▼ディズニープラス「火の鳥 エデンの宙」3倍希釈でもうま味強し、「エデンの花」の予習にも
配信中■邦アニ：ディズニーオリジナル｜火の鳥 エデンの宙
日本が誇る漫画の神様・手塚治虫がライフワークとしてきた
不朽の名作「火の鳥」全12編の中から、地球と宇宙の未来を描いた「望郷編」を
「海獣の子供」など数々の話題作を手がけてきたSTUDIO4℃が初めてアニメーション化。
監督は「ムタフカズ」の西見祥示郎。 全4話構成。
声の出演は宮沢りえ、窪塚洋介、吉田帆乃華、イッセー尾形、浅沼晋太郎、木村良平など。
私が初めて劇場で見た「火の鳥」は「火の鳥 2772」だったな。調べたら33年前だった。
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地球から逃げ出したひと組の男女、ロミ（宮沢りえ）とジョージ（窪塚洋介）は
荒廃した未開の地・惑星エデン17を新天地と決め、二人で環境整備を始めるも
ロミの妊娠が発覚して間も無くジョージが事故に巻き込まれて命を落としてしまう。
悲しみに暮れるロミは、ジョージの忘れ形見である息子・カインと共に暮らし始めるが
母子だけではいずれカインが孤独の身に置かれることを案じ、
「13年後に目覚める」と言い残して長期のコールドスリープへと入る。
しかし、システムの誤作動により、ロミが目覚めたのは13年後ではなく1,300年後だった。
目覚めたロミの眼前に広がっていたのは、発達した文明により繁栄したエデン17の姿だった。
「望郷編」は一人の女性から文明が生まれ、子孫が生まれて星が繁栄し、
支配欲や猜疑心などの愚かしさを身につけて自滅してゆくまでを描いた作品で
視力を失った代わりに感覚の優れた子孫たちや、念力で船を飛ばす少年といったSF要素がふんだんに盛り込まれている。
鍵となる火の鳥は、ロミの子孫を残すため変幻自在の生物ムーピーを送り込む重要な役割を担っていて
象徴的な登場の多いシリーズにおいて、珍しくストーリーに深く介入している。
1,300年の眠りから目覚めたロミをエデンの始祖・女王として崇め仕える住人達だが
当のロミは余命の迫る中で日に日に地球に還りたいとの想いを強くしており
願いを叶えるためにひとりの少年コムが船を飛ばす協力をする。
「望郷編」の原作コミックには近親交配（もっと言えば母子相姦）やカニバリズムといった
過激な設定が複雑に絡み合っており、それがこれまでアニメ化をされなかった最大の理由だと推察する。
西見監督は本作の制作に7年の歳月を費やしたそうで、
上記のような描写を外しては「望郷編」ではない、と言われないギリギリのラインを攻めている。
ディズニープラスが配信元なら尚更ハードルは多かったに違いないが
本作はロミとコムの冒険譚に軸足を移し、ロミが抱く地球への望郷の念の強さと
一粒の悪意が文明を脅かす人類の愚かしさに焦点を充てて描かれている。
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かつて、「MW ムウ」から同性愛要素を省いてしまい、なんだかよくわからない作品になってしまった
悲劇の大事故を知っている身としては、3倍に希釈されてはいるものの
「望郷編」の持つ元のメッセージ性の強さに助けられた面もあり
本作はかろうじて「望郷編」らしさを残すことに成功している。
「こんなのは...」と拳を振り上げて熱く語りたくなる方の気持ちも理解はするが
コロナや戦争の渦巻く現代に、本作をディズニーの名の下に配信する意味はあるはずだ。
1話あたり30分未満で、全話一気見しても1時間半ほど。
時間のない方でもサクッと見終えることのできるボリュームでまとめられているので
興味のある方は是非。
「火の鳥 エデンの宙」はディズニープラスで配信中。
余談。
窪塚洋介はこの仕事が嫌だったのか乗り気ではなかったのか
彼の俳優歴をそこそこ知っている私からすると信じ難いほど投げやりな芝居で残念だった。
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11月03日公開■邦アニ：火の鳥 エデンの花
ディズニープラスで配信中の「火の鳥 エデンの宙」とは大筋において同じだが
エンディングが異なっている劇場版「エデンの花」は2023年11月3日公開。
配信版「エデンの宙」は4話合計で97分、劇場版「エデンの花」は95分。
配信版では毎話エンディングが流れることを考えればほんの少し本編も長めになっているのだろうか。
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