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中国、資産デフレに有効打なし 経済低迷長期化も

2024-07-23 11:58:09 | 経済

 資産デフレの様相を強くしている中国経済に対し、画期的な政策対応が示されると期待されていた中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)での決定内容が21日に明らかになり、中国の株式市場は「失望」で反応している。上海総合指数は22日に続き、23日も続落して重苦しいムードに包まれている。 

 中国人民銀行が22日に追加利下げに踏み切ったものの、0.1%の小幅にとどまり効果が限定的と見切られたことも市場心理を圧迫している。日本などの経験を踏まえれば、そもそも利下げは資産デフレへの「特効薬」にはなりえず、不良債権処理のための巨額な公的資金の注入が不可欠だが、三中全会で示された対応策に「切り札」はなく、資産デフレを起点にした中国経済の停滞が長期化する可能性が浮上してきたのではないか。日本から見れば、対中輸出の伸び悩みが続き、中国依存度の高い企業の今年度下期の業績に暗い影を投げかける展開になると予想する。

 

 <三中全会、公的資金の追加投入打ち出さず>

 三中全会で決まった政策対応の中で、焦点になっていた不動産不況への対策では、1)住宅関連の規制実施の権限を中央から地方に移し、規制緩和を柔軟に実施する 2)税の配分見直しで地方の財源を増やす──などが盛り込まれた。

 だが、問題の核心は不動産関連事業などで積み上がった未着工物件など不良債権の処理を進め、最終的には住宅価格の下落を止めることだが、それには追加の財政資金投入が不可欠。しかし、そこには全く言及がなかった。

 中国政府はすでに償還期限50年の超長期特別国債の1兆元(1380億ドル)発行を打ち出し、今後も数年間は毎年、特別国債を発行する計画を示しいている。だが、これで調達したマネーは、半導体や電気自動車(EV)、人工知能(AI)など先端産業の振興、食糧安全保障の強化策に充てられ、資産デフレの解消に向けた公的資金の注入などは対象外となっている。

 地方政府の財源を増やすとしているが、中央と地方を合わせた不良債権解消のための財源そのものが拡大するかどうかには言及がない。もし、財源のパイが増えないままで地方への税源移譲を実行に移しても、資産デフレの解決には寄与しないだろう。

 実際、地方政府のインフラ投資にかかわっている融資平台(LGFV)の債務残高は、国際通貨基金(IМF)の試算によると、2023年末に中国の国内総生産(GDP)の48%を占めるまでに膨張している。

 資産デフレの解決には長い時間がかかってしまうが、不良債権の処理を進めつつ、不動産価格の底値を確認し、そこから不動産取引が再拡大して、資産価格の下落→消費低迷という悪循環を止めるというアプローチが正攻法だと考える。

 

 <CPIとPPIが示すデフレの予兆>

 今のところ、中国当局はそこには目をつぶって生産増による刺激で経済を活性化させようとしている。ところが、資産の目減りを懸念する消費者は、財布のひもを固くするばかりで、増産された消費財は売れずに在庫が積み上がり、値下げに走るという悪循環を生み出そうとしている。

 この現象は、経済統計を見れば明らかだ。6月の主要70都市の新築住宅価格動向をみると、64都市で前月比マイナスとなり、70都市の平均は前月比マイナス0.7%だった。6月の消費者物価指数(CPI)は前年比プラス0.2%にとどまり、6月の生産者物価指数(PPI)は前年比マイナス0.8%だった。

 

 <悪手だった小幅利下げ>

 筆者の目から見ると、患者の治療方法を誤っており、このままでは資産デフレはじわじわと進行し、中国のCPIとPPIは今年後半に向けてデフレの色彩を強めるだろうと予想する。

 また、中国人民銀行が22日に発表した小幅の利下げは、かえって当局の手詰まり感を露呈してしまったと言える。期間1年と5年の最優遇貸出金利(LPR)を0.1%引き下げたが、小幅にとどめたのは人民元の対ドル急落を避けたいとの考えが透けて見えてしまった。つまり、効果のない政策の「逐次投入」という「悪手」を指してしまったのではないか。

 資産デフレから抜けられなくなり、経済全体にデフレ圧力がかかると、金融政策がうまく機能しないためにマクロ経済政策が効果を出さなくなるというのは、日本が1990年代以降に経験しており、中国当局が最も研究を深めてきた分野でもあるはずだ。ところが、その研究の成果が生かされていないのはなぜなのだろうか。

 

 <対中ビジネスの比重高い日本企業に逆風か>

 中国経済の失速にも似た経済低迷が今年後半からマーケットの注目を集め始めた場合、起きる現象は何か。日本から見れば、対中輸出の伸び悩みが鮮明になるだろう。特に輸出数量の落ち込みが目立つことになるというのが悪いシナリオの顕現化と言える。

 対中ビジネスの比重が高い企業の社内では、すでに水面下で「警戒警報」が鳴っている可能性もある。もし、筆者の予想通りの展開になれば、2025年は「チャイナリスク」が意識されることになりかねない。


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