忍之閻魔帳

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北野武監督:映画「首」錆びついた名刀にも捨てがたい味わい

2023年12月02日 | 作品紹介(映画・ドラマ)


▼北野武監督:映画「首」錆びついた名刀にも捨てがたい味わい



公開中■邦画:首

「座頭市」「アウトレイジ」など常に異色の作品で映画界で独自の存在感を発揮し続けてきた
北野武監督の最新作は、本能寺の変を題材にした戦国バイオレンス絵巻。
出演は西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、浅野忠信、大森南朋、遠藤憲一、木村祐一、
勝村政信、寺島進、桐谷健太、寛一郎、荒川良々、小林薫、岸部一徳など。
監督自身もビートたけしとして秀吉を演じている。

日本人なら大半が知っている本能寺の変をベースにしつつ
タイトルにもなっている「首」に執着する人々が描かれた本作は
迷いなくズバッと斬り込む演出から、老いた秀吉のように飄々とした演出へと変化した
北野節の変遷を楽しむ作品。これを『老化』という言葉で片付けるには惜しい。

エンドロールが始まって真っ先に私の頭に浮かんだのは
「これは北野武版の『君たちはどう生きるか』(宮崎駿監督)だな」だった。
これまでの北野作品に出演したキャストを多く揃え、過去作を彷彿する演出を交えながら、
故・黒澤明監督から託された時代劇を撮る走馬灯映画になっている。
宮崎監督が既に次回作の構想を練っていると鈴木敏夫プロデューサーが語っているように
北野監督も「あと何本か撮りたい」とインタビューで答えており、
お二人とも老いてなおますます盛んで何より。


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本作のキーアイテムは、タイトルになっている「首」。
オープニングからエンディングまで、一体何体(何個)の生首がスクリーンに映し出されたことだろう。
それでいて凄惨さは薄く、あまりにも小気味良くポンポンと首が飛ぶせいで
瓶のコーラを片っ端から栓抜きで開けていっているような感覚に陥る。
戦国時代には手柄の証とされていた首について、
当時の武将達は本当にそこまでの価値を見出していたのだろうか。
敵陣の大将を獲った時点で目的は達成しているのに、首を持って帰って初めてミッション完了となることを
滑稽だとする視点が本作にはあり、首を巡って右往左往する人々をたけし演じる秀吉がせせら笑うシーンは
北野監督が秀吉の姿形を借りて笑っているようにも見えた。
家康が次々に身代わりを用意して難を逃れるシーンでは、討ち取った者はそれが家康の首だと疑わないし、
光秀の首に至っては、薄汚れているせいでそれが光秀だとすら気付かない。
「何だよ、首だ首だって騒ぐ割にはなんだっていいんじゃねーか」と毒づく声が聞こえるようだ。

記号的な性格付けがされた登場人物達は皆が竹を割ったように分かり易い性格をしていて
短気な信長はどこを切っても乱暴で横柄、食えない利休はどこまでも食えない人物でしかないのは残念。
策略や裏切りが飛び交う戦国の世にしては、腹の底が見え過ぎている。
信長を必要以上にヒステリックな人物にし、家康を必要以上に老獪な人物としたことで、
愛嬌もカリスマもほどほどに兼ね備えた秀吉が自然と浮かび上がる構図になっている。
声を出すなと叱責した直後に文字が読めんと激怒するシーンや
火鉢に手を入れてしまうシーンなど、コントっぽい演出が時折挿し込まれているおかげで
たけし版の秀吉はどこか志村けんのバカ殿っぽさもあるが
残虐表現と笑いがミックスされた作風は、日本では三池崇史と北野武にしか出せない独特の味わいなのでこれで良い。
そう言えば三池監督も「十三人の刺客」で時代劇映画を撮っていたな。

ただ、この内容に制作費15億円(@KADOKAWAの社長発言)はかけ過ぎかなとも思う。
三谷幸喜監督の「清洲会議」は、戦国時代を舞台にした映画では破格なほど
制作費を安くで抑えられたと言われているが、本作も会話劇に軸足を置いて合戦シーンを本能寺に絞れば、
皮肉の効いた小作品として北野武作品の新しい一面を開拓することも出来たのではないか。
風呂敷は無駄に広げるからいいんだとする「風雲!たけし城」的な美学も理解はするが
オープニング成績が興収3億9,500万円ではなかなか制作費回収は厳しい気がする。
(当初の予定通りNetflixに配信権を売って入ればまた違ったろうに)

70歳を過ぎた北野武監督なりの老いに一抹の寂しさを感じつつ、そこも含めて私は楽しめた。
次回作があるなら、やはり劇場で観たい。
映画「首」は現在公開中。



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2 コメント

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首 観てきました ()
2023-12-02 18:58:27
で、二本目ですわ。
森プロデューサが追い出されたときは、もう映画の芽はないんかな・・と
残念に思っていましたが、いろんな作り方があるもんですね。
むしろカドカワと組むことを前提に、騒動があったのだとすれば、
タケちゃん、おぬしワルよのぅ、とも思ったり。^^

***

ひと言でいうと、キタノ解釈の本能寺の変ですね。
司馬遼を愛読書としている私からすれば「それは、ないでしょ^^」と
思うところもありましたが、だんだん「ひょっとしたら、こうだったのかも・・」
と思えてくるようになるところが、脚本・監督キタノのうまいところだなぁと思いました。

要所要所で、ビートたけしの悪ノリが挟んであって、笑えるところも良かったです。
特に高松城で清水宗治が腹を切るシーンの、絵作りの美しさと、たけしの罵詈雑言の
ギャップが本当に最高で、劇場でひとり静かに爆笑してしまいました。^^
ほんとに楽しんで作ってるな、と伝わってきました。

ただ、海外ウケはどうかなぁ・・。
首の価値とか、ハラキリとか、寵児の意味とか、多分わからないでしょうね。
黒人差別もあったし。(それは最終的に、信長の首で落とし前が付きますが)

事務所騒動はあったけど、キタノ老いてなお健在。サービス精神も旺盛。
私は大いに楽しみました。騒動後の作品の完成度の高さにも安心しました。
ほんとに、どこまでも進化する人ですね。
キタノファンには外せない一作だと思います。
返信する
mさん ()
2023-12-04 14:49:30
こんにちは。

私もオフィス北野の解散の時に
これで監督業も終わってしまうのかなと
残念に思っていたので、紆余曲折あったとはいえ
こうして公開までこぎつけたことが嬉しいです。

>要所要所で、ビートたけしの悪ノリが挟んであって、笑えるところも良かったです。
>特に高松城で清水宗治が腹を切るシーンの、絵作りの美しさと、たけしの罵詈雑言の
>ギャップが本当に最高で、劇場でひとり静かに爆笑してしまいました。^^

ここは私も思いました。
すごく綺麗な絵を撮るなという感心と
切腹を嗤う性悪なところのコントラストが最高でした。

海外ウケが今ひとつだったことも頷けますよね。
世界に向けた日本映画というよりは
NHKの大河ドラマや黒澤以降の生ぬるい戦国映画に対しての
アンチテーゼの方が強いのかなと思いますし。
世間ではBL要素にやたら過剰な反応が寄せられているようですが
あの程度はBLにも入らないのではと私は逆に拍子抜けなぐらいでした。

黒人差別といえば、「あさイチ」や「ひるおび」でずっと見てきた
副島くんがあんな重要な役だとは知らなかったのでびっくりしました(笑)
返信する

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