議長はヒント与えるのか>
しかし、今後の「経済データ次第」というようなあいまいな表現になるなら、大きな価格変動がないまま、同じ日の米連邦公開市場委員会(FOМC)の結果とパウエル議長の会見にマーケットの注目が移行する公算が大きいと話す。
米市場では、9月、11月、12月の年内3回のFOМCに関し、すでに2.7回分の利下げを織り込んでおり、一部では織り込みが過剰との指摘も出ている。パウエル議長が9月の利下げの可能性だけでなく、その後の利下げペースについてどのような見解を示すのか。発言次第でドル/円が上下に振れることも十分にありえる。
日米中銀イベント後の市場の風景がどのようになっているのか、2024年後半を占う上で大きなポイントに差し掛かってきた。