ワーナー・ホーム・ビデオ
チャーリーとチョコレート工場
誰にでも好き嫌いはある。
万人を満足させる作品などこの世には存在しないと思う。
何かについて「語る」ことを生業としている者ですら、
「好きか、嫌いか」「合うか、合わないか」という、
極めて単純な感想にあれこれと理屈をつけて形にしているだけだ。
今回紹介する「チャーリーとチョコレート工場」も、
結局は私の好みに合ったというだけのことである。
ただ、その合い方が半端ではない。
ジジィ街道をとろとろと徐行運転しているこの私が、
まるで子供のようにワクワクし、心底「夢中になった」作品なのだ。
ティム・バートンの不調を決定づけた「猿の惑星」のリメイクから2年、
2003年の「ビッグフィッシュ」で復活の兆しは見えていたのだが、
昨年「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」の
デジタルリマスター版が公開されたことをきっかけに、
ティムはいよいよホームグラウンドに戻って来た。
古巣に戻ったティムは、まるで若き日のエネルギーを取り戻したかのように、
楽しそうで怖い、怖そうだけどとびきり楽しそうな
毒気の強いファンタジー世界を、卓越したセンスと
最高の技術、最高の音楽でスクリーンの中に創り上げた。
スタジオジブリ作品や「ハリー・ポッター」シリーズが目指す
「打率8割の大衆向け娯楽」ではなく、
「2割から熱狂的な指示を受けるマニア向け娯楽」の作品なので、
いわゆるファンタジー映画だと思って観に行くと返り討ちに遭う危険もあるが、
ティム特有の苦味を承知の上で観に行くなら、
これほど楽しい作品には向こう5年、下手すると10年は巡り逢えないと思う。
敢えて1箇所だけ気になる点を挙げるとするならば、
「チャーリーとチョコレート工場」というタイトルがつけられてはいるが、
これは完全にジョニー・デップが演じる工場主、
ウィリー・ウォンカの物語になっているということだ。
「ウィリー・ウォンカのチョコレート工場」なのである。
チャーリーはあくまでも、ウォンカに招かれた子供達の中で
唯一ウォンカと響き合うだけの少年としてしか機能しておらず、
全編に渡って描かれるのは、ウォンカの歪んだ性格と
そんなウォンカを作り出した過去についてなのだ。
私は原作は未読のため、原作ではどういうボリューム配分で
描かれているのか分からないのだが、
もしかするとこの辺に引っかかりを感じる方もいるかも知れない。
個人的にティム・バートンが好きということはもちろんあるが、
それでも間違いなく本年度No.1のお気に入り作品になると思う。
ただし、万人には勧めない。
甘いだけのファンタジーばかり食べさせられて
口の中がヒリヒリしている大人には最高の口直しだ。
「ベルヴィル・ランデブー」に続く大人向けファンタジーとして
一人でも多くの方に劇場で観ていただきたい。
この楽しさを家庭サイズに押し込むのはもったいない。
DVDはあくまでも2度目用に。
小ネタ:劇中に登場するリスはちゃんと訓練された本物のリスなのだそうだ。
特殊技術を使っているシーンももちろんあるが、
並んで作業したり音に反応して一斉に振り向いたりするシーンは
一切手を入れていないのだそうだ。Marvelous!
ダニー・エルフマン, サントラ
チャーリーとチョコレート工場 オリジナル・サウンドトラック
【関連記事】
「最上級の甘みと苦み「チャーリーとチョコレート工場」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:チャーリーとチョコレート工場
配給:ワーナーブラザーズ映画
公開日:2005年9月10日
監督:ティム・バートン
出演:ジョニー・デップ、フレディ・ハイモア、他
公式サイト:http://charlie-chocolate.warnerbros.jp/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
チョコレート工場と同じくらいに期待している「SIN CITY」も早く公開して欲しいなぁ…。
ちなみに最近買ったDVDはロング・エンゲージメントとベルヴィル・ランデブーです~。
この本を読んだ時はまさか映画化されるとは思いませんでした。ぜひ観てみたいと思います。
ところで、最初にチケットを見つける時、私なら間違えて包装紙と一緒に破ってます。チケットが当たらなくてよかった。
万人向け=正しい訳ではないですから。
ただマスコミではあたかもハリポタと同系列のような扱いだったのが気になります。
原作は大昔に読みましたが、ウィリー・ウォンカ(発音はワンカなんだけどな)の過去はほとんどなかったように記憶してます。ファンの間では賛否あるようで。
それとは別の魅力がありそうな感じですね。
ワンカの過去は『夢の~』の方では語られてなかったと思います。
ジョニーデップはワンカ役としては若すぎるような気がしますが、そこらへんも含めてどう料理してくれるか楽しみな作品です。
「ロングエンゲージメント」と「ベルヴィル」であるか。
ならばますますヒロ君殿にはお勧めだ。
>晴雨殿
私もあの挿入方式は破ってしまうと思う。
ちなみに、チケットの入手方法も好きなのだ。
チャーリーも結局は手を汚しているわけで、
「清貧を貫いた正直者が報われる」というような
安易な御伽話にしていない点が気に入った。
>ひいらぎ殿
マスコミはどうしても「ヒット」を狙わなければならないので
どうしてもああいったPR方法になってしまうのだろう。
少なくとも「ハリー」を観た子供の半分は合わないと思う。
>穂高殿
私もこれを観てますます「コープス・ブライド」が楽しみになった。
原作に過度の思い入れがある方はどうか分からないが、
ティム・バートン好きなら絶対お勧めだ。
>フローズン殿
なるほど、ウォンカは原作ではもっと年がいっているのか。
しかしこの映画の中のウォンカは、
まさにこの年でなければ成り立たない親子関係を持っているので
これで良いと思う。
父と子の関係にこだわるあたりも、いかにもティム・バートンだ。
>ざい殿
いや、充分美味しそうだぞ。<工場内
神出鬼没なウンパ・ルンパの活躍も楽しい。
前売りはチケット屋を回ればまだあると思う。
是非是非劇場で。
早速観に行ってきました!
原作ファンから観ても、納得の出来でしたよ。
ブラックな所もありますが、何だか劇場内はずっと忍び笑いが聞こえてくるくらい、笑い所満載の映画でしたね。ウンパ・ルンパは出てくるだけで大爆笑です・・・。
ティム・バートン監督の作品はこれが初めてなのですが、他の作品も観てみようと思いました。独特のセンスを持ってる監督ですね。予告で観た「コープス・ブライド」という作品も早く観たいもんです。
最近、ここを行きつけのブログにさせていただいてます。
取り上げるゲームの相性が私とあっている感じで、いつもとても参考になります。
今回、この映画はちょっと気にしていたのでここで取り上げてもらえてうれしい限りです。
私もフローズンさん等と同じく1971年に映画化された
「夢のチョコレート工場(Willy Wonka & the Chocolate Factory)」
が大好きだった口です。
おそらく、古い方は出来る限り原作に忠実に作られていて、基本的に原作でも(原作の続編でも)ウォンカの過去は語られていなかったように思います。
今回の映画オリジナルの設定ということでしょうかね。
それが再映画化と聞いて、ティム・バートンの「Nightmare Before Christmas」も大好きな自分としては出来が悪かったら嫌だな・・・と思っていたのですが、杞憂に終わりそうで安心です。
昔の映画とは比べずに今の「Willy Wonka」として楽しんでみれそうです。
多分、DVD待ちですが・・・。
1971年の「夢のチョコレート工場」も、この年代でよくあのファンタジー世界をここまで再現したなぁと思える、とてもいい映画ですので、機会があれば見比べてみるのも楽しいかと思います。
(こっちは「清貧を貫いた正直者が報われる」安易なお伽話だったような気がしますが・・・。)
映画やゲームのレビューいつも楽しみに読ませてもらっています。
私も初日に「チョコレート工場」観てきました。
綺麗なだけのファンタジーではなく、ティムバートンらしい味付けが強烈に効いていて、心底楽しめましたね。
忍さんと同じく、私も終始わくわくし、ニヤけながら観てしまった久々の傑作でした。
「猿の惑星」の頃はやはりバートン監督不振だったんですね・・納得。
そして劇中リスのエピソード、驚きです。この辺の懲り方がティムバートンらしいですね。