忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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忍之スカルプケア体験記・完全版

2023年04月01日 | 忍之日記


▼「忍之スカルプケア体験記・完全版」

ちょうど一年前の今日、何か気楽に書けるミニコーナーでもと思い
スカルプケア体験を不定期日記にしたところ、思いの外多くの反響をいただき半年ほどかけて書き終えた。
初回からちょうど丸一年を迎えたエイプリルフールの記念に、過去の日記を1本の記事にまとめてみた。
そのまま繋げると膨大なので、一部削ったり修正したりしている。




▼「スカルプケアとは信仰心である」その1:鑑定士と顔のない依頼人


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私は持病を複数持っている。
常時10種類前後の薬を服用しているのだが、昨年(2021年)の夏頃に症状が悪化し
「入院しますか」「それだけは嫌です」の押し問答を繰り返しながら
薬の量を増やしてごまかしていたところ、ある日、シャワー時に抜け落ちる髪の本数が
どどんと増えていることに気づいた。
髪の毛は本来、健康な人でも毎日50本から100本ぐらいまでは抜けると聞いたことがある。
換毛期はこの限りではなく、もう少し増えても正常の範囲らしい。
ただ私の抜け毛は明らかにそのレベルではなかったので
意を決して近所にあったスカルプケアのサロンに予約を入れた。
老いに対して抗うつもりはない。この抜け毛が加齢によるものなのか、
頭皮の炎症や薬の副作用によるものなのかをはっきりさせたかったのだ。
加齢ならすっぱり諦めるし、皮膚トラブルなど原因がはっきりしていて
治療の余地があるのならケアの方法を教わりたかったのである。

ビルの一室で営業するサロンは、ドアの前に立っても何の店かわからないほど簡素な作りだった。
完全予約制を謳っているのは、コロナのことを考えてか、他の客と顔を合わせないための配慮だろうか。
予約の時間になり、電話で受けた説明の通りにインターホンを押してしばらく待っていると
「どうぞお入りください」と声が聞こえ、恐る恐るドアを開けた。
少し緊張しながらスリッパに履き替えてその場に立っていると
姉妹漫才師として関西では絶大な人気を誇る海原やすよともこのやすよにそっくりな女性が白衣姿で登場。
「こちらで少しお待ちくださいねー」(話し方まで似ている)と待合室に案内される。
中に入り、私は思わず息を呑んだ。
壁面いっぱいに、サロン利用者と思しき人々の「毛量の変化の歴史」が貼り付けてあったのだ。
私は思わず、映画「鑑定士と顔のない依頼人」のポスターを思い出した。
ただしこちらは、全員後頭部しか写っていなかったが。


*映画「鑑定士と顔のない依頼人」より

「お待たせしました、どうぞー」向こうからやすよの呼ぶ声がする。
私は壁面の後頭部達に「行ってきます」と声をかけ、待合室を後にした。



▼「スカルプケアとは信仰心である」その2:プロフェッサーX

前回の日記のコメント欄で「なぜ病院ではなくスカルプケアを選んだのか」という質問があったので
本題に入る前にまずは答えておきたい。

私はかれこれ十数年皮膚科に通っていて、髪の毛が抜け始めてまずは皮膚科で相談を受けていたのだ。
柔和な顔と語り口、確かな知識と技術を備えた名医なのだが
ご高齢のため週に3日ほどしか診察日がなく、待ち時間が長いのが玉に瑕。
先生はスキンヘッドで、雰囲気でいえば「X-MEN」のプロフェッサーX
(ジェームズ・マカヴォイではなくパトリック・スチュワート)に近い。


*「X-MEN」シリーズでプロフェッサーX役を務めたパトリック・スチュワート

X「忍さん、今日はどうされましたか?」

私「はい、実はかくかくしかじかで髪の毛が急に抜け始めまして」

X「ほう、それは大変ですね」

私「いえ、大変というわけではないんですが、何か皮膚トラブルも関係しているのかなと」

X「何か自覚症状はありましたか」

私「いえ特には・・強いていえば少し頭皮が痒いぐらいですかね。でも今夏ですし」

X「ちょっといいですか」(立ち上がって私の髪をかき分け頭皮をチェックする)

私「何か異常がありますか」

X「ないですね。綺麗なもんです。赤みもありませんし、頭皮は健康な状態ですよ」

私「(ホッ)では大丈夫ですかね」

X「いえ、実は私も抜け始める前に原因不明の痒みがあったんです。
 因果関係はわかっていませんが、私と同じならこうなる予兆かもしれませんね」

悪戯っ子のような笑顔と共に自身の頭上を指差す先生を見つめながら
「そうか、私もついにプロフェッサーXになるのか。
先生がパトリックなら私がマカヴォイというわけか」などとぼんやり考えているうちに診察は終了。
1分ほどのやり取りであっさり結論が出たはいいものの、先生にも確証はないらしく
「気になるようでしたら専門のサロンなどを訪ねてみてもいいかもしれませんね」と
トスをあげていただいたので今回のサロン予約へと繋がるのである。



▼「スカルプケアとは信仰心である」その3:永遠に美しく

「お待たせしました、どうぞー」

案内された診察室にも、控え室と同じように壁面いっぱいに利用者の写真が貼ってあった。
女性の座るデスクの左側にはデスクトップ型のPCがあり、そのすぐ横の壁には
服装からしてもまだ20代と思しき青年の1ヶ月ごとの変化を表す写真が
月の満ち欠けのように順に並べて貼られていて、ちょっとした絵巻状態になっている。
直近の日付の彼は、一番古い2年ほど前の写真とは比べものにならないほどフサフサしている。
「彼がここでの最大の成功者なのだろうな」とぼんやり考えながら写真を眺めていると
私の目線に気づいたやすよが、どうだとばかりに自慢気な表情を見せて

「すごいでしょ、彼」

と、営業トークを開始する。

や「彼は努力しましたからね、、、最初はどうなることかと思ったけど
  根気強く通ってくれたんです。週に2回、富山から」

私「え?富山ですか?」

や「ええ、富山です。ネットで探して偶然見つけたみたいで
  『もうここしか無いと思って』って頼ってきてくれはったんです。
  地元でも様々な施術を試して、全部効果なかったらしいんですよー。
  そこまで言われたら、私も手ぶらでは返せませんでしょう?
  頑張りましたよ、彼と一緒に。」

遠い目をしながら写真を眺めるやすよ。
この写真は、手を取り合って頑張った二人の記録なのだ。

や「あなたも彼ぐらいの強い意志があれば大丈夫ですよ。(にっこり)」

予約の電話で事情は説明したはずなのだが、どうもやすよは覚えていないようだった。
私は確かに相談には来たが、体重減少と共に猛烈に髪が抜け始めたので、
専門家に頭皮の状態を見て欲しくてこのサロンを訪れているのだ。
電話口で「老化が原因なら素直に受け入れます」とも伝えてある。
しかし、やすよはそんな私の諦めの早さが許せないようだった。

や「忍さん、あなたまだ●●歳じゃないですか。諦めるのは早すぎますよ。
  うちにはね、70歳を超えて通ってらっしゃる方がいますよ。
  旦那さんが治療中で、毎回奥様とお二人で来られるんです。
  『いつまでも妻にとって男でありたい』って仰って・・・
  素敵やと思いません?私はすっごく素敵やと思います!」

私「素敵ですね。
  その方の努力は素晴らしいと思いますが、私はそこまで老いに逆らうつもりはないんです。
  小汚い年寄りにはなりたくないなとは常々思っていますから、
  日常生活で実践できる程度の、食事のバランスを気をつけるだとか、
  陽射しの強い日の外出時には日焼け止めを塗るだとか、最低限のことはやっていますよ。」

や「それはやって当たり前のことなんですよ。
  頭皮改善はそこを『最低線』として、そこからの話なんです。」

どうもこのサロンはスパルタ方式らしい。
少し話が逸れるが、昔義兄が「アデ●ンス」にかつらを作ろうと相談に行った時に
二言目には「でも、要るんですよね?」と高圧的なセールストークを展開され
こんな屈辱的な思いをするぐらいならつるつるでいい!と割り切って
カツラを作らないと決めたと聞いたことがある。
しかし、そういう考えはやすよにとって「逃げ」にしか映らないのだろう。


*映画「永遠に美しく」よりブルース・ウィリス、コールディ・ホーン、メリル・ストリープ

私は、映画「永遠に美しく」でブルース・ウィリスが演じたアーネストでいたいのだ。
老いに抗い美に固執する女たちにヤレヤレとボヤきながら、与えられた人生を全うしたら潔く去りたい。
そうでなくても骨も歯も肌も衰えてきているに、髪だけフサフサを望んだところで何になるというのか。

や「とりあえず、問診票出してもらえます?」

そうだった、待合室で問診票を渡されたのだった。
いよいよここからカウンセリングが始まるらしい。



▼「スカルプケアとは信仰心である」その4:キャル・ウィーバー


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や「とりあえず、問診票出してもらえます?」

待合室で問診票を渡されたことを思い出し、慌ててやすよに手渡した。
設問は「ここにチェックを入れると注意されるのだろうな」と予想がつく
わかりやすいものばかりだった。

・煙草は吸うか(吸っていたら禁煙を申し付けるんでしょ?)
・お酒は週にどのぐらい嗜むか(酒量が多ければ減らせと言うんでしょ?)
・好きな食べ物にチェックを入れよ(油物や刺激の強いものに入れると控えろと言うんでしょ?)
・就寝時間は何時ぐらいか(遅ければ以下略)
・睡眠時間はどのぐらいか(短ければ以下略)
・1日の運動量はどのぐらいか(少なければ以下略)
・シャンプーの頻度はどのぐらいか(朝シャンだと以下略)
・普段使用しているシャンプーの銘柄(界面活性剤が入っていたら以下略)
・両親や祖父母など家系的に薄毛はいるか(いたら以下略)
・持病の有無と毎日飲んでいる薬


私の場合、持病の潰瘍性大腸炎が悪化しないように
食事は全体的に肉類が少なめで野菜と魚がメインになっている。
油物や刺激物も極力控えているので、チェックを入れた好物はうどんぐらいだった。
煙草は高校生ぐらいの頃にイタズラ心で一度吸った以外は全くやっていないし興味もない。
酒はショットバーで働いていた頃に毎晩浴びるほど飲み、
20代前半で「あなたもう一生分飲みましたよ」と医者に言われてから
5年ほど肝臓を休め、今では月に2、3回嗜む程度にしている。
ウォーキング生活を始めてからは大体23時までに就寝し、午前6時起床で1時間ほど歩くのが日課。
体脂肪はだいたい14〜5%、BMIは22台をキープしている。
自分で言うのも何だが、年齢の割にはそれなりに気を遣っている方だと思う。

*この3ヶ月後に新型コロナウィルスに感染してしまい
 2023年4月現在も後遺症で疲れやすさと微熱が未だに取れていないために日課は止めてしまった。
 いつかまた再開したい。



*映画「ラブ・アゲイン」のライアン・ゴズリング(左)とスティーブ・カレル(右)

当BLOGでも何度か紹介した映画「ラブ・アゲイン」の中で
冴えない中年男のキャル・ウィーバー(スティーブ・カレル)が若いイケメンのライアン・ゴズリングから
指導を受けて小ぎれいになっていく様を見て、「元のパーツがどうでも、服装や気の配り方次第で
印象を良くすることは出来るのだな」とかすかな望みを発見し、
パッと見て「だらしないな」と思われるような格好だけはすまいと心に誓ったのだった。
(もちろん、気を抜くことも多々あるが)

問診票を眺めているやすよは少し悩んだような表情をしている。
「ふふふ、どうだ突っ込むところがないだろう」とほくそ笑む私。
しばらくの沈黙の後、やすよが口を開いた。

や「うどん、、、辞めましょか」

私「うどんですか?」

や「ええ、糖質の過剰摂取は薄毛の原因になるので」

私「私は好物とは書きましたが、だからと言ってうどんを毎日食べているわけではないですよ」

や「でもお米やパンも食べるんでしょう?」

私「それはまぁ、確かに・・・」

や「うどんもですけど、炭水化物全般がダメなんです。
  食事のコントロールはスカルプケアの第一歩ですよ」

私「うーん、そこにも書いてますが私は複数の持病がありまして
  そうでなくても食事制限はされてるんですよね。
  そこまで神経質にならなくても良いよとお許しが出ている食材のひとつが炭水化物なので、
  取り上げられてしまうと食べられるものがさらに少なくなってしまうんです」

や「忍さん、結構頑固ですね。
  スカルプケアって信頼関係が大事なんで、もう少し聞く耳を持ってもらうと・・(チラ見)いいかなあ?」

私「うーん、食べ物はもう制限しているので、今以上はって思ってしまうんですよね」

やすよは「え?」と戸惑いの表情を浮かべ、まじまじの私の顔を覗き込んできた。
これまで、あの白く重いドアを開けてサロンにやってきた者は薄毛治療を人生の重課題とし、
やすよの教えを金科玉条のごとく尊び、全面的に受け入れてきた素直な人ばかりだったのかも知れない。
私は食い道楽なので、今以上に制限を厳しくしてまで髪の毛を守りたいとは思わないのだ。

私「まぁ、できる範囲で気にかけてみますね」

と妥協案を提示すると、やすよはようやく少し納得したようだった。

や「えーと、で、シャンプーは●●なんですねえ・・・
  これはねえ・・・良くないです。変えた方がいいですよ」

私「と言いますと?」

や「市販のシャンプーってほとんどに界面活性剤っていうのが入ってるんですよー」

来たか界面活性剤問題。
シャンプーは随分と試してきたので、ここではやすよと渡り合えるような気がする。
いつの間にかやすよとの会話のラリーを楽しみ始めている私だった。



▼「スカルプケアとは信仰心である」その5:未来への10カウント

や「界面活性剤がねー。これが髪に非常に良くないの、頭皮の健康も損なうんです」

私「ですよね。界面活性剤は私も気にはしてました。

や「でしょ!?そうなんですよ!良くないんです!」

我が意を得たりとばかりに興奮し、食い気味にかぶせてくるやすよ。
うどん断ちを聞き入れなかった分だけ喜びも一入といった感じで満面の笑みを浮かべている。

私「実はいろんなシャンプーを渡り歩いた末に●●に落ち着いてるんですよね。
  海藻だ、泥だ、ボリュームアップだ、ノンシリコンだと色んなものを試しましたが、
  合わないものを使うと頭皮に痒みが出て大量のフケが出てしまうので
  状態が悪くなるとここに戻ってくる感じになってます」

や「でも、界面活性剤はねぇ・・」

私「ダメだってことは知ってるんですけどね。なので出来るだけ入念にすすぐようにしていますよ」
  (*シャンプーは洗う時間の倍はすすぎに使えという知人の美容師の言葉を信用して実践している)

や「すすぎは確かに大事ですけどね。
  でも界面活性剤が頭皮に吸収されてダメージを与えるまでにどのぐらいの時間かかるか知ってます?」

私「さぁ・・30秒ぐらいじゃないでs」

や「10秒です!!」

「逆転裁判」ばりの迫力に圧倒されて、椅子に座ったまま数センチ後ずさりしたような気すらする。

私「ま、まぁ、よくすすいでいるので許してください」

や「洗うときってどうやって洗ってます?そのまま頭につけてゴシゴシしてません?」


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私「してませんよ、ちゃんと泡立てネットでしっかり泡立ててから頭に乗せるようにしてます」

や「そうですそうです、よく知ってますね」

私「ええ、知り合いに美容師がいるので」

や「成分の濃い原液のまま、べとって髪につけるともうそれだけでダメージになるんでねー」

私「らしいですね。ちなみにわんこを洗ってやる時も泡立ては実践してますよ」

や「シャンプーは朝晩いつやってはるんですか?」

私「主に朝ですね、ウォーキングを日課にしているので、それが終わってから汗を流す感じです」

や「アウト、ダメですそれ」

私「朝シャンがですか?」

や「ええ、朝シャンは百害あって一利なしですから」

私「そこまで?」

や「そうです、朝シャンは絶対にダメです!シャンプーしたてで油分の落ちた頭皮に
  紫外線の強い日中の日差しを浴びせるなんて絶対にやっちゃダメですよ!!
  油分は夜寝ている間に生成されるので、朝流してしまうと乾燥したノーガードの頭皮のまま
  紫外線を浴びることになってしまうんです!絶対やめたほうがいいです!」

まるで「そのまま朝シャン続けてると死ぬよ!」とでも言い出しかねないド迫力にたじろぐ私。

や「うちに来てる人の半分以上が朝シャン派なんです。特に若い子に多いんですよ」

私「若いというとどのぐらいの・・・」

や「一番若い子で中学生ですね」

私「ち、中学生!?」

や「そうです、お母さんと一緒に来られてる女の子がいてます。
  ジャンクフード好き、朝シャン、スマホで夜更かし、、もう全部条件揃ってて」

私「でも中学って、ご両親もお金大変じゃないですか」

や「大変ですけど、気にして学校行けなくなっちゃう子もいて
  親が不憫で連れてきはるパターンが多いんですよ」

今の季節(春)は良くても、夏場さんざん寝汗をかいたあとに
そのままで出かけるのは嫌なので、ここでも妥協案を提示することにした。

私「汗まみれで1日過ごすのも嫌なので、ウォーキングしないと決めている日
  (翌日が雨予報の日など)の前日は夜に入るようにしますね」

や「そうですか、ほんとは夜がいいんですけど、しないよりはいいですよ。
  どうしても朝シャンがいいなら、方法がないわけではないですけどね(チラ見)」

私「なんですか?」

や「それです」

やすよの指した左前方に、花の絵がプリントされたボトルが置いてあった。

や「それね、うちがいちから成分を指定して作った特製のシャンプーとトリートメントなんです」

私「ほほう」

や「界面活性剤はもちろん、髪にも頭皮にも良い栄養になるようなものしか入ってないんです。例えば・・」

そのあとは「良さそうなモノ」の名前が延々と出てきたが
漢方的な名前が多かったことぐらいしか覚えていない。
寿限無を暗唱するようにスラスラとセールストークを終えたやすよに一番気になる部分を聞いてみた。

私「で、それおいくらぐらいなんですか?」

や「2本で15,000円です。でも入ってるモノからしたら激安なんです。
 うちの取り分なんてほんとこれぐらい(親指と人差し指で1mmぐらいの隙間を作る)」

私「そのボトルでどのぐらい持ちますかね」

や「うーん、頻度にもよるけど毎日使ったら1ヶ月くらいかなあ?」

私「わかりました。●●でいいです(笑)」

や「忍さん、冷やかしにきてません?」

私「来てません、私は頭皮のチェックをして欲しくて来てるんです。
  そこは本気ですよ。気にはしてるんですから」

や「ほんまですかー?」

私「ところで、そんなに界面活性剤がダメなら湯シャンはどうです?」

や「あ、湯シャン、いいですよ!いいですけど・・・」

私「けど?」

や「湯シャンだけで頭皮の汚れを綺麗に落とそうと思ったら
  30〜40分くらいすすぎ続けないとダメなんで、コスパ悪いと思います。
  5分や10分流したぐらいでは毛穴に詰まった皮脂って落ちないので。
  毎日30〜40分もお湯ジャージャー流し続けたら水道代とかガス代とかエゲつない金額なりますよ!」

私「そうですか・・・」
(毎月15,000円のシャンプー買うのはコスパ的にどうなんだというツッコミはグッと飲み込んだ)

ちなみに湯シャンをご存知ない方に説明すると、シャンプーなどは一切使わず
お湯だけで洗浄する洗髪方式のことで、オーガニックブームに乗って
最近「湯シャンやってます」を告白する著名人(一番最近だとGACKT)もポツポツ出始めた。
刺激の強い成分を使わないため髪や頭皮に優しく、育毛・発毛効果もあると言われたりしている。
湯シャンであらかたの汚れを落とせばシャンプーの時間は短縮できるのではないかと思う。
ということで、やすよとの会話を通して導き出したシャンプーのコツは

その1:まずは湯シャンで軽く汚れを落とす(*爪先ではなく指の腹を使うこと)
その2:泡立てネットを使ってシャンプーをもこもこの泡状にする
その3:髪に乗せたら素早く揉み込み、10秒ほど経ったところでたっぷり時間をかけてすすぐ


で良いのではないだろうか。
正しい洗髪法こそが、明日の抜け毛を防ぐ第一歩。
10秒が肝とは、これこそ「未来への10カウント」である。


*テレビ朝日系列「未来への10カウント」



▼「スカルプケアとは信仰心である」その6:半沢直樹

*以下のやり取りには発毛剤や発毛促進薬に対してのやりとりが含まれていますが
 サロンで対応してくれた女性の個人的な見解であり、医学的な裏付けは取れておりません。
 あくまでも雑談としてお読みください。


シャンプー談義はそれなりに有意義で、やすよとの適切な距離の取り方もわかってきた私は
かねてより気になっていたことを流れで切り出してみた。

私「シャンプーもなんですが、世の中にたくさん発毛・育毛用品ってあるじゃないですか。
 ああいった商品って結局のところどうなんですかね。効き目はあるんですか?」

や「んー、どうかなあ?私の口から「あります」と言うと効果なかった人から
  「なかったぞ」って言われるし、実際生えた人もいてはるみたいなので
  「ありません」とも言い切れないんですよね」

私「言い切れないってことは、やすよさんは発毛・育毛用品については否定的ってことですか?」

や「いや、いやいや!そんなやらしいこと思ってませんよ!効き目ある人も中にはいてはると思います。
  ただ、やっぱりうちみたいにお一人お一人の状態を見せていただいて
  その人に一番合ったケアを提案するのが一番確実やとは思ってます」

私「市販の商品の中にはすごいロングセラーとかありますもんね」

や「そうですそうです。それだけ売れ続けてるってことは
  やっぱり効いてはる人も一定数はいらっしゃるんやと思います。」
  ただ、やはり・・・なんて言うたらええのかな。強いんですよ」

私「強い?」


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や「ええ、強いんです。
  うちのサロンがやろうとしてるのは、髪の毛が自然に生えてくる環境を整えるってことで
  不摂生で荒れ果てた畑をもう一度作物の育つ土壌に戻してあげようっていう目的なんです。
  でも発毛系商品は、枯れた土地のままで無理やり生やしてるって言うのかなあ?」

私「バイアグラみたいなもんですか?」

や「あ、そうですそうです!効き目もあるけど体に負担もあるよっていうね」

私「負担というと?」

や「ああいったものって、ひとつだけやってもあかんのです。
  シャンプーやるならそのあとにこの栄養剤も塗ってください。
  それからこれ(飲み薬)も飲んでくださいねって、どんどん足されていくんですよ」

私「ああ、確かにサイトでも塗り薬に飲み薬を重ねるとより効果が大きいとか書いてますね」

や「でしょー!?そうなんです。
  シャンプーでもそれだけやと効果が不十分だからリンスも揃えてね、洗い上がりはこれ塗ってよっていう。
  で、さらに飲み薬まで飲むとさすがに・・・」

私「負担があると」

や「発毛系の商品に含まれる成分って、副作用として男性機能が減退するとか実は色々あるんです。
  でもあまりそういったことは書かれてないところが多いですね、それ書くとやめちゃう人出てくるから」

私「なるほど、じゃあ追加でバイアグラ飲むとか(笑)」

や「もう体の中わちゃわちゃなりますよ(笑)」

私「あちらを立てればこちらが立たずってことですね」

や「お薬の飲み合わせって、それを気にして薬剤師さん達がチェックしはるわけですから」

私「なるほど、勉強になります」

や「あとね、これが一番大事なんですが、あの手の商品って一度手を出すともうやめられないんですよ」

私「え?」

や「うちのサロンの方針やと、頭皮が健康な状態に戻ればそれで治療完了なんですが
  ああいった商品は強い薬効成分で頭皮を刺激して無理やり生やしてる状態で
  根本から治してるわけじゃないので、やめたらそこですぐ逆戻りするんです。
  しかもすっごいスピードで」

私「怖い・・・」

や「やめたら倍返しですよ」

私「半沢直樹・・・」

や「そうです・・・せやから、手を出すならもうずーーーーっと使い続ける覚悟が要るんですよ」

契約解除のないサブスクリプションということか。
夢を抱いて乗り込んだ列車が、実は一度乗ったら降りられない片道運行だったとは、
まるで「銀河鉄道999」じゃないか。
しかも永遠に終着駅の惑星メーテル(惑星大アンドロメダ)には着かないというおまけ付き。

や「ただね、ものは考え方なんです。
  うちみたいに毎週足運んで、定期的に頭皮チェックして、食事管理もしてって
  そんなんやってられへん!って人もたくさんいてはって
  そういう人はお金で済むならって払いはるみたいですねー」

私「そうか、生えるのは生えるんですもんね」

や「人によっては、ですけどねー。合う合わないはあるので」

私「こちらはどうなんですか?合う合わないは?」

や「正直あります。生える量も個人差はあります。
  でもそれは生えるまでの時間に差があるってだけで
  うちここ開けて7年なるんですけど、最終的に皆さんちゃんと生えてはります」

私「おお、それはすごいですね」

や「でしょ?本来の力を取り戻すことができれば生えるんですよ!」

そもそも「本来の力」とはどういうものなのだろう。
オーガニック系の料理を出す店でも「野菜本来の力を引き出す」などという
文言が踊っていることが多いが、「本来の力」に「無理をしない」「自然体の」という
意味が含まれているとしたら、野菜はさておき私ぐらいの年齢のジジィは
その「本来の力」が減退しているのが当然ではないのだろうか。
加齢で衰える生命力すらもケアすることで取り戻せるなら
それはすなわち人類の夢とされる『若返り』ではないのか。

ちなみに、私はつい最近「Xbox Series S」を購入し
3年間のサブスクリプションを契約したので最低でもあと3年、2025年5月までは生きていたい。
頑張れ、私の中の本来の力。



▼「スカルプケアとは信仰心である」その7:energy flow

以前、難病を発症したわんこのために専門医を探して方々訪ね廻っていた際、
「良い獣医の見極め方」というページに辿り着いた。
いくつか「なるほど」と思う項目があり、特に今でも良く覚えているのが以下の2つ。

・「他所の獣医の悪口を言わない」(他者を否定して自分の信頼度を上げる行為)
・「『絶対』という言葉を使わない(従属させるために敢えて強い言葉を使用する)

やすよのこの数十分間のカウンセリングはばっちりこの2項目を満たしており、
私の中でこのサロンへの信頼度はあまり高くないな、というところに落ち着きつつあった。

いつになったら頭皮チェックが始まるのだろう。
私はもう、カウンセリングはほどほどにして頭皮のチェックとケア体験に移って欲しかったのだが、
やすよは何よりも段取りを重視するタイプらしく
問診票を1項目ずつチェックしてはアドバイスをくれるのだった。

や「えーっと、忍さん持病たくさん持ってはるんですね。
  お薬ものすごいたくさん飲んでるみたいで・・・」

私「ええ、そうなんですよ。
  特にキツイのが群発頭痛と潰瘍性大腸炎なんです。
  群発頭痛は昔と違って今は活動期に飲むと発作を抑えるお薬が出ているので
  コントロールできるようになったんですが、大腸炎はいったりきたりでもう10年ぐらいですかね。
  今も座薬を入れてギリギリ踏ん張っている状態なんです」

や「そうですかあ・・それは大変ですね」

私「ええ、毎月の薬代だけでも馬鹿にならないんですよね」
  (発症当時に担当してくれていた医師のアドバイスで難病指定の申請を出していないため全て有料の治療なのだ)

や「そこで提案なんですけどー」

私「なんでしょう」

や「薬、一旦全部やめてみましょか?」
私「無理ですね(即答)」

や「いやっ、嫌やわぁ。そんな被せてくるほどダメな提案ですか?
  お薬ってそもそも何で出来てるか知ってます?
  お薬の成分って頭皮にもあんまり良くないものがたくさん含m」

私「やすよさんの言うところの『本来の力』を信じろっていうことだと思うんですが
  私は今結構シビアなところをギリギリで綱渡りしている状態で
  「炎症が全腸型になると最悪腸の全摘もあり得る」って担当医に言われてるんですよ。
  そんな時に、たかだか薄毛を気にして薬を全部止めるとかは
  完全な自爆行為だと思うんで無理です。命あっての頭皮ですから」

や「でも、自然の治癒力を高めるって意味では難病の人ほど薬断ちってしてみる価値あると思うんです。
  実際にうちでも病気持ってはる人がお薬やめたら病気嘘みたいに治って
  髪の毛も増えたって人いてはりますし」

私「そういう方もいるかも知れませんが、私がそのパターンにハマる確証はどこにもないですし
  仮に悪化した場合に髪も増えないわ入院したわでは泣くに泣けないじゃないですか」

や「でもね、私はやっぱり忍さんもう少しご自分の体の力を信じてみて良いんちゃうかなって思いますよ。
  例えば・・・そう!坂本龍一さん!あの方なんてまさにそうでしょう?
  自然治癒力を上げるって治療方針で癌も治しはったんですよ!」

私「全然違いますよ。坂本さんは確かに以前は西洋医学否定派の急先鋒でしたし
  『足湯と気功だけで万病は治せる』と仰ってましたが、ご自身が癌に罹患されてからは
  東洋医学一辺倒をやめて西洋医学を頼り、入院・手術をして癌を治療したんです。
  私は坂本さんの公式サイトのニュースレター(不定期配信)も登録してるので
  そこに掲載されている近況報告で、誰よりも健康に気を遣っていたのに癌に罹患してショックを受けたことや、
  考えを改めて西洋医学を頼ったこと、入院先のスタッフや医師の対応が素晴らしく
  感謝していることなど治療の過程をずっと読んできましたから間違いないです」

や「・・・そ、そうやったんですね」

私「そうやったんですねって、その話これまでも他の方にしてきたんですか?」

や「たまにですよ!たまに!」

私「(しょっちゅうやっとんな)
  とりあえずこれからは坂本さんの名誉のために今後は止めておいた方が良いですよ」

や「忍さん、何言っても暖簾に腕押しみたいですから、もうさっさと次のステップにいきますねー
えーっと、うちで使ってる頭皮に照射する機械があるですー
それの説明動画を今から流しますんで、信用されへんと思うけど一応見てくださーい」

この教授のやりとりが決定打になったのか、やすよは私の説得(サロンへの勧誘)を諦めたようで
説明が急にマニュアルの棒読み口調になった。
ただ、テキストだと険悪に読めるかも知れないが二人の会話の空気は全く悪くなく、
関西特有のボケとツッコミのようにポンポンとやり取りが進み、
時には手を叩いて笑い合ったりしていたことも付け加えておきたい。
この棒読みも明らかにやすよの意図的なもので、ちゃんと笑いで落ちていた。
あくまでもサロンの治療方針と合わなかっただけで、私はやすよのことはかなり好印象を持っていた。
ただし、向こうが同じ気持ちかは定かではない。



▼「スカルプケアとは信仰心である」その8:求めよ、さらば与えられん


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や「忍さん何言っても暖簾に腕押しなんで、もう次のステップにいきますね。
  えーっと、うちで使ってる頭皮に照射する機械があるですー。
  その効能について解説する動画を今から流しますんで、
  『なんやこれ』って言われそうですけど、カウンセリングに組み込まれてる手順ですんでねー
  アホらしいとは思うんですけどまぁ見てくださいー」

やすよは投げやりになっていた。
事務的に話を進める様は友近のコントを見ているようで、それはそれで面白かったのだが
なんだか悪いことをしてしまったようで、申し訳ない気持ちになってしまった。
私は決して揚げ足をとるつもりでこのサロンを訪問したわけではない。
運営方針にケチをつける気など毛頭なく、頭皮チェックとスカルプケアの相談が受けられればそれで良かったのだ。
のっけから頼んでもいないオプションの話をてんこ盛りでされたために
ひとつひとつ返していたら、やすよの意欲をすっかり削いでしまったらしい。

おそらくこのサロンは、

食生活を指摘→そ、そうだったのか!
シャンプーの選び方を指摘→な、なんだってー!!
発毛・育毛商品の落とし穴を指摘→う、うわあああああ!!!
そんな時に出会ったのが、このシャンプーです→買います!買わせてください!

という感じで、相談者のこれまでの生活態度がいかに間違いだらけだったかを説き
悔恨と贖罪の念を高い石段の如く積み上げたところに
「間違いを犯していた自分を正しい道へと導いてくれるやすよ先生降臨」として
思いのままに躾けていくスタイルなのだと思われる。
ストレートに書いてしまって良いか悩むが、やり口は宗教の勧誘と似ている。

「その辺は信じてもらうしかないですね」
「やっぱり信頼関係って大事じゃないですか」
「信じるってすごい力があるんでね」
「どちらかが疑ってるとやっぱり効果もその分効果も薄れるんですよ」

などなど、この数十分間のカウンセリングで
やすよから何度か出て来た言葉がまさに「信ずるものは救われる」だった。
スカプルケアの第一歩は信じること。
信心深い者だけが救われ(=毛が生え)るのだという考えを
徹底的に刷り込むことで、長期契約へと持ち込むのがセオリーなのだろう。

私の場合は指摘する箇所が少なく(暴食もしなければ運動不足でも夜型でもない)、
洗髪の仕方や界面活性剤についてもそれなりに情報を得ていたために
やすよの話に新たな発見が少なく、彼女が用意したレールに乗らなかっただけのことだ。
特に坂本龍一の件に至ってはやすよの事実誤認なので指摘せずにはいられなかった。
すっかりテンションの下がったやすよは黙々とパソコンを操作し
「では流しますねー」と言って1本の動画を流し始めた。
私は「せめてここぐらいは黙って静かに見てあげよう」と心に誓って動画を見始めると・・・
流れてきたのは懐かしのアニメ「アンデルセン劇場」のようなタッチのスライドショーだった。

<あらすじ>
とある田舎町に働き者の父と息子がいました。
父は毎日仕事に精を出し、息子は外で遊びまわるのが大好きな快活な子でした。
しかしある日、息子が原因不明の病で寝たきりになってしまったのです。
父の献身的な介護も虚しく、あんなにも元気だった息子の病状は悪化するばかり。
「パパ、僕もう太陽の下で遊べないのかな・・・」
弱気に呟く息子の言葉にヒントを得た父親は、
「そうだ、太陽光を浴びれば元気になれるのでは?」と思いつきました。
父は寝たきりの息子に太陽の光を浴びせるため、太陽と同じ効果を得られるライトの開発に着手しました。
ついに機械が完成し、息子に向かって照射を始めるとアラ不思議!
日に日に息子は元気を取り戻し、元通り外で元気いっぱいに走り回るまでに回復したのでした。
すごいや!太陽光!めでたし、めでたし。


「さあ、今からこのレーザーをあなたも浴びることができるのです」という〆の宣伝も抜かりないが
男がどうやって太陽光と同じ効果を得られる機械を作れたのかは描かれず、
絵柄や生活様式の設定は「フランダースの犬」の頃を思わせる昔話風なのにこの技術力は一体どこから?と
頭の中に「ホワイ?」が飛び交う中、父親が機械の完成を喜ぶシーンで思わず

私「嘘やんwww」

とうっかり口に出てしまった。
あんなに黙って見ようと決めたのに、私は何と意志薄弱なのだろう。
そもそもやすよは、太陽光が頭皮に有害だと言っていたではないか。

私「すいません、太陽光は頭皮に良くないのでは」

や「と思うでしょー?この光は太陽光から体に悪い成分だけを抜き出して
  人が本来持ってる生命力を呼び覚ます効果だけを抽出してるんですよ」

いやだからどこの親父がそんな高性能のライトを一朝一夕に開発できるというのか。
そしてそのライトがどんな旅路を経て、日本のやすよが入手するに至ったのだろう。
謎でしかないこの動画も、このフェーズに辿り着くまでに
すっかりやすよに心酔した方ならば、疑うことなくすっと胸に入ってくるものなのだろうか。

や「とりあえずこれでカウンセリングは終わりですー。では頭皮のチェックを始めますねー」

やっときた、私はこれを待っていたのだ。
やすよはパソコンをカタカタを触って画面をカメラの映像に切り替え
手には頭皮の状態をチェックする用のペン型のカメラを持っていた。

や「では始めますねー」

冷たいペン先が私の頭皮にあたるや、PCのモニターには拡大された私の頭皮が映し出されていた。



▼不定期日記「スカルプケアとは信仰心である」最終話:人生の扉

PCのモニターに映る拡大された私の頭皮。
自分の頭皮をマジマジと見つめる機会などそうそうないので
不安よりも興味がまさり、思わず椅子から腰を浮かせてモニターを覗き込んだ。

や「きれいですやん」

私「そうですか?」

や「ええ、だいたいひとつの毛穴から2、3本生えてる状態が健康なんですけど
  忍さん普通に2本生えてますし、3本のとこもありますし
  お年からしたらむしろ多いほうちゃいますかね?」

私「え?でも確かに減ってると思うんですけどねぇ」

や「あー、もしかして元々の毛量がすごく多いタイプやったのかもしれないですね。
  少なくともお年からしたら平均並みか、少し多いくらいやと思います。
  シャンプーも上手にしてはるのか脂が取りきれてない部分もそんなにないですし
  強いていえば・・この辺(頭部右前方の生え際あたり)の肌が少し赤みを帯びてるくらいですかね。
  これは洗い足りないのかもしれないですし、季節的に日焼けかもしれないですし
  単純にそこだけ荒れてるのかもわからないです。
  脱毛症の始まってる方って1箇所の毛穴から1本しか生えてないとか
  頭皮が全体的に赤味を帯びてるとか、もっとはっきりした兆候があるんですよ。
  そういうのは忍さんには見られないですねえ(と言いながらなおもペンでグリグリと頭皮をチェックする)」

私「そうでしたか・・でも鏡に映る自分の頭部を見ていると、明らかに減ったなあって思うんですよ。」

や「それもしかして白髪じゃないのかなー。忍さんめちゃくちゃ白髪多いでしょ?
  ほら、こうやって持ち上げると中もうほとんど白髪じゃないですか。
  白髪ってルームライトや日光を通すので、これだけ多い人やと
  地肌が見えたりするんです。でも髪の毛の本数自体は年齢なりやと思いますよー」

薄く見えたのは白髪の比率が上がったからなのだろうか。
確かにここ数年で白髪はぐっと増えたが、手で触ってぺったんこに感じるのまでは白髪のせいではないだろう。

忍「でもですね、手でこうやって押さえるとぺたんってするんですよ。
  前はもっとふっくらとまず髪の毛の絨毯があって、その下に頭って感じだったんですが
  今は押さえる→即頭!みたいな」

や「あー、ほな髪の毛自体がお歳で細くなってるのかもしれないですね。
  何年も前の状態を見せてもらってないのではっきりはわからないですけど
  歳をとってくると本数自体は減らなくても髪の毛が細くなってくるんですよ。
  髪の毛が細くなるとどうしてもボリュームも減るので、
  それを髪の毛自体が減ったと勘違いする人もいてはるんですよね」

むむ、そうなのか。つまり私の場合は

1:加齢により白髪が増加し、光を通すようになったことで頭皮が見え易くなった
2:加齢により毛質が変わり若い頃よりも細くなったためにボリュームダウンした

ということなのか。両者に共通するのは『加齢』である。
結論が導き出された時、私の脳内には竹内まりやの「人生の扉」が静かに流れ始めた。

I say it's sad to get weak
You say it's hard to get older
And they say that life has no meaning
But I still believe it's worth living
But I still believe it's worth living


そうか老いか。
そういえば少し前に知人より「忍さん、目がおかしいよ!白内障の初期症状かもしれないから
眼科を受けたほうがいいよ、早めに治療すれば大丈夫だから!」と勧められ
慌てて眼科を受診した時に医師から「ああ、これは老人環ですね」と言われたのを思い出した。
老人環とは加齢によって角膜周辺部が白く混濁する、中高年には割とポピュラーな症状なのだそうだ。
視力や眼球に問題があるわけではなく、加齢と共に周辺の白いリングがどんどん太くなっていくらしい。
「忍さん進行早いので、最終的には黒目のすぐ外ぐらいまで広がってくるかもしれませんね。
まぁ、だとしても問題はないので大丈夫ですよ。」と言われ、
安心すると同時に「老人」と付く疾患が発生する歳になったのだなあとぼんやり考えていた。

老いからきたものならば、もう下手に抗わず自然に任せて受け入れよう。
ドアの前に立った時の緊張感がやすよのペンカメラによってほぐされ、
まりやの脳内BGMによってゆっくり流されていくのを感じる。
色々と怪しげな勧誘もされたが、来て良かったと思った。

や「さ、ではうちのスカルプケア体験を受けてもらいますねー。こちらへどうぞー」

スリッパの音をパタパタと立てながら足早にカウンセリングルームから出ていくやすよ。
施術室には、間接照明しか置いていない薄暗い空間にベッドのみが置かれている。
ヘアサロンのシャンプーとほぼ同じ要領で、目だけを小さなタオルで隠してまずはシャンプーから。

や「これがさっき話したシャンプーです。
  天然成分だけで作ってるのにしっかり汚れも落として
  でもノンシリコンでもないから髪もきしまないんですよー」

加齢と聞いて「ならいっか」と頭の切り替わった私にやすよのセールストークなど
ムーディ勝山レベルで右から左へと受け流していくのみ。
ただやすよの洗髪テクニックはなかなかで、強過ぎず弱過ぎず心地良い眠気を誘うレベルだった。
シャンプーが終わると次は例の太陽光(と同じ効果が得られる謎の機械)の照射タイム。
ガチャガチャと音がした方向に目線をやると、やすよが巨大な懐中電灯のようなものを設置している。

や「はーい、では今から頭皮に良い特別なレーザーあてますねー」

ブーンという静かな音とともに私の頭皮にじんわりと温かかさが広がる。
頭だけ取り外して岩盤浴に入っているような感覚、というとお分かりいただけるだろうか。
熱いと感じるまでにはいかない適度な温熱効果でさらに眠気を刺激され意識が薄れかけるが

や「どうですかー!気持ちいいでしょー!」

と無粋に割り込んでくるやすよの声でハッと現実に引き戻される。
黙って施術だけに徹していればやすよはなかなかのテクニシャンだと思うのだが
この人柄と営業力で契約を取り付けた患者も多数いるのだろうし、どちらがどうとは言えない。

私「この照射確かに気持ちいいですね。
 定期的に来るのはちょっと無理ですけど、施術だけ数ヶ月に一度とか受けに来るのはダメなんですか?」

や「やめといたほうがいいですよ」

私「え?なぜです?」

や「不経済ですもん」

私「あ、高いんですか?おいくらぐらい・・・」

や「1回2万5000円です」

私「あ・・・」

や「でしょう?だからうちで薄毛解消するって決めた人にはみなさんに回数券を買ってもらってるんですよー」

私「回数券?」

や「ええ、1回2万5000円ですけど、10回分で18万円になるんです。
  1回あたり1万8000円になるんで、かなりお得ですよ!」

私「へ、へぇ!確かにかなり安くなりますね」

や「施術開始してからは週2回来てもらわないとダメですからね。
  それをまず半年続けてもらって、週に1回にしてさらに半年。
  1年経ってみて効果を確認できたら月に1回にしてそこからもう1年。
  明らかに発毛の兆候が見られたら、そこからは隔月にして現状維持っていう感じなんですー」

週2回なら10枚綴りのチケットは5週間で使い切るわけか。
半年(180日)25週間と考えると、最初の半年で回数券5冊を使い切る計算。
18万x5冊でざっと90万円。週1ペースに落としてもう半年で45万なので最初の1年で135万円。
そこまで出せる資金力と、通い続ける熱意のあるものだけに毛根は微笑みかけるというのか。
なかなかに高いハードルだ。
とても「湯シャンは光熱費がかかって効率が悪い」と言った人物とは思えない。

や「もちろんお金もかかりますけど、本気で生やしたいっていう意欲と
  絶対に生えるって信じ続けるっていうのが大事なんです。
  どちらが欠けてもダメなんです。最後の一押しは、やっぱり信じることかなあ?
  ほらよく言うじゃないですか当たるも八卦、当たらぬも八卦って。当たるって信じてないとね!」

私「当たるも八卦、当たらぬも八卦っていうのは
  良いことも悪いことも所詮占いなんだから気にするなって意味では」

や「え?(しばし沈黙)いや、いややわあ!ずっと間違えてましたー!アハハハハ!」

カウンセリング&施術終了。
体験料は5000円ほどだったので、全9回分のネタになったと思えば安かったし
まだ見ぬスカルプケアの世界には驚きと発見が満載で楽しかった。
「信ぜよ、さらば救われん」と説く一方で1年130万円のお布施が必要という現実を
どちらも実践し受け入れる人が、世の中にはどれぐらいいるのだろう。
もちろん、私の訪れたサロンよりリーズナブルな料金で施術を行っているところもあると思うし
発毛効果を得られたことで支払った金額以上の満足感を得られた人もいるだろう。
「NO HAIR、NO LIFE」な人にとっては、プライスレスな世界なのだ。
学びの多い、有益な時間であった。

たった数時間の体験を、4月のエイプリルフールに書き始めてから5ヶ月もかけてしまった。
長い間お付き合いいただいた好事家のあなた、どうもありがとう。





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昨年のエイプリルフールからしばらくの間不定期で書いていた「忍之スカルプケア体験記」の途中で
シャンプーの話になった際に「あれこれ試してたどり着いたのは意外と身近なもの」とだけ書いたのだが
それがこの「リデン ハイブリッドシャンプー」。
ボリュームアップやスカルプケアを謳う商品、年齢をアピールした商品、泥やノンシリコンなど成分がウリの商品など
本当にあれこれ試した末にここに落ち着いた。
これまで選択肢にすら入れていなかったリンスインシャンプーなのだが、敏感肌の私でも痒みも出ず洗い上がりも良い。
わざとらしいメントールの爽快感ではなく、ちゃんと汚れが落ちたと実感できる気持ち良さがある。
香りは2種あり、ムスクは最初慣れるまで若干親父臭いものの、慣れてくるとこちらが恋しくなり今はムスク2本目。

近所のドラッグストアで買ってからずっと使っていたのだが、つい最近置かなくなってしまい
先月からネット通販で買うようになった。リンスインシャンプーで価格が1,500円ほどというのも続けやすい。
もちろん、合う合わないは使用される方との相性が大きいので最初から2本セットなどは買わずお試しで1本買うのをオススメ。



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