24日の当欄で懸念していた事態が、早くも24日のNY市場と25日の東京市場で現実化した。膨らんでいた円ショートポジションが、いくつかの材料で巻き戻され、日経平均は高値から4500円超の下落となって3万8000円を割り込んだ。すでに指摘したとおりにボラティリティの上昇が円高を誘発したが、米ハイテク株に買い戻しの動きが出たところで、短期的な株安と円高もいったん止まると予想する。そうなるのかどうかは、米連邦準備理事会(FRB)による9月利下げの可能性と米大統領選の情勢が大きな要素になると指摘したい。
<日本株安誘発した円高>
25日の東京市場では、久しぶりに円高を起点にした日本株の大幅下落が大きなうねりを見せた。日経平均は3万7869.51円まで下げて引けた。直近高値の4万2426.77円から4557.26円の下落となった。チャート的にも主要な移動平均線を下抜けし、どこで止まるのかという「恐怖心」も一部で見受けられる。
今回の株下落は円高の進展が誘発した構図になっており、日経平均の下値の確認は円高がとまるかどうかにかかっている。
<10%台に上昇したボラ>
24日の当欄でも指摘したが、161円台まで進んだ今回の円安の原動力は円キャリートレードだった。低いボラティリティ(価格変動率)の持続が円キャリートレードを後押ししてきたが、25日の1カ月物のドル/円ボラティリティは10.4%まで上昇。キャリートレードは影を潜めている。
したがって足元で円売りのパワーは大幅に低下しており、ドル高・円安方向への反転が直ちに見込める地合いにはなっていない。
<米ハイテク株、買い戻しの時期を探る>
他方、米ハイテク株の調整売りが一服し、切り返す展開になれば、米株式市場を覆っている不透明感が薄れ、タイムラグを伴ってドル/円のボラティリティ低下に波及することも予想される。
米ハイテク株には「上がりすぎ」の懸念が付きまとっていたが、そこに「確トラ」の思惑によるトランプ・トレードの表面化で、ハイテク株売り・エネルギー関連株買いの大きな流れが押し寄せ、ハイテク株の調整を本格化させた面がある。
もし、米大統領選でハリス米副大統領が事前の想定を超えてトランプ前大統領に対して優位に立っているとの世論調査が出てくれば、トランプ・トレードの巻き戻しを誘発し、ハイテク株が買い戻される展開もありえる。
その場合、ドル安・円高の動きが止まるだけでなく、米ハイテク株の影響を受けやすい日本の半導体関連株などのハイテク銘柄にも買い注文が戻り、今回の下げ相場の底値を確認する局面に入る可能性もある。
さらに今後の米経済指標の発表につれ、9月米利下げの観測がさらに高まれば、上記で指摘した米ハイテク株の買い戻しを後押しし、日本のハイテク株にもプラスの影響が波及することになるだろう。
<152円台の円高、2回の米利下げと1回の日銀利上げを織り込んだ可能性>
米短期市場では、すでに年内2.6回分の米利下げが織り込まれており、152円台までの円高は、すでに米利下げを相応に織り込んでいるのではないか。一部で7月の日銀利上げを示唆する報道があり、これも25日までの円高の材料の1つとして意識されていた。
言い換えれば、152円台のドル/円は、2回分の米利下げと1回分の日銀の利上げを織り込んでいるとみなすこともできる。
当面の日経平均の下値めどと円高の天井値は、そう遠くない時期に確認できるのではないか、と筆者は考える。
<日銀、株安をどう判断するのか>
にわかに注目されてきた7月の金融政策決定会合における日銀利上げの可能性だが、4000円を超える日経平均の下げは、個人や企業の心理にマイナスの影響を与える可能性があり、それを見極める必要性も浮上してきたのではないか。
7月に利上げを決めるメリットよりも、慎重に見極めることで得られるプラス効果のほうが大きいようにみえる。
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