感染症疫学の風

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ダプトマイシンのTDM

2011年03月25日 | 感染症情報
MRSA治療薬ダプトマイシンの透析患者への投与量の検討についての論文を見つけました。
ダプトマイシンは日本では発売待ちの状態ですが、先に使用されている国では、すでに、特殊病態下にある患者さんへの適正使用が検討されているのですね。
日本でも、発売後は、薬剤師がTDMにより最適な投与法をサポートすることになると思います。

Use of Pharmacokinetic and Pharmacodynamic Principles To Determine Optimal Administration of Daptomycin in Patients Receiving Standardized Thrice-Weekly Hemodialysis
Antimicrobial Agents and Chemotherapy, April 2011, p. 1677-1683, Vol. 55, No. 4

ダプトマイシンはMRSA治療薬として日本では昨年8月に承認申請されました。(発売はいつだろう・・・・?)海外ではすでに70近い国でMRSA菌血症治療薬として使用されています。リポペプチド系抗菌薬で、体内動態はバンコマイシンなどのグリコペプチド系に類似していますが、交差耐性はない、とされています。

米国ではCUBICINのブランドネームで発売されています。RxList(米国での添付文書が掲載されている)によれば、適応症は複雑性皮膚・皮膚組織感染症(cSSSI、Complicated Skin and Skin Structure Infections)と菌血症。肺炎には推奨されません。
投与量は、皮膚感染症で4mg/kgを1日1回、7-14日間。菌血症で6mg/kgを1日1回、2-6週間。いずれも経静脈投与。
RxListの情報はこちら

ダプトマイシンの基礎情報は「ゴマのツブ焼き」ブログにわかりやすくまとめられています。

臨床的な基本情報は「感染症の病理学的考え方」にまとめられていました。

ダプトマイシンの副作用としてCPK上昇があり、1日2回投与では1日1回投与に比べて発現率が高いとされています。トラフ値がCKP上昇の指標になる、という論文があります。トラフ値は24.3 mg/L以下に保つことが副作用の回避につながります。
(Clinical Infectious Diseases 2010;50:1568–1574)この論文はブログ「呼吸器内科医」に詳しく紹介されています。


MRSA感染症による菌血症や難治性皮膚感染症に期待されますが、2006年の論文に、すでにダプトマイシン低感受性株のことが述べられています。

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による菌血症を起こした患者で心内膜炎を伴う患者と伴わない患者に、ダプトマイシン(daptomycin)6 mg/kg 体重/日を静脈内投与する、あるいは、低用量のゲンタマイシンを最初の 4 日間投与し,抗ブドウ球菌ペニシリンまたはバンコマイシンを投与する群に無作為に割り付けて、投与終了後 42 日目の治療成功を主要有効性エンドポイントとして検討したところ、ダプトマイシン投与群は標準治療に劣っていなかった。ダプトマイシン治療群で治療に失敗した人のうち6例ではダプトマイシンの感受性低下分離株がみられた。(N Engl J Med 2006; 355 : 653 - 65 : Original Article.)


ちなみに、ダプトマイシンの耐性については、青木眞先生のブログ「感染症診療の原則」には、2010年8月に取り上げられていました。さすが、というか、早すぎる・・・。


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ゴマのツブ焼き (茂木立志)
2011-10-10 13:29:14
Thank you for citing.
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