9日の東京株式市場で日経平均株価が史上最高値を更新し、午後には4万1600円台で取引されている。今年1-3月期の国内総生産(GDP)が前期比・年率マイナス2.9%と落ち込んで実体経済が低調な中での株高は、マネーゲームによる「出遅れ日本株」に対するホットマネーの流入と言えそうだ。
<アジア系CTAの買いがトリガーに>
9日午前の取引で日本株が急上昇したのは、アジア系CTA(商品投資顧問業者)の買いがトリガーになったようだ。
もともと10日にはETF(上場投資信託)の分配金ねん出のための日本株売りが予想されていたが、9日午前にはその売りを意識した早手回しの売りが散見されていた。市場関係者によると、そこを狙いすましたようにアジア系CTAから大量の買い注文が入り、相場は一気に買い優勢に傾いたという。
ただ、日経平均が高値追いの展開になるのとは対照的に、日本経済は停滞色を強めている。今年1-3月期のGDPはマイナス2.9%に落ち込み、反動増が予想されていた4-6月期も消費の低迷などで内需の盛り上がりに勢いがなく、輸出の伸びも予想を下回っており、当初予想されていた大幅なプラスは難しくなっている。
<海外勢にとって円安で割安な日本株>
実体経済とかい離した株価の大幅な上昇を支えているメカニズムは何か──。1つは、円安の進展によってドルベースで取引している海外勢には、日本の株価が割安に見えるということがある。日経平均株価の中で大きなウエートを占める製造業は、この円安で会計上の収益が膨らみ、海外勢にとっては、収益が伸びる日本企業の株を割安で買えるメリットがある。
<自社株買いや増配のメリット>
2つ目は、日本企業の進めてきた自社株買いや増配によって、日本株を買うメリットが大きくなっているということがある。ここでも海外勢はドルを円に換えて高配当の日本株を購入すれば、それだけで高水準の利益を獲得できる環境ができている。
<米欧中に懸念材料、消去法の日本株買い>
3つ目は、足元における米株高への警戒感、英仏に代表される政治不安、中国の資産デフレと景気減速への懸念、中国とのつながりが大きいドイツや東南アジア諸国の景気不透明感の強まりなど、国際分散投資を行っている投資家にとって不確実性が高まっているということがある。そこで、消去法的に日本株買いを進めている海外投資家が増えているようだ。
<利下げのFRBと利上げの日銀>
4つ目は、この先における米連邦準備理事会(FRB)の利下げと日銀の利上げが予想される中で、ドルを保有している投資家からみれば、円安がさらに進んで為替でロスを生じるリスクが減っている、ということもある。
以上、大まかに4つの理由を背景として、国内勢の想定を超えた日本株買いが、これから本格化する可能性がある。
また、4つ目の理由と関連して、日銀の利上げを前提に日本の銀行株上昇の可能性が高まっているとの見方も、海外投資家の日本株物色を強める要因にもなっているという。
マネーゲームの様相が濃くなっているため、日米の経済データとはあまり関連なく日本株が買われる可能性が高まっており、多くの企業で中間決算期末を迎える9月末には、日経平均株価が4万3000円を突破している展開も十分にあるだろう。
同時にホットマネーの動きであるがゆえの急速な巻き戻しも、どこかの時点で発生するリスクがある。それが、いつ、どこで起きるのかは、日本発ではなく、米大統領選の動向やFRB高官の発言など米国発の材料で起きる公算が大きいと予想している。
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